改訂新版 世界大百科事典 「宋胡録焼」の意味・わかりやすい解説
宋胡録焼 (すんころくやき)
日本におけるタイ陶磁の総称。主産地であるタイ中部のスワンカロークSwankhalok(またはサワンカロークSawankhalok)の名から転じたという。実際には窯はスワンカローク市の北方60kmのスリサッチャナライ市近郊にあり,いくつかの村にわたって145基の窯址が確認され,大規模な窯群が形成されていたことが知られる。その開窯は14世紀後半までさかのぼれる可能性がつよく,スコータイ王朝下にあってスコータイ窯とともに中国元代の陶業,陶磁の影響のもとに焼造活動をはじめた。製品は鉄絵に元代景徳鎮窯の染付磁器,青磁に元代竜泉窯の青磁の影響がすこぶる濃厚で,その前の宋代陶磁は写していない。この鉄絵,青磁のほか,黒褐釉,白濁釉などの陶器も焼かれ,中国陶磁を手本とした器形のほか,人物像や仏教的な彫塑像,さらに建築用タイルや装飾具もおおいに焼いた。小堀遠州が〈すむころく〉と箱書きした鉄絵香合は松平不昧が所持して名高いが,おそらく江戸初期に日本にも少なからず輸入され茶人に珍重された。17世紀にはスワンカローク窯は廃滅したと推測される。
執筆者:矢部 良明
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