大学事典 「学費値上げ反対闘争」の解説
学費値上げ反対闘争
がくひねあげはんたいとうそう
学費値上げ反対闘争は,学生の生活の防衛であると同時に,学生であることが金銭による検閲の拘束を受けないことの意思のあらわれでもある。国家や経済は,学費を通じて大学を捕獲しようとする。そのことを端的に示しているのは,1948年(昭和23)6月の最大規模のストライキ(114校,20万人)だろう。争点は学費の値上げのみならず,学外理事の導入による国立大学の管理(「社会化」といわれた)である。闘争の結果,大学理事会法案は撤回され,奨学金や学割の拡大をみた。その後,学生運動は政治化していくが,1965年の慶應大学では学費値上げが焦点化される。それは現在の大学の「ユニバーサル化」(マーチン・トロウ)とその欲求の先触れをなすものといえるだろう。実際,21世紀の世界に広範にみられる100万人規模の大学ストライキのスローガンは,例外なく学費値上げ反対ないし「Free Education(教育の自由=無償)」を掲げる。賭けられているのは,国家や経済のロジックからの自由である。
著者: 白石嘉治
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報