大学事典 「大学と特許」の解説
大学と特許
だいがくととっきょ
大学の研究成果は社会に還元されることが望ましい。アメリカ合衆国では,大学による特許保有のあり方が1960年代から注目され(宮田由紀夫『アメリカの産学連携と学問的誠実性』玉川大学出版部,2013年),1980年のバイ・ドール法(アメリカ)(Bayh-Dole Act)では,連邦政府の研究開発費を受領した大学等に,成果である特許を帰属させて企業への技術移転を推進した。同年に最高裁は生物特許を認めて特許の対象を拡大した。1980年代から特許権侵害の損害賠償額は高騰し,大学発ベンチャー企業等が擁護された。スタンフォード大学は,1980年に成立した特許から2億5000万ドル以上の例外的な高収入を得た。日本では産業活力再生特別措置法(日本版バイ・ドール法,1999年)や知的財産基本法(2002年)が制定され,技術移転機関や知的財産本部が少なからぬ大学に設置された。日本の大学等の特許権保有数は3万1000件,特許権収入は20億円である(2014年度)。2009年度からの伸びは前者が4.7倍,後者は2.2倍で,この間に収入を生まない特許が増えたとみられる。
著者: 塚原修一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報