日本大百科全書(ニッポニカ) 「大兄制」の意味・わかりやすい解説
大兄制
おおえせい
皇位継承が兄弟間で継承されることの多かった5世紀の段階から、父子継承が根を下ろし始める7世紀後半に至るまでの過渡的な皇位継承の制度。「おいね」とも読む。6世紀の勾大兄皇子(まがりのおおえのおうじ)から7世紀の中大兄(なかのおおえ)皇子までの約1世紀半にわたって、大兄の称を付す有力皇子が少なくないことから、大兄の称が皇太子制に先行する律令(りつりょう)制以前の皇位継承を探る手掛りとされてきた。しかし、大兄が同時に複数存在したのか否かなどの細部に至ると異論が多い。また、大兄の称が皇族以外の氏族でも使用されている例のみられることから(船氏王後(ふなしおうご)墓誌)、大兄の称を、直接、皇太子に先行する称とみなさない見解もある。
[荒木敏夫]