…江戸元禄期に行われた俳諧・俳風の総称。“心付(こころづけ)”“景気付”を主体とする優美な俳風が基調をなした。それは,談林風の無心異体がゆきづまったとき,それを克服すべく俳壇全体が試行錯誤を繰り返した結果いたり着いた有心(うしん)の正風体で,その意味では,貞門風→談林風→元禄風は俳諧史のたどる必然的なコースだったといえよう。…
… 〈俗語を正す〉ことを課題とし,〈事は鄙俗に及ぶとも懐しくいひとるべし〉と説いた芭蕉も,そうした新世代の一人であった。芭蕉は〈懐しくいひとる〉表現法として,発句(ほつく)に余情を説き,余情の映発によって二句も連なる高次の〈心付(こころづけ)〉を案出した。これは,〈物付(ものづけ)〉から心付へと上達した新世代によって心付が一般となった元禄俳壇においても,高度の名人芸であった。…
…付合にはさまざまな類型と手法があり,連歌の時代,すでに15体(二条良基著《連理秘抄》),80体(伝宗祇著《連歌諸体秘伝抄》)等と細分化されていた。芭蕉らの俳諧時代においても,ことば,意味をそれぞれ付合の契機とする〈物付(ものづけ)〉〈心付(こころづけ)〉のほか,余意,余情による〈移り〉〈響き〉〈匂ひ〉〈位(くらい)〉〈俤(おもかげ)〉〈推量〉などの名目が見いだされる。芭蕉自身にも〈付句十七体〉の伝授があったという(《去来抄》)。…
…また1人で詠むのを〈独吟(どくぎん)〉,2人で詠むのを〈両吟〉,3人以上の場合はそれぞれその数をとって〈三吟〉〈四吟〉などといった。付け方としては,貞門では詞の縁によって付ける詞付(ことばづけ)(物付)が,談林では前句全体の意味に応じて付ける心付(こころづけ)(意味付)が愛好され,蕉風では前句の余情と付句の余情が匂い合うような,いわゆる匂付(においづけ)が理想とされた(付合(つけあい))。俳文は芭蕉の《幻住庵記》や《おくのほそ道》,横井也有の《鶉衣(うずらごろも)》などがその代表とされている。…
…そのため一貫した筋や主題の展開はありえない。付ける手法には,言葉の連想による物付(ものづけ),意味の展開による心付(こころづけ),余情の映発による匂付(においづけ)の3段階があり,後者ほど高級とされた。歌仙付合【白石 悌三】。…
…本来は祝いの儀式のことあるが,現在ではその際に贈る祝意を表した金品,さらには芸人,芸者,職人あるいは使用人,給仕などに与える心付けを指し,熨斗(のし)をつけ水引を掛けた祝儀袋(熨斗袋)に包んで贈る。今日でも,地方の農村などには祝儀不祝儀と称し,祝儀をとくに婚礼およびその祝いの金品の意に用いているところもある(不祝儀は葬式,香奠)が,一般には御祝儀にあずかると称して正規の報酬とは別にその労をねぎらい謝意を表して贈る心付けのことを指す場合が多い。…
※「心付け」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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