改訂新版 世界大百科事典 「平牧動物群」の意味・わかりやすい解説
平牧動物群 (ひらまきどうぶつぐん)
日本の代表的な中新世の化石哺乳類群で,岐阜県の可児(かに)・土岐(とき)地方に分布する平牧層から産出する陸生の哺乳類によって代表される。アネクテンスゾウ,ヒラマキウマ,ムカシバク,カニサイ,ミノジカのほかにカバに似たブラキオダスがその構成者としてあげられている。暖帯型の台島(だいじま)型植物群をともなうことから南方系とされ,デスモスチルスやクジラ類の“北方系”とみなされていた中新世後期の戸狩(とがり)動物群と区別された(高井冬二,1939)。しかし,今日では,この平牧動物群とよばれるものは,中新世前期末から中期初頭にかけての約300万年にわたる各時代のものを含み,単一の動物群を示すものでないことがわかった。したがって,平牧動物群は中新世前期から中期にかけての陸生哺乳類の集合の一つのタイプを,戸狩動物群は同じ時代の海生の哺乳類の一つの組合せをよぶこととして扱われている。
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報