日本大百科全書(ニッポニカ) 「徴税請負制」の意味・わかりやすい解説
徴税請負制
ちょうぜいうけおいせい
租税徴収の一方式で、国家が租税の徴収を民間人である徴税請負人に一定の契約によって請け負わせる方法をいう。国家はこの方法によって徴税の手続を簡略化し徴税費を節約することができるが、納税者である国民は、自己の利益の増加を図る徴税請負人の厳しい取り立てのもとで、契約額以上の額の納税を強いられるのが一般であった。
徴税請負制は、ローマ帝国やイスラム帝国においても実施されたが、絶対王制期のヨーロッパにおいて、たとえばフランスの間接税徴収の請負制fermeにみられるように、広く取り入れられ、その財政の大きな特徴となるに至った。しかし、徴税請負人による税金の取り立てが厳しくなるに伴い、国民の絶対主義に対する抵抗が強まり、アンシャン・レジーム打倒のブルジョア革命の重要な要因ともなった。
今日では徴税請負制というものは原則として廃止されており、国家や地方公共団体が納税者から直接租税を徴収する方法に改められている。ただ、国家や地方公共団体の上部団体が、徴税の便宜や経費節約の理由で、下部団体に徴収を代行してもらう配賦徴収法が併用されることはある。
[林 正寿]