かまぼこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「かまぼこ」の意味・わかりやすい解説

かまぼこ
かまぼこ / 蒲鉾

魚肉食塩を加えてすり身にし、これに調味料を加えて練り、蒸すかあるいは焼いてタンパク質を熱凝固させた製品。魚肉練り製品の一種。

河野友美大滝 緑]

歴史

かまぼこの起源は不明であるが、平安末期すでに「蒲鉾」の名があったことが『類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)』にみえる。また、「蒲鉾はナマズ本也(もとなり)、蒲(がま)の穂を似せるなり」と伊勢貞頼(いせさだより)の『宗五大草紙(そうごおおぞうし)』(1528)にあり、植物のガマの穂に似ているところからこの名が出たようである。つまり、当初は後世の焼きちくわのようなもので、ナマズなどの身をすりつぶして竹串(たけぐし)に塗り付けて焼いた。天正(てんしょう)(1573~92)のころには、すり身を木の板に塗り付けて焼く、板付きかまぼこ(初めは、板かまぼことよんだ)が現れ、在来のガマの穂形のものは、その切り口の形からちくわ(竹輪)とよばれるようになった。江戸時代には、煮て熱を通すようになり、さらに味の抜けない蒸し煮法が一般的となった。原料白身の魚で、初期にはナマズ、タイが多く用いられた。『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』(1695刊)には、タイ、アマダイ、ハモを上とし、ヒラメ、キス、ハゼ、イカなどがこれに次ぎ、フカやナマズは下品としている。名産地として仙台(宮城県)、小田原(神奈川県)、富山、大坂、宇和島(愛媛県)、仙崎(山口県)などがあげられ、それぞれ原料や製法に特色をもっている。全国的にサメが使われるほか、仙台ではキチジ、ヒラメ、小田原ではグチイシモチ)やオキギスを、大阪ではハモ、宇和島・仙崎ではエソ、グチ、キス、北日本ではタラ類を原料とする。しかし、最近ではスケトウダラからつくった冷凍すり身がよく用いられている。

[河野友美・大滝 緑]

種類

加熱法で分類すると、(1)蒸しかまぼこ、(2)焼きかまぼこ、(3)揚げかまぼこ、(4)ゆでかまぼこに大きく分けられる。(1)は、蒸籠(せいろう)か箱に入れ蒸気を通して仕上げるもので、小田原かまぼこをはじめ関東の多くがこれによる。熱がよく通るので魚肉は厚く盛れる。色が白いので「白板(しらいた)」ともよんでいる。(2)には、蒸しかまぼこをさらに焼いてつくる「焼き板」と、最初から1枚ずつ焼く「焼き抜き」の2種がある。輸送距離の長い関西で、腐敗を防ぐために行われた製法である。(3)は、すり身を調味し、油で揚げたものである。一般には薩摩揚(さつまあ)げとよばれているが、関西では「てんぷら」、鹿児島では「つけあげ」とよんでいる。(4)は湯の中でゆでるもので、はんぺん、すじ(すじかまぼこ)などがある。細工かまぼことよばれるものは、いろいろに成形した蒸しかまぼこに、すり身で飾りや模様を配したもので、祝儀・引出物用である。どこを切っても同じ模様の現れる切り出し、カメやタイの形に成形した一つ物などがある。

 このほか、ケーシング詰めやリテーナ成形したかまぼこがある。ケーシング詰めかまぼこは、すり身をソーセージ状にケーシングに詰めて両端をアルミの金具で止めた後加熱したもので、リテーナ成形かまぼこは、すり身を板につけたままフィルムで包装し、リテーナ(成形に用いる金属製の型枠)に入れて加熱したものである。これらは通常の簡易包装のものに比べ製品の保存性が高い。また、すり身を特殊処理してカニ脚やホタテ貝柱などに風味や歯ざわり、形を似せて製造した風味かまぼこなどもある。

 地方独特のものとしては、食紅で色をつけたすり身と無着色のすり身を重ねて巻き、切り口が渦巻き状の模様になるようにした鳴門(なると)巻(関西)、麦藁(むぎわら)や簀子(すのこ)で巻いた簀巻(すま)き(四国)、四角い型に入れて加熱した南蛮焼き(紀伊田辺(たなべ))、木の葉形の笹(ささ)かまぼこ(仙台)、楕円(だえん)形の平たい形にして蒸したやわらか(富山)、昆布巻き(富山)、すり身に卵黄を混ぜて焼いた伊達(だて)巻(関東)、厚焼き・梅焼き(関西)、ヤマノイモを混ぜたはんぺん、しんじょなどがある。

 かまぼこの板は、すり身の成形のしやすさ、焼いたときの魚肉の焦げすぎの防止、香りつけが目的である。香りの点からは、節目のない杉板が使われる。節があると樹脂のにおいがかまぼこにつく。また、マツ、ヒノキなどのように樹脂の多いものは、かまぼこににおいがつくので用いない。

[河野友美・大滝 緑]

特徴

かまぼこは、タンパク質含有量が高く、消化もよい食品である。純白で光沢があり、弾力に富むのが良品で、適度の歯ごたえがあり、かむほどにうま味がわくのが特徴。ただし、腐敗しやすいので保存には注意が必要である。そのまま切って食べることが多いが、おでん、煮物、和(あ)え物などに幅広く利用できる。高級品は加熱せず、そのまま食べるのが美味であるが、デンプン類を混ぜて弾力(足)を補強したものでは、日数を経た場合むしろ加熱したほうがよい。日本人の発明による、魚肉のタンパク質の特性を利用した独特の食品である。第二次世界大戦後この製造技術が生かされ、魚肉ソーセージが創案されたが、これも練り製品の一種である。

[河野友美・大滝 緑]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「かまぼこ」の意味・わかりやすい解説

かまぼこ

蒲鉾とも書く。水産練製品の一種。すった魚肉に調味料その他の副原料を加えて練り合せ,蒸し煮または焙焼したもの。起源は不明であるが,平安時代末期の記録にすでにその名がみえる。室町時代中期には焼きかまぼこがあったが,今日のような蒸しかまぼこは江戸時代末期につくられた。原料は,一般にはきす,さめなどの脂の少い白身肉を用い,高級品にはたい,かれい,はもなどを使用する。そのほか飛び魚,かます,むつなどを用いた各種の地方名産品がある。現在は北洋すけとうだらの冷凍すり身を原料として製造されるものが多い。製造は採肉後,肉潰機にかけ,さらに臼で十分すりつぶして肉に粘着性をもたせる。次いでこれを成形しせいろうに入れて水蒸気で蒸し煮加熱する。

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