六訂版 家庭医学大全科 「躁うつ病」の解説
躁うつ病(気分障害)
そううつびょう(きぶんしょうがい)
Manic-depressive disorder (Mood disorder)
(子どもの病気)
どんな病気か
気分(心のエネルギー)が高まったり(躁病)、下がったり(うつ病)する病気です。
原因は何か
統合失調症と同様に遺伝子から環境因子まで多くの因子が複雑に絡み合って発症するといわれています。原因は不明です。
症状の現れ方
うつ病では14~15歳以前は、頭痛、腹部不快感、食欲不振、全身の
そのほか、多くの場合で不登校が認められます。うつ病による不登校は、週末や夕方には元気になることが多い神経症的な不登校とは違い、一生懸命に登校した週末のほうがエネルギーを使い果たして元気がなくなるなどの特徴をもっています。
躁病では、自分が偉大な人物であると確信する
子どもでは、うつ病と躁病の期間が数日から数週間と短いことが多く、またそれがしばしば繰り返されることが多いという特徴があります。
検査と診断
うつ病では念のため甲状腺ホルモンの検査をすることが一般的ですが、心理検査は症状の経過をみて適当な時期に行います。
治療の方法
薬物療法が主になりますが、うつ病では従来の三環系の抗うつ薬に代わって、副作用がより少ない選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、セルトラリン(ジェイゾロフト)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるミルナシプラン(トレドミン)が第一選択薬として用いられています。
躁病では鎮静を目的に抗精神病薬が用いられます。躁とうつの予防のためにはリチウム(リーマス)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸(デパケン)などが使われます。
うつ病では薬物療法に加えて、学校を休ませて休養をとらせる、励まさないなどの配慮も必要になります。躁病では活動性が非常に強くなるので、外出や他人との接触を制限することが大切です。
病気に気づいたらどうする
子どもの躁うつ病は、のちに統合失調症などへ診断が変更になることもあり、慎重に経過を追う必要があります。専門医(児童精神科医)とよく相談して治療を進めていってください。
松本 英夫
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報