日本大百科全書(ニッポニカ) 「垓下の歌」の意味・わかりやすい解説
垓下の歌
がいかのうた
中国、秦(しん)の滅亡後、漢の劉邦(りゅうほう)と天下の覇権を争った楚(そ)の項羽(こうう)が、紀元前202年、垓下(安徽(あんき)省霊璧(れいへき)県)で漢軍に包囲され、天運の尽きたのを悟り軍中で歌った歌。愛馬の騅(すい)と寵姫(ちょうき)虞美人(ぐびじん)を思いつつ「力(ちから)は山を抜き気は世を蓋(おお)う/時(とき)利あらずして騅逝(すいゆ)かず/騅逝かざるは奈何(いかん)すべき/虞(ぐ)や虞や若(なんじ)を奈何せん」と悲痛の思いを歌う。原文は「力抜山兮気蓋世」のごとく、楚の民歌に基づく七言調。日本に伝わる古抄本『史記』には、もう1句多い5句の歌辞とするものがある。
[佐藤 保]
『「項羽の垓下歌について」(『吉川幸次郎全集6』所収・1968・筑摩書房)』