大学事典 「『大学の効用』」の解説
『大学の効用』
だいがくのこうよう
1963年,クラーク・カー,C.(Clark Kerr,1911-2003)がハーヴァード大学で行った講義録。カーは1958年にカリフォルニア大学第12代総長に就任し,同年ハーヴァード大学から名誉学位を授与され,60年にはカリフォルニア高等教育マスタープランの策定に貢献した。1963年,1903年から続く有名なゴドキン講座で「The Uses of the University」と題する講義を3日間にわたって行った。大学はアメリカ合衆国で最も古い社会機構の一つであるが,最新の地位を占めているとの認識から,大学をして「誤用」ではなく「効用」の方向性のもとに理解すべきと論じた。大学はもはや単一の集団組織ではないと喝破し,「University」から「Multiversity(マルチバーシティ)」に変貌を遂げたと宣言している。翻訳書は東京大学総長であった物理学者茅誠司の監訳で,1966年に東京大学出版会から刊行された。
著者: 羽田積男
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報