多氏(読み)おおうじ

改訂新版 世界大百科事典 「多氏」の意味・わかりやすい解説

多氏 (おおうじ)

日本古代に活躍した氏族。多は太,大,意富,飫富,於保などとも記す。《古事記》《日本書紀》によれば,神武天皇皇子神八井耳命(かむやいみみのみこと)を祖とする。大和国十市郡飫富郷(現,奈良県磯城郡田原本町多)に多氏一族のまつる多神社(多坐弥志理都比古神社)があり,この地を本貫としていたと考えられる。多神社は式内社で,すでに奈良時代中期には多数の神戸(かんべ)を有しており,有力な神社であった。多氏の姓(かばね)は臣(おみ)であったが,一部は684年(天武13)に朝臣(あそん)に改められた。また後に863年(貞観5)に臣姓より宿禰(すくね)に改められた者もある。有名な人物としては,壬申の乱で大海人皇子(おおあまのおうじ)方について活躍した多品治,《古事記》を編纂した太安麻呂,813年(弘仁4)の《日本書紀》講読の講師をつとめた多人長などがいる。のち平安時代以後宮廷の雅楽をつかさどる楽家として重きをなした。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の多氏の言及

【大食】より

…唐・宋時代の中国人が,狭義にはアラブ,広義にはイスラム教徒を呼んだ名称で,大寔(だいしよく),多氏(たし),大石(たいせき)などとも記される。本来はペルシア語でアラビア人を示すタージークTāzīk∥Tājīk,タージーTāzīの音訳であったが,アラブの征服以降のペルシア人イスラム教徒もこの名で呼ばれるようになり,またトルコ族がペルシア人を示す語としてこのタージークを用いたことから,イスラム教徒一般をも意味するようになった。…

【太安麻呂】より

…彼がこの仕事に選ばれたのは,すぐれた学者だからということだけではなかったらしい。多氏(おおうじ)は,平安朝以降,宮廷神事の歌舞音楽である雅楽をつかさどった。このような伝統は古いに違いなく,そうした家柄であったことが,安麻呂と《古事記》や稗田阿礼とを結びつける環であったのだろう。…

【禁裏御倉】より

…1463年(寛正4)ごろの禁裏御倉は,正親町烏丸南頰の薬師堂倉の辻宗秀であり,この辻家は享禄(1528‐32)ごろまで務めている。そのほかには,長享~明応(1487‐1501)ごろの大橋宗長,明応ごろのさるや野洲弾正,永正~享禄(1504‐32)ごろの中興藤四郎,享禄~天文14年(1528‐45)の津田与二郎,天文17‐天正10年(1548‐82)の下京四条室町の長谷川氏,天正11年(1583)~明治までの下御倉職多氏(舞人)などがある。代表的なものは,上御倉を永正6(1509)~明治まで世襲した立入(たてり)氏であり,室町通中御門と春日通の間,大門町に住した。…

※「多氏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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