改訂新版 世界大百科事典 「官板バタヒヤ新聞」の意味・わかりやすい解説
官板バタヒヤ新聞 (かんぱんバタビヤしんぶん)
幕末に発行された邦訳新聞。日本における新聞出版の嚆矢(こうし)。長崎のオランダ商館は幕初以来,毎年オランダ商船のもたらす海外情報を江戸幕府に献上していた。これを〈オランダ風説書〉といったが,安政末年にいたってジャカルタのオランダ総督府機関紙《ヤファンシェ・クーラントJavaansche Courant》が代わって献上されるようになり,蕃書調所が翻訳して幕政当局に提出した。1862年(文久2)1月,幕府は御用書肆であった本所竪川三之橋の老皀(ろうそう)館に,これを《官板バタヒヤ新聞》と題して出版させた。同年2月には2冊目が,8月と9月には《官板海外新聞》と改題して3冊目および4冊目が出版された。内容はそれぞれ《ヤファンシェ・クーラント》の国別情報欄の抄訳で《バタヒヤ新聞》は1861年の8~11月分を,《海外新聞》は62年の1月分を原本とし,翻訳はいずれも蕃書調所を改称した洋書調所が担当した。62年には,このほか欧米諸国の新聞の抄訳が《海外新聞別集》3冊として出版されている。以上の諸新聞はすべて木活字印刷で書籍スタイルの単行本であった。なお,幕府の手による外国新聞の翻訳出版事業は,文久2年度のみで中止された。
執筆者:平井 隆太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報