大野屋惣八店跡(読み)おおのやそうはちみせあと

日本歴史地名大系 「大野屋惣八店跡」の解説

大野屋惣八店跡
おおのやそうはちみせあと

[現在地名]中区錦二丁目

大惣・大総とも書き、全国に知られた貸本屋。屋号の大野屋は出身地知多郡大野おおの(現常滑市)にちなむ。天保元年(一八三〇)頃までは酒屋、宝暦四年(一七五四)からは薬屋をも営んだ。明和四年(一七六七)胡月堂と称して貸本屋を創業。蔵書の主体は通俗本で、維新当時、三棟の書物蔵に満ちあふれたという。碁盤割の中心に位置する地の利もあって、武士・町人らがのれんをくぐった。滝沢馬琴は名古屋滞在中、当家を訪れ、宣伝文「伏稟」で「古人琴書酒の三を以つて友とす、しかれども酒は下戸にめいわくさせ、琴はゆるしに黄金をしてやらる、只書のみ貴賤となく、友とするに堪えたりといへども、又書籍にも往々得がたきありて、高価に苦しむもあり、夫れ一月雇の女房後腹をやまず、十日切りの貸本紙魚のわずらひなし、尤もかりて損のゆかざるもの、ゆふ立の庇雨の日のかし本」と述べた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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