改訂新版 世界大百科事典 「悪魔学」の意味・わかりやすい解説
悪魔学 (あくまがく)
demonology
広義には悪霊や悪魔の特性すべてを研究する学問の総称で,それを意味する西欧語はギリシア語のdaimōnとlogosの合成にもとづく。狭義にはとりわけヨーロッパ近世初頭に,あたかも〈一大産業と化した〉(K. セリグマン)異端審問によって明るみに出された魔女や妖術使いが悪魔との契約によって獲得した魔法を究明する作業をいい,この場合はサタノロジーsatanologyという語も使われる。悪魔学者には《魔女の槌》を著したJ.シュプレンガーやH.クラーマーのような異端審問官やP.deランクルのような魔女狂気調査官が多く,さらにはJ.ボーダン,ジェームズ1世らも有名で,悪魔学そのものはいわば体制の学問である。ルターも,幻視を通じて観察した悪魔妄想を大衆教化的な悪魔論にまとめている。
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報