改訂新版 世界大百科事典 「御仕置裁許帳」の意味・わかりやすい解説
御仕置裁許帳 (おしおきさいきょちょう)
江戸幕府の刑事判例集。江戸幕府は当初法典や判例集は裁判官の自由な判断を拘束するものとして,作成しない方針であった。しかし判例の集積,司法の整備が進むにつれて,裁判関係者は判断についての一定の標準を求めるようになった。寛文期(1661-73)になると裁判記録が保存,整理されることとなり,元禄期(1688-1704)以後各種の判例集が編集された。《御仕置裁許帳》はこの種のもののうち最大かつ比較的よく編成されており,《公事方御定書》制定(1742)以前の幕府刑政を見る重要な記録である。江戸小伝馬町牢屋収監者の記録である《牢帳》を素材にして,裁判上以後の例となるような事件970余を231の犯罪類型に分類したもので,宝永期(1704-11)に町奉行所の吏員が私的に編集したものであろう。現存するものは国立国会図書館蔵,12巻から成り,石井良助編《近世法制史料叢書》に所収。《御仕置裁許帳》所載の判例を条文の形に編成したものが同図書館蔵《元禄御法式》で,幕府判例集の法典化として《公事方御定書》の先駆形態と見てよく,同じく《近世法制史料叢書》所収。
執筆者:平松 義郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報