庖丁聞書(読み)ほうちょうききがき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「庖丁聞書」の意味・わかりやすい解説

庖丁聞書
ほうちょうききがき

料理書。成立年代は確定されないが、16世紀後半のものと推定されている。『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』に収録され、活字で読むこともできる。A5判で五ページの短編。本文は箇条書きになっていて古い本にしてはわかりやすい。「ひでり鱠(なます)といふは、削(けずり)大根の入れたる鱠也(なり)。世に是(これ)を笹吹(ささぶき)鱠といふ也」、「雪鱠は、下に魚をもり、上におろし大根を置(おき)出すを言(いふ)也」、「沈盛(じんもり)と云(いふ)は、鮫魚(さめ)の干物を削(けずつ)て、土器に盛(もり)て出す也。沈香(じんこう)(熱帯産の香木。またはその木で製した香の名)に似たる故名とす」「こん切(ぎり)といふは干鱧(はも)の事也」「宇治丸といふは、うなぎのすし也」といったぐあいに当時の料理名を解説していて有用である。また出門のときに用いる魚、鳥、盛合せしない品々なども記述されている。

小柳輝一

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の庖丁聞書の言及

【料理書】より

… 現存する最も古い料理書は,食膳や食事作法の有職故実について記した《厨事類記(ちゆうじるいき)》もしくは《世俗立要集(せぞくりつようしゆう)》で,ともに鎌倉末期の成立とみられるが,全貌を知りえない。室町期に入ると,将軍などの御成の際に供される本膳形式の料理との関連で,《四条流庖丁書》《武家調味故実》《庖丁聞書(ききがき)》のほか,《大草家料理書》《大草殿より相伝之聞書》といった料理技術を記した料理書が,四条流,大草流,進士流といった庖丁流派の成立に伴って出現する。これらは故実書,伝書として伝えられ,いずれも写本であったが,近世に入ると料理書が印刷に付せられ,1643年(寛永20)には《料理物語》が刊行されて新たな料理書の歴史が始まる。…

※「庖丁聞書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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