改訂新版 世界大百科事典 「埴製枕」の意味・わかりやすい解説
埴製枕 (はにせいまくら)
遺骸の頭部を安置するために特製した土製品。古墳時代に数例が知られており,それぞれ形態が相違する。奈良県天理市中山町灯籠山(とうろうやま)古墳例は,幅31cm,長さ29cmの低い箱形を呈し,底面は外湾する。上面に頭部をおくΩ形のくぼみを設け,外周を鋸歯文などで飾る。石枕(いしまくら)の形態に近く,4世紀に入る最古品である。同県五条市西河内町猫塚古墳例は,幅30cm,長さ24cm,高さ14cmの蒲鉾(かまぼこ)形をなす中空品で,上面に円形のくぼみをそなえる。京都府京丹後市の旧丹後町産土山(うぶすなやま)古墳例は,三方を高い縁で囲む楕円形品で,環状の低い台をつける。高さ22cm,幅27cmをはかる。また,三重県志摩市の旧阿児町おじょか古墳例は,背に飾りの土板が付く。これらは5世紀の例である。なお,器台などの土器を転用した枕があるが,これは埴製枕とは区別する。
執筆者:川西 宏幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報