改訂新版 世界大百科事典 「常磐湯本」の意味・わかりやすい解説
常磐湯本[温泉] (じょうばんゆもと)
福島県いわき市常磐湯本町にある温泉。食塩泉,58℃。三函(さはこ)の湯として古くから知られ,江戸時代は岩城街道唯一の温泉のある宿駅であった。この温泉は非火山性とされ,常磐炭田下の花コウ岩から断層線に沿って湧出し,明治中ごろには50ヵ所余りの源泉から自噴していた。その後ボーリングで噴湯に成功してから乱掘が行われ,湧出量は減少した。また常磐炭田の開発が進むとともに付近の炭鉱の出水が相ついで,温泉面が低下し,大正末以降はポンプによる揚げ湯も不可能となって旅館の廃業が続出した。1940年代には湯本地区の地下の炭層を採掘する代償として炭坑内からの廃湯を送って温泉に使用していた。76年常磐炭田の閉山後,常磐湯本温泉株式会社が創設され,辰ノ口地区で1日約760tをくみ上げ,その半分を常磐藤原町に開設された観光施設の常磐ハワイアンセンター(現,スパリゾートハワイアンズ)に,残りを温泉旅館その他に給湯している。
執筆者:大澤 貞一郎
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