朝日日本歴史人物事典 「孫夜叉」の解説
孫夜叉
鎌倉・南北朝時代の女性。石見国(島根県)の在地領主永安兼祐の娘。吉川経茂の妻。夫の死後,良海と称する。父の遺言により,母一期ののちに永安別符,益田荘内小弥富,寸津などを知行。母良円の死後,弟兼員との間に相論が生じたが,和与,折中の裁許を受け,永安一方地頭となった。のちこの所領を嫡子吉川経貞に譲るが,貞和5/正平4(1349)年悔い返し,次男経兼を嫡子として譲与,そのほかの子にも門田や所領を分譲している。このように,いったん嫡子と決めた子を勘当し,別の子を嫡子と定め,数子に所領を譲与したのは,良海が後家尼であり,家長権を握っていたからである。<参考文献>『吉川家文書』
(田端泰子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報