阮元(読み)ゲンゲン

デジタル大辞泉 「阮元」の意味・読み・例文・類語

げん‐げん【阮元】

[1764~1849]中国、学者政治家。儀徴(江蘇省)の人。あざなは伯元。号、うんだい戴震たいしんの学を継承多く人材を集め、考証学振興に努めた。編著経籍籑詁けいせきせんこ」「皇清経解」など。

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精選版 日本国語大辞典 「阮元」の意味・読み・例文・類語

げん‐げん【阮元】

  1. 中国、清代の政治家、学者。字(あざな)は伯元。号は(うんだい)雲台など。諡(おくりな)は文達。江蘇儀徴の人。地方の総督歴任して、学術を奨励。「経籍(せんこ)」の編集、「十三経注疏校勘記」の編著のほか、多くのすぐれた撰述を残した。(一七六四‐一八四九

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阮元」の意味・わかりやすい解説

阮元
げんげん
(1764―1849)

中国、清朝(しんちょう)中葉後期の学者、政治家。字(あざな)は伯元(はくげん)、号は雲臺(うんだい)または芸臺(うんだい)。江蘇(こうそ)省儀徴(ぎちょう)県の人。儀徴に近い揚州(ようしゅう)に生まれる。1789年(乾隆54)の進士。乾隆帝の知遇を受け、浙江(せっこう)・江西の巡撫(じゅんぶ)、両広(広東(カントン)・広西(カンシー))・雲貴の総督を歴任して政績をあげ、よく各地で学者を育成して編纂(へんさん)事業を企画完成させ、すでに爛熟(らんじゅく)期にあった清朝経学を集成した。漢唐の訓詁(くんこ)の集録経籍籑詁(けいせきせんこ)』、日本の江戸中期の儒学者山井鼎(やまのいかなえ)(崑崙(こんろん))の『七経孟子考文(しちけいもうしこうぶん)』をみての『十三経注疏挍勘記(じゅうさんけいちゅうそこうかんき)』、暦算学者の伝記『疇人伝(ちゅうじんでん)』、清初以来の古典注釈の成果を集録した『皇清経解(こうせいけいかい)』、友人子弟の著を収録した『文選樓叢書(もんぜんろうそうしょ)』などがある。その詩文集は『経室集(けんけいしつしゅう)』という。道光29年10月13日揚州で卒(しゅっ)し、文達と諡(おくりな)された。

[近藤光男 2016年3月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「阮元」の意味・わかりやすい解説

阮元 (げんげん)
Ruǎn Yuán
生没年:1764-1849

中国,清の政治家・学者。儀徴(江蘇)の人。字は伯元。1789年(乾隆54)進士となり,累進して浙江・江西・河南の巡撫,湖広・両広・雲貴の総督などを歴任し,体仁閣大学士となった。清朝中期の大官として各方面に治績が多かった一方,学者としては宋学を排して漢学を宗とし,直接には戴震の学問を継承して言語や文字の研究から古代の制度や思想を解明しようとした。しかしその学問領域はきわめて広く,乾隆・嘉慶年間(1736-1820)における考証学の集大成者で,詁経精舎(こけいしようじや)(浙江),学海堂(広東)を設立して学術を振興し,多くの学者を集めて書物の編纂事業を統督し,学界に貢献した。その編著の主なものとして,経学に関しては《経籍籑詁》《十三経注疏校勘記》《皇清経解》,金石学に関しては《山左金石志》《西浙金石志》《積古斎鐘鼎彝器款識》,史学・地理学に関しては《疇人伝》《広東通志》《浙江通志》などがあり,自らの詩文集として《経室全集》《同続集》《同詩集》がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阮元」の意味・わかりやすい解説

阮元
げんげん
Ruan Yuan

[生]乾隆29 (1764)
[没]道光29 (1849)
中国,清の学者,書家,文学者。儀徴(江蘇省)の人。字は伯元。号は芸台(うんだい)。諡は文達。乾隆54(1789)年進士に及第。山東,浙江の学政,浙江,江西,河南の巡撫,両広,雲貴の総督を歴任,道光18(1838)年体仁閣大学士を最後に辞任した。在官中,広東では「学海堂」,浙江では「詁経精舎」を創設して学問の振興をはかり,学者を集めて『経籍籑詁』『皇清経解』『十三経注疏校勘記』『疇人伝(ちゅうじんでん)』などを編纂あるいは校訂し,清朝考証学を集大成した。詩では地方詩の総集『淮海英霊集(わいかいえいれいしゅう)』『両浙輶軒録(りょうせつゆうけんろく)』,揚州の詩人をめぐる詩話『広陵詩事』などの編著があり,また得意とする駢文をいわゆる古文よりも優れた文体であると主張した。書道論『北碑南帖論』『南北書派論』がある。ほかに『曾子注』,詩文集『揅経室集(けんけいしつしゅう)』。

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百科事典マイペディア 「阮元」の意味・わかりやすい解説

阮元【げんげん】

中国,清代の政治家,学者。江蘇の人。1789年進士。江西巡撫,両広総督等を経て1835年体仁閣大学士,1846年太傅となる。戴震の学問を継承しつつ,大官として学術を奨励,広州に学海堂,杭州に詁経精舎を建て人材を養成した。学者を集め《経籍【せん】詁(せんこ)》《十三経注疏校勘記》《皇清経解》等を編纂(へんさん)。乾隆・嘉慶年間(1736年―1820年)における考証学の集大成者である。

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367日誕生日大事典 「阮元」の解説

阮 元 (げん げん)

生年月日:1764年1月20日
中国,清の学者,書家,文学者
1849年没

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世界大百科事典(旧版)内の阮元の言及

【佚存叢書】より

…宋の欧陽修の《日本刀歌》に,〈徐福行く時書未だ焚(や)かれず,佚書百篇今なお存す〉とあるのによって名づけた。刊行は清の嘉慶年間(1796‐1820)に当たるが,阮元(げんげん)は早速この中から《五行大義》《両京新記》などを取り,自分の編集する《四庫未収書目提要》中で紹介した。中国で全体の写真複製も行われ,今日のわれわれは中国版を手に入れるほうが容易である。…

【金石学】より

… 元・明時代,金石文の研究は一時下火となったが,清代,考証学の興隆とともに再び活発化した。1755年(乾隆20),乾隆帝は徽宗にならって図録集《西清古鑑》40巻を勅撰して気運を盛り上げ,1804年(嘉慶9),阮元(げんげん)が薛尚功を継承して《積古斎鐘鼎彝器款識》10巻を刊行した。この書は,こののち器形からひとまず離れ銘文だけを研究する清朝金文学,文字学に大きな影響を与えた。…

【経籍籑詁】より

…訓詁形式の字書。中国,清の阮元の著。唐以前の古書の本文ならびにその注釈の中から,訓詁ないし訓詁的な表現を選び出し,〈平水韻〉に従って配列したもの。…

【皇清経解】より

…《学海堂経解》とよばれる。両広総督の阮元が厳杰(げんけつ)に命じて編集させ,1829年(道光9)に完成し出版された。188種,1400巻。…

【書】より

…なかでも鄧石如は古碑によって篆隷を深く究め,また北碑を学んで,碑学の開山となった。阮元が〈南北書派論〉〈北碑南帖論〉を著して北碑を書の正統として以後,この説は包世臣の《芸舟双楫》さらに康有為の《広芸舟双楫》などによって補訂され,北派の理論がうちたてられた。これにともない,実作面でも北碑の素朴な書に美の発揚を求めたり,あるいは碑帖を兼習したり,さらに金文,石鼓文,甲骨文にも書作の材料を求める者が現れ,百花斉放の観を呈するにいたった。…

【帖学】より

…この惰性をうち破り,帖学を刷新したのは明末の董其昌(とうきしよう)であった。しかし清朝半ば,阮元が《南北書派論》《北碑南帖論》を発表して碑学を主張して以来,碑学が尊重されるようになった。そこには,金石学の興隆にともなって新たな碑が相ついで発見されたことも大きく影響している。…

【書論】より

…一方,清朝の後半になると,考証学の一分野として金石学が発達するに伴い,碑学派の書が勃興した。この派の書論として,まず阮元(げんげん)が《南北書派論》《北碑南帖論》を書いて,書に南北の別のあること,漢・魏以来の書の正統は,南朝の法帖ではなく北朝の碑碣(ひけつ)によって伝えられたとした。この説は包世臣の《芸舟双楫》,康有為の《広芸舟双楫》などによって多少の修正を加えられながら受けつがれ,日本の近代書道にも大きな影響を与えた。…

【中国文学】より

…四六文を駢文とよぶのも清朝人の与えた名称である。駢文の熱心な提唱者は阮元(げんげん)で,その一派を儀徴派とよぶ。清朝では,こうして古典的な諸様式のすべてが復活した。…

【疇人伝】より

…《史記》暦書に〈疇人〉の語があり,天文学者を指すと解せられる。清朝の大官であり学者としても有名な阮元は上古の伝説上の人物からはじめ清朝に至る中国人天文学者(数学者を含む)270人,西洋人天文学者41人の伝記を編集し,1799年(嘉慶4)の序を付して刊行した。これが《疇人伝》46巻である。…

※「阮元」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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