改訂新版 世界大百科事典 「大ぬさ」の意味・わかりやすい解説
大ぬさ (おおぬさ)
《大怒佐》《大幣》とも表記する。近世の音楽・歌謡書。著者不詳。1685年(貞享2)初刊とされるが,87年刊《糸竹(しちく)大全》に《紙鳶(いかのぼり)》《知音の媒(ちいんのなかだち)》と合収,99年(元禄12)版が流布。4巻。〈引手あまた〉の意から大幣の字をあてて書名としたものだが,本文中にその用字はない。巻一は三味線の奏法などの記事と《吉野山》《すががき》などの譜,巻二は《りんぜつ》《れんぼながし》《当世なげぶし》の譜,巻三は三味線組歌の本手・破手(はで)の詞章と,秘曲の曲名,巻四は新曲22曲の詞章を収める。記譜のあるものは《紙鳶》の一節切(ひとよぎり)の譜と対照され,《れんぼながし》以外は《糸竹初心集》の箏譜と比較できる。これらによって近世初期の三曲合奏の実態を把握しうる。巻三・四の詞章は,地歌詞章のまとまったものとして最古のもの。
なお,同名の歌学書もあり,これは中川自休著,1834年(天保5)刊。1冊。村田春海(はるみ)門下の秋山光彪(みつたけ)の《桂園一枝評》に対して,《桂園一枝》の作者香川景樹が自門の著者に反駁させたもの。
執筆者:平野 健次
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