上下(読み)じょうげ

精選版 日本国語大辞典「上下」の解説

じょう‐げ ジャウ‥【上下】

〙 (「じょう」「げ」はそれぞれ「上」「下」の呉音)
[一] 垂直的な空間の位置で、高いほうと低いほう。
① 位置の高いほうと低いほう。かみとしも。また、上から下まで。
※栄花(1028‐92頃)音楽「上下四方種々光明照し耀けり」 〔周礼‐春官・卜師〕
② 掛物の表具で、上と下との切れ地。掛物の天地
※浮世草子・好色一代男(1682)六「きゃふを上下帯を中べりにして、姿絵の懸物かぎりなく」
③ 衣服で上衣と下衣が対になったもの。肩衣(かたぎぬ)とを同色に染めたもの。かみしも。現代では、上衣とズボン(またはスカート)で一そろいになっている服。
※随筆・東牖子(1803)二「上下(ジャウゲ)大小といへば、武家仮初の礼服、劔佩の儀表調へり」
※徳山道助の帰郷(1967)〈柏原兵三〉一「三越に出かけて、既製服の背広上下を買った」
④ 本などを二つに分けたときの、始めの方と後の方。二巻に分かれている本の上巻と下巻。
※俳諧・去来抄(1702‐04)故実「『浪化集(らうくゎしふ)』の時、上下を有磯海(ありそうみ)・となみ山と号す」
⑤ (━する) あげたりさげたりすること。あげさげ。また、あがったりさがったりすること。あがりさがり。
※日本書紀兼倶抄(1481)上「坂は上下する処のあるを云ぞ」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉四「三尺の童子も吾輩を自由に上下し得るであらうが」
[二] 水平的な空間の中に認められる、高い方と低い方。
① 都からの遠近(近が上)。都の中の南北(北が上)。
※先代旧事本紀(806‐936頃)一〇「下毛野国造 難波高津朝御世。元毛野国分為上下
② (━する) 川上と川下の間を往復したり、行き来したりすること。また、人や車などが都市と地方、または都と地方とをむすぶ道を往復したり、行き来したりすること。あるいは、それをする旅人や飛脚など。
※平家(13C前)六「上下(ジャウゲ)〈高良本ルビ〉往来の船のわづらひなきこそ目出(めでた)けれ」
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五「此街道では上下のものや供のものへは飯を山もりにして出すといふことだ」
[三] 順序や序列を含むものの先のものと後のもの。
① 位や官職の上の者と下の者、また、身分の高い人と低い人を合わせたすべての人びと。
※今昔(1120頃か)四「上下、多の人の頸を切り捨てつ」 〔易経‐序卦〕
② 君主と臣下。主人と家来。主従。
※経国集(827)二〇・大日奉首名対策文「損益之大旨、用之則上下和穆、捨之則貴践崩離」
※黄表紙・敵討義女英(1795)上「桂新左エ門といふ者あり〈略〉総領の浅太郎をともなひ上下四五人にて伊豆のいで湯へくだりける」 〔礼記‐曲礼上〕
③ 年長者と年少者。長幼
※今昔(1120頃か)二〇「兄弟の上下の次第无して理を失へりしが故に」 〔呂氏春秋‐論威〕
④ ある数値の上と下。また、その間をあがったりさがったりすること。
※東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉自序「東京全市の亡霊、十万を上下する迷へる魂が」
[四] (━する) ことばのやりとりをすること。問答すること。討論すること。
※随筆・折たく柴の記(1716頃)下「たやすく心に得らるまじき事共をば、幾度も詮房朝臣して、其論を上下し給ひ」
[五] 年齢に付けて、その前後の年頃であることを示す。前後。
※江戸繁昌記(1832‐36)四「一女子、年紀廿上下、顔色も亦七八分」

あげ‐さげ【上下】

〘名〙
① 上げることと下げること。高くしたり低くしたりすること。
(イ) 物の位置を上げたり下げたりすること。
※玉塵抄(1563)一九「首をあげさげしたなりぞ」
(ロ) 音声を高くしたり、低くしたりすること。とくに謡曲では、低音部から一音高い部分に上げることと高音部から一音低い部分に下げることにいう。〔申楽談儀(1430)〕
(ハ) 物価を上げることと下げること。
※洒落本・志羅川夜船(1789)西岸世界「何あれは米のあげさげだ」
② あれこれ操作して物事の処理をすること。
(イ) やりくりして事をはこぶこと。仕事や生活などのやりくりや始末をつけること。
※黄表紙・桃太郎発端話説(1792)「こっちの上(ア)げ下(サ)げさへてんやわやと来て居るものを」
(ロ) 質入れをして金銭の都合をつけること。質物の出し入れをすること。
※洒落本・深彌満於路志(1782)「例の七つ屋から拝むやうにして上げ下げしたのだやらしれず」
(ハ) ほめたり、けなしたりすること。
※咄本・聞上手三篇(1773)銀の大黒「おらは只の大黒ではない。しろかね様だは。おのしらにあげさげをされるものけい」
③ 膳などを出したり、とりかたづけたりすること。
※続俳諧師(1909)〈高浜虚子〉三五「何も彼も一人でした。客膳の上(ア)げ下(サ)げもした」
④ 潮が満ちることと引くこと。

あがり‐さがり【上下】

〘名〙
① (場所、地位などが)上がることと下がること。また、上がったり下がったりすること。
※評判記・色道大鏡(1678)三「いらざる太夫になりしよとはぢしめられ、程なくもとの天神となりき。まもなくあがりさがりする女郎を」
② (音、値段、価値などが)高いことと低いこと。また、高くなったり低くなったりすること。
※徒然草(1331頃)二二〇「いはゆる六時堂の前の鐘なり。その声、〈略〉寒暑に随ひてあがりさがりあるべき故に」
③ 京都、または近畿地方への行き帰り。
※浮世草子・元祿大平記(1702)四「御が段々かさ高になり、揚(アガ)り下(サガ)りの道中に、人目の関守つつましく」
④ (気分、調子などが)よくなることと悪くなること。また、よくなったり悪くなったりすること。
※道草(1915)〈夏目漱石〉五四「健三の気分にも上(アガ)り下(サガ)りがあった」

うえ‐した うへ‥【上下】

〘名〙
[一] 位置、程度、数量などの上下。
① 場所、位置の上の方と下の方。
※頼基集(11C初か)「照る月の流るる水し清ければうへした秋のもみぢをぞ見る」
② 身分の上の者と下の者。うえしも。
※天草本平家(1592)四「Vye(ウエ) xitamo(シタモ) ナウ アソビ タワムレ マラシテ」
③ 洋服で上半身に付けるものと下半身に付けるもの。背広の上下など。
[二] 表面と、その下にあるものごと。
① 上着と下着。
蜻蛉(974頃)中「重ねたりつる 衣手は うへした分かず くたしてき」
② うわべと胸中。
※相模集(1061頃か)「霜こほり冬の川瀬にぬるをしのうへした物を思はずもがな」
[三] 上と下とさかさまの状態。「うえしたにする(なる)」などと用いる。
※虎明本狂言・富士松(室町末‐近世初)「最前のをうへ下へないた物でござる」

しょう‐か シャウ‥【上下】

〘名〙 (「しょう」「か」はそれぞれ「上」「下」の漢音)
① うえとした。〔文明本節用集(室町中)〕
② かみとしも。身分の高い人と低い人。為政者と人民。
※五箇条の御誓文‐明治元年(1868)三月一四日「上下心を一にして、盛に経綸を行ふべし」
※文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉二「詰る所は、上下(ショウカ)相和して楽しむ様なればよいので」
③ (━する) あがったりさがったりすること。また、あげたりさげたりすること。
※三四郎(1908)〈夏目漱石〉四「結論の価値を上下(シャウカ)しやすい思索家自身から見ると」
④ (━する) ことばや意見などをやりとりすること。
※それから(1909)〈夏目漱石〉六「相手と議論を上下(シャウカ)して」

じょう‐か ジャウ‥【上下】

〘名〙
① 身分の高い人と低い人。また、上級と下級。じょうげ。しょうか。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一「最初は学校も上下(ジャウカ)各々十級に分れていたのが」
② 議会の上院と下院。
※春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉政界叢話「上下(ジャウカ)両院の中に於て最も多識なるは誰ぞやと問はんに」
③ (━する) あがったりさがったりすること。じょうげ。しょうか。
※造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉一二「此に由(より)て水中を上下(ジャウカ)するに」
※雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下「山坂を上下(ジャウカ)するもの多く此の処に休憩す」

のぼり‐くだり【上下】

〘名〙 のぼることとくだること。のぼったりくだったりすること。昇降。また、街道を往来すること。のぼりおり。
※万葉(8C後)一〇・一八二八「答へぬにな呼び響(とよ)めそ呼子鳥佐保の山辺を上下(のぼりくだり)に」
※蜻蛉(974頃)上「神がみとのぼりくだりはわぶれどもまださかゆかぬこころこそすれ」

あがり‐おり【上下】

〘名〙 上がることと下りること。上がったり下りたりすること。
※浮世草子・好色一代男(1682)七「二階には、久都(ひさいち)はしのごの上(アガ)り下(オリ)まで吟味しをるこそ憎し」

かり‐さが・る【上下】

〘自ラ四〙 調子が上がったり下がったりする。
※習道書(1430)「又、為手の調子のすこしきかりさがる事、又、さのみ不足にてはあるべからず」

のぼり‐くだ・る【上下】

〘自ラ四〙 のぼったりくだったりする。上下する。街道などを往来する。
※蜻蛉(974頃)中「うぶねどもも、のぼりくだり、ゆきちがふをみつつは」

のぼり‐おり【上下】

西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一〇「愛宕石段を上(ノボ)り下(ヲ)りをしたり」

あげ‐くだし【上下】

〘名〙 腹の中のものを吐いたりくだしたりすること。吐きくだし。吐瀉(としゃ)

うわっ‐さげ うはっ‥【上下】

〘名〙 満潮から干潮へかわってゆく間。

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デジタル大辞泉「上下」の解説

じょう‐げ〔ジヤウ‐〕【上下】

[名](スル)

㋐高い所と低い所。高い方と低い方。「乱気流で機体が上下に揺れる」「棚を上下に仕切る」
㋑あげたりさげたりすること。あがったりさがったりすること。「手旗を上下する」「上下するエレベーターが見えるビル」
衣服で、上半身用のものと下半身用のもの。洋服ではスーツ、和服ではかみしもをさすことが多い。「紺の上下にレジメンタルのネクタイ」「上下がちぐはぐな服装」
本など、ひとまとまりの内容をもつものを二つに分けた、始めのほうと後のほう。「上下の巻をまとめて買う」
地位・身分・年齢などの、上位と下位。また、その人。「上下関係にうるさい職場」「上下の別なくもてなす」
数値の高いほうと低いほう。また、数値が高くなったり低くなったりすること。「得点の上下に開きがある」「相場が激しく上下する」
川上と川下を行き来すること。のぼりくだり。「利根川を上下する船」
鉄道や道路などの、都へ向かう方と都から離れる方。また、それぞれの方向へ行き来すること。のぼりくだり。「東名高速を上下する車」「上下線」
行きと帰り。往復。
「一人乗一挺いっちょうあつらえて来てお呉れ、浜町まで—」〈二葉亭浮雲
ことばのやりとり。討論。問答。
「その論を—し給ひ」〈折たく柴の記・下〉
[類語]上げ下げ上げ下ろし上がり下がり上りくだ昇り降り昇降アップダウン振れる揺れる揺らぐ振動する微動するぐらつく動かす動く揺らす揺する揺さぶる揺すぶる揺り動かす揺り返す揺る揺るがす揺れ震動縦揺れ横揺れ

かみ‐しも【上下】

かみと、しも。うえの部分と、したの部分。身分の上位と下位、川上と川下、上半身と下半身、舞台の上手と下手、上の句下の句など。
大井川かはのしがらみ—に千鳥しば鳴く夜ぞふけにける」〈夫木・一七〉
いろいろな事。諸事。
「殿の事とり行ふべき—定めおかせ給ふ」〈須磨
衣服のうえと、した。また、それが対をなす衣服。
上代、上着とはかま
「此の嬢子をとめを得ることあらば、—の衣服をり」〈・中〉
㋑平安時代から室町時代にかけて、狩衣かりぎぬ水干直垂ひたたれ素襖すおうなどの上着と袴とが同じ地質と染め色のもの。
浅黄の—着たるの」〈宇治拾遺・一二〉
㋒(「」とも書く)江戸時代の武士礼装正装肩衣かたぎぬと、同じ地質と染め色の、わきの広くあいた袴とからなり、紋付きの熨斗目のしめまたは小袖の上に着る。麻上下を正式とし、長上下と半上下の別がある。のち、半上下は庶民にも公務や冠婚葬祭などには着用が許された。

しょう‐か〔シヤウ‐〕【上下】

[名](スル)
うえとした。じょうげ。
身分の高い人と低い人。統治者と人民。
「尚—長少の義理人情を重んじ」〈福沢福翁百話
あがることとさがること。あがりさがり。あげさげ。
「結論の価値を—しやすい思索家」〈漱石三四郎
意見や言葉をやりとりすること。
「彼は倦まずに其等の人と議論を—した」〈虚子・柿二つ〉

うえ‐した〔うへ‐〕【上下】

位置・場所などの上と下。じょうげ。「書棚の上下を入れ替える」
(「うえしたになる」の形で)上と下が逆になる状態。さかさま。「揺れて積み荷が上下になる」
身分の上下。また、身分の上の者と下の者。官と民。〈日葡
[類語]動く反対ぎゃく逆様さかさまさかあべこべかえって裏腹うらはら裏返し裏表うらおもて右左みぎひだり後ろ前正反対真逆本末転倒主客転倒

じょう‐か〔ジヤウ‐〕【上下】

上と下。また、上級と下級。じょうげ。
二院制議会で、上院と下院。「上下両院」

かる‐める【下/乙】

邦楽で、高い調子の「かる」と低い調子の「める」。かりめり。めりかり。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「上下」の解説

上下
じょうげ

広島県東部、甲奴郡(こうぬぐん)にあった旧町名(上下町(ちょう))。現在は府中市(ふちゅうし)上下町地区。1897年(明治30)町制施行。1954年(昭和29)矢野、清岳(きよたけ)、階見、吉野の4村と合併。その後、2004年(平成16)府中市に編入。旧上下町は、吉備(きび)高原上にあり、瀬戸内海へ注ぐ芦田(あしだ)川と、日本海へ注ぐ江の川(ごうのかわ)の支流上下川の分水界にあたる。JR福塩(ふくえん)線、国道432号が通じる。中心地区の上下は江戸中期には天領で代官所が置かれた。南西部の矢野にはラジウム泉で知られる矢野温泉がある。「久井(くい)・矢野の岩海(がんかい)」は周氷河期地形で国指定天然記念物。「上下の弓神楽(ゆみかぐら)」は県指定無形民俗文化財。

[北川建次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「上下」の解説

上下
じょうげ

広島県東部,府中市北部を占め,吉備高原にある地区。旧町名。 1897年町制。 1954年矢野,清岳,吉野の3村および階見 (しなみ) 村の一部と合体。 2004年4月府中市に編入。瀬戸内海側斜面の芦田川水系と日本海側斜面の江 (ごう) 川水系の分水界に位置する。中心集落の上下は元禄年間 (1688~1704) 天領となり代官所が置かれ,尾道と三次を結ぶ街道の宿場町でもあった。周辺の高原ではコンニャクイモなどが栽培され,谷間では米作を主とする。矢野温泉があり,矢野の岩海は国の天然記念物。 JR福塩線,国道 432号線が通る。

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旺文社日本史事典 三訂版「上下」の解説

上下
かみしも

安土桃山時代以来の略礼服
「裃」とも書く。武家・民間で着用。肩衣 (かたぎぬ) と袴 (はかま) 。室町時代の身分の低い武士の大礼服素襖袴 (すおうばかま) の袖を略し,袴を細くしたもの。江戸幕府では直垂 (ひたたれ) ・狩衣 (かりぎぬ) ・大紋 (だいもん) ・素襖が大礼服で,肩衣袴すなわち上下は中礼服であった。長袴を正式,半袴を略式とした。

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普及版 字通「上下」の解説

【上下】じよう(じやう)げ・しよう(しやう)か

上と下。天地。長幼。尊卑。〔礼記、曲礼上〕君臣上下、子兄弟は、禮に非ざれば定まらず。

字通「上」の項目を見る

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世界大百科事典内の上下の言及

【飛脚】より

…人足としての飛脚は,最近まで大阪の私鉄沿線で客の依頼により品物を購入して運ぶ飛脚屋として残っていた。なお近世には人足としての飛脚を上下(じようげ)と称することがある。【藤村 潤一郎】
[古代,中世]
 飛脚の語は,だいたい平安時代の末ごろから現れ,中世以降頻出する。…

※「上下」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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