心付(読み)こころづけ

精選版 日本国語大辞典 「心付」の意味・読み・例文・類語

こころ‐づけ【心付】

〘名〙
① (━する) 心をつけること。気をつけること。注意。助言。配慮。心添え。心づかい。
※大唐西域記長寛元年点(1163)五「諸の外道の一言の感(ココロヅケ)を受け」
※御伽草子・二十四孝(室町末)「幼き心にてかやうの心づけ、古今まれ也と、ほめたるとなり」
※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「夕飯には母親の注意(ココロヅケ)で一銚子付けて」
連歌連句の付け方の一つ。前句が全体として表現している意味や心情に応じて、その意味を面白くさせるような付句をするもので、連歌では二条良基が推賞し、俳諧では談林派が多く用いた。
連理秘抄(1349)「心付 言葉寄合を捨てて、心ばかりにて付くべし」
③ (━する) 心にかけて金品を贈与すること。また、そのもの。祝儀。手当。こころづき。現代では、感謝の気持や、よりよいサービスを求める気持を表わすために与える少額の金銭をいう。チップ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
朝飯(1975)〈中村光夫〉二「運転手にも助手にもいやな顔をされなかったのは父が心付をはずんでゐたからであらう」

こころ‐づ・く【心付】

[1] 〘自カ四〙
① 今まで意識の中にはいらなかった物事が、意識される。気がつく。
落窪(10C後)三「などかさしも思ほし落とすべきと心つきてなん、かく俄にわたり侍つる」
旧主人(1902)〈島崎藤村〉五「今更のやうに心付いて見ると」
② 心にかなう。気に入る。
歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)六立「重盛公より、お心付(ココロヅ)かれし白拍子
分別才覚が生じる。考えがしっかりしてくる。
風姿花伝(1400‐02頃)一「此年の比よりは、はや、やうやう声も調子にかかり、能も心づく比なれば」
④ 正気づく。元気づく。〔日葡辞書(1603‐04)〕
[2] 〘他カ下二〙 ⇒こころづける(心付)

こころ‐づ・ける【心付】

〘他カ下一〙 こころづ・く 〘他カ下二〙
② 警告する。注意する。気を使う。気をつける。→心を付く④。
※歌舞伎・夢物語盧生容画(1886)序幕「いらぬ心配に心附(ココロヅ)けて上げましたのさ」
③ 気をきかせて金品を与える。
※歌舞伎・お染久松色読販(1813)中幕「半天の破れた代り、膏薬なりと張るがよいと、左四郎殿が金壱分、心付てやりましたが」

こころ‐づき【心付】

〘名〙
① (形動) 気に入ること。意にかなうこと。好ましいこと。また、そのようなさま。
※後撰(951‐953頃)恋二・六八八・詞書「人の家より物見に出づる車を見て、心つきにおぼえ侍りければ」
※今昔(1120頃か)二八「心付に見えむ人に見合はば、其に引移なむと深く思ふ事にて」
※田舎医師の子(1914)〈相馬泰三〉二「父としてこれ位の心附きは何の不思議でもない事であった」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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