改訂新版 世界大百科事典 「執着性格」の意味・わかりやすい解説
執着性格 (しゅうちゃくせいかく)
immodithymia
躁うつ病の病前性格として,1930年頃に下田光造が提唱した性格。この性格の基礎には一度起こった感情が長く持続するという感情の経過の異状がある。この異状気質に基づく性格標識は〈仕事熱心,凝り性,徹底的,正直,きちょうめん,強い正義感,ごまかしやずぼらができない〉などである。このため確実人として信頼され模範的人間となる。発病状況については〈ある期間の過労事情〉として一括され,〈長期にわたる身体病,心身の持続的過労,業務熱中〉などがあげられている。躁うつ病の発病機序としては〈ある期間の過労事情によって睡眠障害,疲労性亢進をはじめ各種の神経衰弱症候が生じると,正常人はおのずと休養状態に入るが,執着性格者はその標識である感情興奮性の異状により休養生活に入ることが妨げられ,疲憊(ひはい)に抗して活動を続け,ますます過労に陥り,その頂点においてかなり突然に発揚症候群または抑うつ症候群を呈する〉と下田は述べている。
執筆者:飯田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報