日本大百科全書(ニッポニカ) 「川村多實二」の意味・わかりやすい解説
川村多實二
かわむらたみじ
(1883―1964)
動物生態学・陸水生物学者。岡山県津山市の生まれ。1908年(明治41)東京帝国大学を卒業。京都帝国大学大津臨湖実験所で日本の淡水生物学を創始。その後、同大学理学部動物学教室の教授として、動物生理学・動物生態学の研究者を育てた。採集した死物ではなく、生きたものの観察によって生物の生活実態をつかもうとする態度は大きな影響を与え、第二次世界大戦後の著作『鳥の歌の科学』(1947)は今日も広く読まれている。また人間および動物の運動姿態を美術家に科学的に教えた点でも日本での嚆矢(こうし)とされる。著書に『藝用解剖学』(1913)、『日本淡水生物学』上下(1918)、『動物生態学』(1931)、『動物群聚(ぐんしゅう)研究法』(1938)などがある。
[川那部浩哉]