検閲(読み)ケンエツ(英語表記)censorship

デジタル大辞泉 「検閲」の意味・読み・例文・類語

けん‐えつ【検閲】

[名](スル)
調べあらためること。
「二十句の佳什を得るために千句以上を―せざるべからず」〈子規・墨汁一滴〉
公権力書籍新聞・雑誌・映画・放送信書などの表現内容を強制的に調べること。日本国憲法では禁止されている。
精神分析用語。無意識の層の中にある非道徳的で危険な願望を、超自我抑圧・変形すること。
[類語]検査点検検定検するけみするえっする改める検分吟味実検臨検査閲監査チェック調べる

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図書館情報学用語辞典 第5版 「検閲」の解説

検閲

言論出版などの表現活動に対して,事前に公権力が思想内容を審査し,必要があれば,その内容などについて削除や訂正を求めたり,発表を禁止すること.日本では,検閲は,「日本国憲法」第21条で禁止されている.検閲は,絶対的禁止であり,公共の福祉などの制限を受けることはない.図書館における検閲は古くて新しいテーマであり,資料収集,資料提供とのかかわりにおいて,公権力以外に,個人や団体から,特定の図書館資料に対する苦情異議が述べられることも含んでいる.検閲の目的や動機は,道徳的,政治的,宗教的理由などによる制限や抑圧にある.ゲルホーン(Walter Gellhorn 1906-1995)によれば,“検閲の弁護者たちは,検閲を個人の徳の堕落,文化水準の低下および民主主義の一般的保障崩壊を阻止する手段と考えている.これとは逆に,検閲に反対する人々は,検閲なるものは,民主主義の生命を支えるこれらの徳と基準を育成向上させる自由に対する脅威である,とみているのである”.また,検閲には自己検閲という問題が新しく生じている.検閲の極端な行為として焚書がある.

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百科事典マイペディア 「検閲」の意味・わかりやすい解説

検閲【けんえつ】

思想・表現の公表(文書,写真,映画,放送など)に際し,公権力をはじめ社会的に力をもつ個人や団体がその内容を検査し,不適当と判断した場合に規制を加える(発売・上映等の禁止,変更,削除など)こと。事前検閲と事後検閲とがあるが,一般には前者をさす。近代検閲の歴史は活版印刷など大量の複製技術の成立とともに始まる。日本では明治維新直後の1869年に出版条例が,1875年に新聞紙条例が制定されている。それが明治憲法下でそれぞれ出版法(1893),新聞紙法(1909)として整備・強化され,1917年には映画検閲を目的とした活動写真興行取締規則が警視庁から公布されている。戦時下には言論・出版・集会・結社等臨時取締法(1941年)なども加わり,とりわけ厳重であった。戦後の現行憲法は明文で禁止している(日本国憲法第21条)。→表現の自由

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普及版 字通 「検閲」の読み・字形・画数・意味

【検閲】けんえつ

検察する。〔洛陽伽藍記、二、崇真寺〕比丘(ぴく)惠凝、死して七日を經て(ま)た活く。云ふ、閻羅(えんら)王檢し、錯召を以て放せらると。

字通「検」の項目を見る

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世界大百科事典 第2版 「検閲」の意味・わかりやすい解説

けんえつ【検閲 censorship】

狭義では,言論・出版等の思想表現行為に対し,公権力が事前にその内容を検査し,不適当と認めるときは規制(発売・発行・上映・上演・放送等の禁止・変更・カット等)を加える措置をいう。しかし,発表後であっても,処罰が過酷・無原則であるため自主規制を余儀なくされる場合には,やはり実質上検閲を構成することになる。広義では,公権力のみならず,社会的に力をもつ個人や団体が同様の規制を行うことも検閲といえる。日本国憲法(21条2項)のみならず,近代憲法は原則として検閲を禁じているが,最近では,検閲行為は送り手(発表者)の自由侵害だけでなく,受け手(読者,視聴者)の知る自由を奪うものとして,絶対的に禁止すべきだ,と考えられるようになった。

けんえつ【検閲 censorship】

S.フロイトの用語。夢では覚醒時にくらべて無意識的内容が浮上しやすくなるが,それでも無意識的内容が前意識―意識系に到達することを禁止したり抑制する機能が働いている。この機能を検閲という。その結果,夢の歪曲が成立し,夢の意味のわかりにくさの一因となっている。この検閲という概念は,超自我の概念の理論的な先駆とみなされる。【下坂 幸三】

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「検閲」の意味・わかりやすい解説

検閲
けんえつ
censorship

公権力が,表現行為ないし表現物を検査し,不適当と判断する場合には発表を禁止すること。公表以前に行う事前検閲,公表後に行う事後検閲とに分れる。いずれも,国民の表現の自由を侵害しやすいので,近代の憲法では,検閲を禁止する条項をおくものが多い。日本国憲法は 21条2項でこれを禁じている。

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世界大百科事典内の検閲の言及

【検閲】より

…狭義では,言論・出版等の思想表現行為に対し,公権力が事前にその内容を検査し,不適当と認めるときは規制(発売・発行・上映・上演・放送等の禁止・変更・カット等)を加える措置をいう。しかし,発表後であっても,処罰が過酷・無原則であるため自主規制を余儀なくされる場合には,やはり実質上検閲を構成することになる。広義では,公権力のみならず,社会的に力をもつ個人や団体が同様の規制を行うことも検閲といえる。日本国憲法(21条2項)のみならず,近代憲法は原則として検閲を禁じているが,最近では,検閲行為は送り手(発表者)の自由侵害だけでなく,受け手(読者,視聴者)の知る自由を奪うものとして,絶対的に禁止すべきだ,と考えられるようになった。…

※「検閲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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