精選版 日本国語大辞典 「生物」の意味・読み・例文・類語
なま‐もの【生物】
せい‐ぶつ【生物】
はえ‐もの【生物】
しょう‐ぶつ シャウ‥【生物】
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無生物と区別される属性、すなわち生命を備えているものをいう。生命は、生物の本質的属性として生命観によって抽象されるものであり、その定義はなかなかむずかしい。人間が昔から生き物としてとらえてきた属性には、物質交代、増殖能力、栄養摂取、成長、刺激反応性、修復(再生、癒傷など)能力などがあるが、そのなかで本質的属性とみられるのは物質交代と増殖である。しかし、ウイルスの本体が明らかになってからは、増殖をもっとも本質的な生物の属性と考える研究者が多い。ただし、増殖はかならず物質交代を伴い、タンパク質の外被に包まれたDNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)でできているウイルスの増殖は、宿主細胞に入ってその生命装置を用いた物質交代のもとで初めて可能となり、宿主細胞から出るとけっして増殖しない。生物は生命の起源以来進化して現在に至ったもので、互いに類縁関係をもつ一元的な自然物であると考える立場からウイルスも生物とされる。しかし、ウイルスは細胞ではなく、バクテリアのようなものから核酸だけが抜け出した、細胞の退化形態のようにも想像されていて、生物の分類上どこに位置づけるかについては定まっていない。
[川島誠一郎]
生物は常識的には動物と植物に二大別されているが、動物と植物の両方に同時に分類される生物もあり、無理がある。バクテリアなど単細胞でとくに微小なものを微生物とする動物、植物、微生物の三区分や、動物、植物、菌類、原生生物、モネラの五生物界(五界)に分けることもある。五界説では、細菌類や菌類のような生物は、いわゆる動物や植物と非常にかけ離れていて、その差が動物と植物の差よりも大きいと考え、動物界と植物界のほかにモネラ界と菌類界を設けた。他の一つは原生生物界である。原始的で動物とも植物ともとれる生物をまとめて、E・H・ヘッケルはプロチスタ界を提唱していたが、原生生物界はこのプロチスタ界からモネラを除いたものに等しい。モネラ界は、細胞核を欠くという特徴をもつ原核菌類と藍藻(らんそう)植物がおもな構成生物で、原核生物とよぶ。ウイルスやファージを生物に分類する場合にはモネラ界に入れるのが適当であろう。しかし、原核菌類はDNAとRNAをあわせもっているが、ウイルスやファージは一方のみをもつにすぎない点を重視して、ウイルスとファージでモネラ界をつくり、細菌類、マイコプラズマ、スピロヘータ、放線菌などを原核菌亜界とし、変形菌、細胞粘菌、子嚢(しのう)菌などの真核菌亜界とあわせて菌界とする分類もある。この分類の場合には地衣界を別に設け、藍藻植物を植物界のなかの原核植物亜界とする。これに対していわゆる五界説では、細胞構造の基本的な違いから、原核生物は他のすべての有核細胞生物と別にされ、その違いは、今日の地球上の生物に認められる最大の進化学的不連続性であるとされる。
[川島誠一郎]
モネラ、原生生物のほとんどの種類は全生活史を通じて単一の細胞からなる。単細胞でも、ある場合には細胞内に高度な構造分化が生じていて、たとえば繊毛虫類には運動、摂食、消化、排出、感覚などさまざまな細胞器官が分化する。動物、植物、菌類などの個体の体は多数の細胞からなっている。これら多細胞生物には、形や機能の同じ細胞が何種類か集まって特定の機能を営むために組織や器官が分化している。単細胞生物と多細胞生物の中間に細胞群体とよばれる段階がある。これは単細胞生物が寒天質などで包まれて多数が集合したり、共通の柄(え)の上に並んでいるだけで、細胞間に分化はない。なお、多細胞生物が共通の組織でつながっているもの(サンゴ、コケムシ、ある種のホヤ)も群体とよぶ。
[川島誠一郎]
地球上には少なくとも300万種の生物が生きているといわれ、絶滅した種数もそれに劣らないと考えられている。これらは形態、大きさ、機能などに著しい違いがあり、多様性に富んでいる。これらの生物の間には複雑な関係が成立していて、互いに他の環境となっている。これを生物的環境とよぶ。密接な相互関係の例は、寄生、共生、花粉の媒介でみられ、動物が植物を食べたり、ある種の動物が天敵に捕食されるのはより直接的な相互関係である。炭素循環や窒素循環のように全生物界にまたがる物質循環はこれらに比べると間接的な関係である。一定の地域に共存している生物種の間ではこのようにさまざまな関係を保っているから、どの生物種についても生物的環境の分析に基づいて初めてその機能や生活が理解できる。生物相互の関係は地球環境の変化に伴い変化してきた。また逆に生物が地球の環境にも影響を与えていることも見逃せない。
[川島誠一郎]
『木村資生・近藤宗平編『岩波講座 現代生物科学7 生命の起源と分子進化』(1976・岩波書店)』▽『リン・マルグリス著、永井進監訳『細胞の共生進化』上下(1985・学会出版センター)』
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…さらに質的には内部で分化・分節をとげ,機能にふさわしい組織・器官をみずから形成して体制を複雑化する。つまり〈有機的組織organism〉をつくるのである。それらは部分ではなく分肢であって,個体を離れては機能をもちえない。…
※「生物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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