平野(読み)ひらの(英語表記)plain

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精選版 日本国語大辞典 「平野」の意味・読み・例文・類語

ひら‐の【平野】

[1] 平坦な野原。へいや。
[2]
[一] 大阪市中央区北西部の町名。薬種問屋両替商が多かった。
[二] 京都市北区南西部の地区名。古くは山城国葛野(かどの)上林郷。衣笠山東麓に位置し、平野神社がある。
[三] 大阪市の行政区の一つ。市の南東端にあり、中央部を平野川が流れる。中世から近世にかけて大商人が多く、堺とならぶ自治都市を形成。江戸時代は河内木綿の中心地。昭和四九年(一九七四東住吉区から分区成立。

へい‐や【平野】

〘名〙 山地に対し、低く平坦で、かつ広い地形。平原。
太平記(14C後)二九「所は何く共知らず渺々たる平野に」 〔梁簡文帝‐智法師墓誌銘〕

ひらの【平野】

姓氏の一つ。

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デジタル大辞泉 「平野」の意味・読み・例文・類語

へい‐や【平野】

平らに広くひらけた土地。成因により海岸平野構造平野浸食平野堆積平野沖積平野などに分けられる。
[類語]平地平原盆地野原広野ひろの広野こうや広原高原原っぱ松原草原そうげん草原くさはら草地野中野良野末野面田野

ひらの【平野】[地名]

京都市北区、衣笠山の東麓の地名。和歌では、ふつうその地にある平野神社をさす。[歌枕]
「ちはやぶる―の松の枝しげみ千代も八千代も色はかはらじ」〈拾遺・賀〉
大阪市南部の区名。中世はと並ぶ商業地、近世は河内木綿の集散地として発展。大念仏寺がある。

ひらの【平野】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「平野」姓の人物
平野国臣ひらのくにおみ
平野啓一郎ひらのけいいちろう
平野謙ひらのけん

ひら‐の【平野】

平坦な野原。へいや。

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改訂新版 世界大百科事典 「平野」の意味・わかりやすい解説

平野 (へいや)
plain

もともと平野という語は,平地,平原,低地などの語とほぼ同じ意味をもち,常識的には,ある程度の広がりをもつ比較的平坦な土地を指す。しかし,丘陵,高原などと呼ばれる地形との厳密な区分はむずかしく,どの程度の土地の起伏(凹凸),傾斜,高度をもつものまでを平野と呼ぶかの基準はたてがたい。なお,周囲の大部分を比較的高い山地に囲まれている平野(高度は問わない)は盆地と呼ばれる。

 平野は,その成因により,(1)土地が浸食されて平坦化された浸食平野(ペディメントpediment,準平原構造平野など),(2)土砂の堆積によってつくられた堆積平野(扇状地三角州などの沖積平野,湖岸平野,海岸平野,氷河周辺にみられるアウトウォッシュ・プレーンなど)とに二大別される。

 平野は古くから人間生活の主舞台となってきた。世界の四大文明発祥地はいずれも,黄河,インダス川,ティグリス・ユーフラテス川ナイル川のつくった堆積平野上に発達した。元来これらの地域は半乾燥~乾燥地域であり,文明を支えたのは,豊かな水と川の運んだ洪水堆積物であった。技術の発達した現在でも,平野は,まず農地として,次いで,都市・工業用地として欠くことのできない土地である。しかし,永年にわたって使用されてきた農地には,土壌浸食や塩害などによってその生産力が極度に落ちてきている例もみられる。インダス文明メソポタミア文明の滅亡の最大原因は塩害による農地の生産力低下であったともいわれている。

 日本の平野は,大陸地域にみられるものに比較して小規模であり,浸食平野はあまりみられない。日本の平野は大部分,河川の流路沿いや海岸に沿って発達する堆積平野である。日本の平野を構成する主要な地形は沖積低地洪積台地で,2者は明瞭な崖で境される。これは,台地が洪積世(更新世)後期中の,おもに13万~2万年前につくられたのに対し,低地は洪積世末に起こった海面の低下(100m強)によって河川下流部に谷がつくられ,次に約1万年前以降の沖積世(完新世)に起こった縄文海進(海面上昇)によって形成された入江を埋めて沖積層が堆積したからである。また,火山国日本では,台地が厚い火山灰(いわゆるローム層)に覆われていることが多い。日本の平野は多少とも土地が沈降し続け盆地状を呈する河川下流部にとくに発達する。したがって,沈降の速さや,沈降運動の様式・広がりなどが原因となり,ほとんど沖積低地からなるもの(新潟平野),沖積低地と洪積台地とが入り組んで発達するもの(関東平野),ほとんど台地のみからなるもの(青森県の三本木原)など多様である。

 新潟平野は,石狩,津軽,庄内の各平野などと同様,大部分沖積低地からなっている。この平野は山麓部が扇状地や段丘に縁取られる以外,大部分標高10m以下の低平な平野で,海岸沿いには数列の砂丘が連なっている。低地は加治川阿賀野川,信濃川などから運び出された土砂で埋め立てられて,中世までは沼や湿地(泥炭地)の広がる所であったが,近世以降の長い治水の歴史と近年の給・排水網の整備によって美田となった。排水不良の沼沢地の多かった原因は,海岸に発達する砂堆による河口の閉塞,河川沿いに発達する自然堤防による後背地の湿地化に加え,平野全体が沈降傾向にあるためであろう。

 関東平野は,東北日本弧と伊豆小笠原弧の夾角部にみられる大きな沈降部にできた日本最大の平野で,周囲を山地に囲まれ盆地状を呈している。関東平野は利根川をはじめとする河川の運び出した土砂で埋め立てられてきたが,新第三紀(2600万~200万年前),第四紀(200万年前以降)を通して海湾であった。沈降を続けて盆地状の地形を呈していたものが,第四紀末になって沈降から隆起に転じたものと思われる。このため,時代を異にする数段の洪積台地が広い面積を占めている。これらの台地は,それぞれ下末吉面,武蔵野面,立川面などに区分され,このうち最も広い面積を占めているのが,最終間氷期(12万~13万年前)の海面上昇期の平坦な浅海底面が陸化した下末吉面である。下末吉面の形成後は,海面は昇降を繰り返しながら全体として低下し,最終氷期極相期(約2万年前)には,現在より-120~-140mに達し,東京湾口までも陸化し,下末吉面やその後に形成された土地を深く刻む谷が海へと延びていった。その後,沖積世に入り海面が再び上昇し,谷を埋め立てて沖積低地がつくられ,台地と低地の入り組んだ平野が形成された。

 日本のように,けわしい山地が海まで迫る島弧では,平野は海岸部や河川下流部にみられる沖積平野や山間の盆地など,規模が小さく,平野の幅も最大100kmほどでしかない。これに対し,大陸地域では,大河の下流域につくられる三角州平野(ナイル,ミシシッピなど)などの堆積平野の規模が大きいうえに,さらに広大な構造平野がみられる。ヨーロッパ・ロシアの大平原や北アメリカの内陸低地などが代表例である。これらは,ほぼ水平な古い地層と浸食した小さな波状の起伏のみられる平坦地で,しかも,地質構造を反映した浸食平野である。南イングランド南部からフランス北部の低地は,中生代~古第三紀の海成層のつくる構造平野であり,長い間,浸食が進むうちに,差別浸食の効果が地表に現れ,大規模なケスタ地形をつくっている。
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日本歴史地名大系 「平野」の解説

平野
ひらの

紙屋かみや(荒見川・天神川)を境として北野きたのの西北方に広がり、衣笠きぬがさ山の東麓に至る一帯。ほぼ中央に平野神社がある。

貞観一四年(八七二)一二月一五日の太政官符(類聚三代格)で平野神社に社地(神社の東、紙屋川の西)として寄せられた一町が、

<資料は省略されています>

とあり、平野神社辺りが上林かむつはやし郷に属していたことが知られる。上林郷はこれ以前、「続日本後紀」承和二年(八三五)正月一九日条にも「山城国葛野郡上林郷地方一町賜伴宿禰等為氏神」とある。伴氏の氏神社は「延喜式」神名帳に「伴氏トモウチノ神社」とあり、伴氏は後に北野の森に祀られる菅原道真の母、伴氏(少納言伴善績よしすみの娘と伝える)の同族と思われるが、おそらくこの時代神社が創建されたのであろう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「平野」の意味・わかりやすい解説

平野
へいや
plain

地表の凹凸の少い比較的平坦な地形をいう。形成原因により堆積平野浸食平野に大別される。堆積平野は主として河川の堆積作用によって生じたもので,扇状地三角州自然堤防帯,後背湿地などを含む。また海成堆積面が離水したものは海岸平野と呼ぶ。堆積平野は日本など新しい造山地域に多く発達する。浸食平野は流水,氷河,風などの浸食作用によって起伏ある山地が削られて平坦化したところで,地盤の安定した古大陸塊や古い造山帯に広く分布する。

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普及版 字通 「平野」の読み・字形・画数・意味

【平野】へいや

広野。唐・杜甫〔旅夜、懐を書す〕詩 星は野に隨つて闊(ひろ)く は大に涌(わ)いて

字通「平」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「平野」の意味・わかりやすい解説

平野【へいや】

現在の河床とほぼ同高度にある低平な地形。河川,海,氷河,風などの浸食または堆積作用で形成され,海底や湖底の堆積層が隆起して平野化したものもある。たとえば構造平野堆積平野沖積平野海岸平野など。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「平野」の解説

平野
ひらの

大阪府の大和川下流右岸,平野川中流左岸に位置する地域。古代に坂上田村麻呂の子広野麻呂の所領で,広野が転訛して平野になったという。中世には平野荘,近世初頭には平野郷と称したが,1702年(元禄15)以降平野郷町と改称。中世以来南蛮貿易に活躍した末吉氏ら7家が惣年寄として町政にあたった。17年(享保2)土橋友直らが郷学の含翠(がんすい)堂を創設,教育のほか社会事業も行った。1974年(昭和49)大阪市平野区となる。

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事典 日本の地域遺産 「平野」の解説

平野

(青森県弘前市徒町川端町7)
趣のある建物」指定の地域遺産。
大正時代建築。1955(昭和30)年から割烹として営業

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「平野」の解説

平野
ひらの

大阪府南東部にある一区で,戦国時代以来の商業都市
堺とともに自治都市として栄えた。この地の末吉氏は朱印船貿易に活躍し,ルソン・東京 (トンキン) などと貿易を行い有名。

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農業関連用語 「平野」の解説

平野

起伏が極めて小さく、ほとんど平らで、広く低い地域にある農業集落をいう。
なお、平地から続いた広く平らな地域であって、標高が概ね200m未満の範囲の地域にある農業集落を含む。

出典 農林水産省農業関連用語について 情報

事典・日本の観光資源 「平野」の解説

平野

(山形県長井市)
美しい日本のむら景観100選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の平野の言及

【海底地形】より

… 深海小丘地域abyssal hills海底の小さな高まりがある地域。 深海平原abyssal plainplain―深海にあって,平たんか緩く傾斜するか,またはほぼ水平な地域。 瀬shoal沖合にある未固結物質からなる海上航行に危険な場所。…

※「平野」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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