食品や盃などを載せる儀式的な台。原名は衝重 (ついがさね) 。『貞丈雑記』に,「ついがさねとは三方,四方,供饗の総名なり。上の台と下の足とをつき重ねたる物なる故に,ついがさねといふなり」とある。この衝重のうち,台の三方に眼象 (げんじょう。穴) をくりあけたものを「三方」,四方にあけたものを「四方」といい,白木製,漆塗りがある。現在では正月の鏡餅の台,また神事,慶事の際などに使われる。
福井県南西部,若狭町北部の旧町域。若狭地方の中央に位置し,若狭湾に面する。1953年八村,西田村が合体し三方町が成立。1954年十村を編入。2005年上中町と合体し若狭町となる。地名は古代以来の郷名による。東部に野坂山地の西をかぎる三方断層があり,その西に平地と三方五湖(国指定名勝)がある。中心地区の三方は断層崖下に発達。三方湖に注ぐはす川の最下流で鳥浜貝塚が発掘された。海岸は岬と小湾が連なり漁村が散在し,定置網漁が行なわれる。湖畔一帯はウメを特産し,福井梅として全国に出荷される。常神半島先端近くの常神のソテツは国の天然記念物。常神岬をはじめ海岸部は景勝地が多く三方海域公園地区に指定され,三方五湖とともに若狭湾国定公園に属する。
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供物用の台。方形の折敷(おしき)に,3方に穴(刳形(くりかた))のある台を取り付けたもので,穴のないほうが表。ヒノキの白木製が正式。神仏に物を供えたり,儀式の時に物を載せるのに使用。古くは貴人の食膳(しょくぜん)とした。
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神仏に物を供えるとき用いる台。ひのきの白木で作られ、前・左・右の三方に刳形(くりかた)の穴を開けた台をつけたもの。
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神仏への供物台,あるいは宴席などでの食膳として用いられる衝重(ついがさね)の一形式。衝重は方形角切(すみきり)の筒形台脚を備えた折敷(おしき)の総称で,《貞丈雑記》によれば,上部の折敷形に台部を衝き重ねるところから衝重の名があるという。その台部の3方に眼象(げんしよう)(格狭間(こうざま))と称する繰形を透かしたものがすなわち三方であり,4方に透かしたものが四方(しほう)である。また眼象のないものは供饗(くぎよう)という。
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衝重(ついがさ)ねの一種。檜(ひのき)製の白木の折敷(おしき)の下に台を取り付け、その台の三面に刳形(くりかた)(穴)をあけたもの。神仏に捧げる供物や食器をのせるのに用いる。◇台の四面に刳形をあけたものを「四方(しほう)」、刳形のないものを「供饗(くぎょう)」という。
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近畿地方、奈良県の地域ブランド。
吉野郡下市町・吉野郡大淀町で製作されている。ねばり・光沢・香りをもつ吉野檜の薄板に折り目を刻み、四隅を曲げてつくられる。奈良県伝統的工芸品。
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〘名〙
① (現在は「さんぽう」とも) 三つの方向。三つの方面。
※平家(13C前)一一「能遠(よしとを)が城におしよせて見れば、三方は沼、一方は堀なり」
② 角形の折敷(おしき)に、前と左右との三方に「刳形(くりかた)」もしくは「眼象」と呼ばれる透かし穴のあいた台のついたもの。多く檜の白木で作られ、古くは食事をする台に用いたが、後には神仏や貴人へ物を供したり、儀式の時に物をのせるのに用いる。衝重(ついがさね)の一種。三宝。
※三内口決(1579頃)「盤。〈四方三方事〉。大臣以上は四方。大納言以下は三方也」
※俳諧・犬子集(1633)一「三方につみしをいかに西ざかな」
③ 和算で、正三角形のこと。
※竪亥録(1639)六「置二歩数一、用二三方之方鈎相因之歩法一、五帰而得二歩数一、於レ是用二〈鈎方〉之尺数一帰除、則得二尺数一、是〈方鈎〉也」
④ 近世、大坂の蔵屋敷米を出米する際の仲立人で新地四組・古三組・上組の総称。〔稲の穂(1842‐幕末頃)〕
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世界大百科事典内の三方の言及
【秋田藩】より
…1701年(元禄14)会所と呼び,25年(享保10)には政務所と改称。また政治組織面では1676年(延宝4)三方(さんかた)が整備された。すなわち,政務の取次ぎなどを行う御側方(おそばかた),財政や民政を担当する表方,警備や軍事の番方であった。…
【膳】より
… 膳は,現在一般に会席膳と呼ばれる方1尺2寸(約36cm)の折敷を除いては,ほとんどが足をつけるか,台に載せた形態のものである。板を折り回した足を折敷の下につけたものを衝重(ついがさね)といい,足の前面と左右両側の3面に繰形(くりかた)をつけたものを三方(さんぼう),4面につけたものを四方と呼んだ。これに対して,大きく格狭間(こうざま)を透かせた台に折敷を載せたものを懸盤(かけばん)といい,藤原氏の氏長者(うじのちようじや)がその地位の標識として朱器とともに伝領した台盤も,この形式のものであった。…
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