日本大百科全書(ニッポニカ) 「庖丁聞書」の意味・わかりやすい解説
庖丁聞書
ほうちょうききがき
料理書。成立年代は確定されないが、16世紀後半のものと推定されている。『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』に収録され、活字で読むこともできる。A5判で五ページの短編。本文は箇条書きになっていて古い本にしてはわかりやすい。「ひでり鱠(なます)といふは、削(けずり)大根の入れたる鱠也(なり)。世に是(これ)を笹吹(ささぶき)鱠といふ也」、「雪鱠は、下に魚をもり、上におろし大根を置(おき)出すを言(いふ)也」、「沈盛(じんもり)と云(いふ)は、鮫魚(さめ)の干物を削(けずつ)て、土器に盛(もり)て出す也。沈香(じんこう)(熱帯産の香木。またはその木で製した香の名)に似たる故名とす」「こん切(ぎり)といふは干鱧(はも)の事也」「宇治丸といふは、うなぎのすし也」といったぐあいに当時の料理名を解説していて有用である。また出門のときに用いる魚、鳥、盛合せしない品々なども記述されている。
[小柳輝一]