朝臣(読み)アソン

デジタル大辞泉 「朝臣」の意味・読み・例文・類語

あそん【臣】

《「あそみ」の音変化。中・近世は「あっそん」とも》
あそみ(朝臣)」に同じ。
平安時代以降、五位以上の人につけた敬称としてのかばね三位さんみ以上はうじの下につけ、四位しい・五位はいみなの下につけた。「従一位徳川次郎三郎朝臣家康(従一位=位階、徳川=名字みょうじ、次郎三郎=通称、源=うじ、朝臣=姓、家康=諱)」「正二位しょうにい織田右大臣朝臣信長(正二位=位階、織田=名字、右大臣=官位、平=氏、朝臣=姓、信長=諱)」「従四位下じゅしいのげ伊達左近衛さこんえのごんの少将藤原綱宗朝臣(従四位下=位階、伊達=名字、右近衛権少将=官位、藤原=氏、綱宗=諱、朝臣=姓 ※政宗の孫、仙台藩3代藩主)」
代名詞的に用いて)平安時代、宮廷貴族間で使われた、男子に対する呼び方。
「―や、御休み所もとめよ」〈藤裏葉

あそみ【臣】

天武天皇が制定した八色やくさかばねの第二位。初めは、皇族から降下した有力氏族に与えられたが、平安時代以後は皇子皇孫にも与えられ、姓の第一位となった。あそ。あそん。

あっそん【臣】

あそん

ちょう‐しん〔テウ‐〕【朝臣】

朝廷臣下廷臣

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精選版 日本国語大辞典 「朝臣」の意味・読み・例文・類語

あそみ【朝臣】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あさおみ(朝臣)」の変化した語か ) 古代の姓(かばね)一つ。天武一三年(六八四)に制定された八色(やくさ)の姓の第二位。はじめは皇族から臣下にくだったと伝承される皇別の有力氏族に与えられたが、平安時代には皇子や皇孫にも与えられ、実質的には姓の第一位となった。その後、単に身分を表わすことばとなった。あそ。あそん。あっそん。→八色(やくさ)の姓(かばね)
    1. [初出の実例]「八色(くさ)の姓を作りて、天下の万の姓を混(まろ)かす。〈略〉、二に曰はく朝臣(アソミ)」(出典:日本書紀(720)天武一三年一〇月(寛文版訓))

あそん【朝臣】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あそみ(朝臣)」の変化した語 )
  2. あそみ(朝臣)
    1. (イ) 三位以上の人の姓の下(姓朝臣)、四位、五位の人の名の下(名字朝臣)につける。
      1. [初出の実例]「からうじて、惟光のあそんまゐれり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    2. (ロ) 五位以上の人に対してつける敬称、または親称。
    3. (ハ) 対称、または他称の代名詞のように用いる。きみ。あなた。
      1. [初出の実例]「あやしくてうせぬるあそむたちかな」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)

あそ【朝臣】

  1. 〘 名詞 〙 親愛の情をこめて他人(男性)を呼ぶ時の称。朝臣(あそみ)
    1. [初出の実例]「たまきはる 内の阿曾(アソ) 汝こそは 世の長人 そらみつ 大和の国に 雁卵産(かりこむ)と聞くや」(出典:古事記(712)下・歌謡)

あっそん【朝臣】

  1. 〘 名詞 〙あそん(朝臣)
    1. [初出の実例]「まぢかくは、六波羅の入道前太政大臣平朝臣(アッソン)清盛公と申し人のありさま」(出典:高野本平家(13C前)一)

あそう【朝臣】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あそん(朝臣)」の変化したもの ) =あそん(朝臣)
    1. [初出の実例]「返し能宣のあそう」(出典:恵慶集(985‐987頃))

ちょう‐しんテウ‥【朝臣】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 朝廷に仕える人。朝廷の臣。〔いろは字(1559)〕 〔管子‐明法解〕
  3. あそみ(朝臣)

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改訂新版 世界大百科事典 「朝臣」の意味・わかりやすい解説

朝臣 (あそん)

日本古代の(かばね)の一つ。684年(天武13)に制定された八色の姓(やくさのかばね)の第2位。主として旧姓が臣(おみ)であった有力な氏族に授けられ,系譜的には景行天皇以前の諸天皇の子孫であると称する皇別(こうべつ)の氏族であるのが特徴。ただし旧姓が連(むらじ)の中臣氏,旧姓が公(きみ)の大三輪氏・胸方(むなかた)氏・鴨氏のように神別(しんべつ)とされている氏族もふくまれている。朝臣の語義は,アセ(吾兄)の古形で敬愛の意をあらわすアソ(吾兄)という呼称と,朝廷の臣下であることを示すオミ(臣)との複合語で,漢語の〈朝臣〉をあてはめたものといわれている。古くは〈あそみ〉とよみ阿曾美とも表記された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「朝臣」の意味・わかりやすい解説

朝臣
あそん

684年(天武天皇13)に制定された八色(やくさ)の姓(かばね)の第二位の姓。第一位の真人(まひと)は、天皇の縁者で功績のあった豪族に与えられたが、朝臣は蘇我(そがの)(石川)臣(おみ)、大春日臣(おおかすがのおみ)、下道臣(しもつみちのおみ)、上毛野君(かみつけぬのきみ)など、それより遠縁とされる有力な豪族に与えられた。初めは真人の下に置かれたが、まもなく逆転し、のちしだいに高い地位を表す姓となった。平安時代以降は第一位の姓として、多くの豪族がこれを名のった。

[原島礼二]

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百科事典マイペディア 「朝臣」の意味・わかりやすい解説

朝臣【あそん】

〈あそみ〉とも読む。日本古代の(かばね)の一種。天武朝の八色(やくさ)の姓の第2位で,初めは皇別氏族の有力者に賜与(しよ)。平安時代からは最高の姓とみられ,皇子,皇女の臣籍降下の際にも賜与。
→関連項目菅原氏

朝臣【あそみ】

朝臣(あそん)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「朝臣」の解説

朝臣
あそん

古代のカバネ。敬愛の意を示すアソに朝廷の臣下を意味する漢語「朝臣」をあてたもの。684年(天武13)に制定された八色の姓(やくさのかばね)のうちの第2等として定められた。そのとき朝臣姓を賜った52氏の旧姓は,臣(おみ)が39氏,君が11氏,連(むらじ)が2氏で,景行天皇以前の諸天皇の後裔と称する疎遠な皇別氏が多い。最上級の官人をだす母体であった。平安時代以降カバネ制が衰退するにつれて賜姓対象が広範になった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「朝臣」の意味・わかりやすい解説

朝臣
あそん

「あそみ」ともいう。古代の (かばね) の一つ。八色 (やくさ) の姓 (684制定) の第2位。皇別氏族の有力者に与えられたが,のちには有力氏族がこれを称した。平安時代には最高の姓となった。やがて単に身分を表わす言葉となり,特別の由緒ある氏以外は,すべて朝臣を称するようになった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「朝臣」の解説

朝臣
あそん

684年天武天皇が制定した八色の姓 (やくさのかばね) の一つ
「あそみ」とも読む。真人 (まひと) につぐ第2位。初め皇別諸氏の有力者に与えられた。8世紀末以降,渡来系氏族や源・平などの皇親氏族にも授けられ,八姓中の第1位を占めるようになった。

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普及版 字通 「朝臣」の読み・字形・画数・意味

【朝臣】ちようしん

官吏。

字通「朝」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の朝臣の言及

【氏姓制度】より

… このような氏の再編の作業はひきつづき行われ,684年(天武13)に,〈八色の姓(やくさのかばね)〉が制定された。その目的は,上位の4姓(かばね),つまり真人(まひと),朝臣(あそん),宿禰(すくね),忌寸(いみき)を定めることで,真人は,継体天皇より数えて5世以内の世代の氏にあたえられたといわれ,皇子・諸王につぐ皇親氏族を特定したので,飛鳥浄御原令で,官位を皇子・諸王と貴族(諸臣)で区別したことと共通する。したがって,貴族の姓(かばね)としては,朝臣,宿禰,忌寸の三つで,これが〈甲子の宣〉の大氏,小氏,伴造氏の発展形であり,その間にさらに氏族の再編が進められ,朝臣52氏,宿禰50氏,忌寸11氏におさめられたのである。…

【八色の姓】より

…天武の新姓ともいう。《日本書紀》天武13年10月条に〈諸氏の族姓(かばね)を改めて,八色の姓を作りて,天下の万姓を混(まろか)す〉とあり,真人(まひと),朝臣(あそん∥あそみ),宿禰(すくね),忌寸(いみき),道師(みちのし),(おみ),(むらじ),稲置(いなぎ)の8種類があげられている。第1の真人は,主として継体天皇以降の天皇の近親で,従来,公()(きみ)の姓を称していたものに授けられた。…

※「朝臣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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