日本大百科全書(ニッポニカ) 「士道要論」の意味・わかりやすい解説
士道要論
しどうようろん
江戸後期の儒学者斎藤拙堂(せつどう)の著述。武士道論。1837年(天保8)8月成稿。拙堂41歳の著で、当時、拙堂は津藩(三重県)の藩校有造館の講官であった。1850年(嘉永3)、上州(群馬県)安中(あんなか)藩主板倉勝明(かつあきら)の手により、藩校造士館蔵版として刊行された。武士たる者の心得を仮名交じり文で平易に説く。原士、士風、士気、士節、士心、士道の6章からなる。朱子学に基づきつつ、礼義廉恥(れんち)を重んずべきこと、剛毅(ごうき)の風を持し、節を守り、職分を尽くすべきことを説く。聖人の道は、日本の祖宗の神々の道に同じとし、太平のときにあっても、武を忘れず、文を読み、政治や風俗の動向に留意することこそ武士の職分である、と教訓する。
[佐藤正英]