扁平苔癬
へんぺいたいせん
Lichen planus
(皮膚の病気)
四肢の関節部、陰部などに、紫紅色で平らに盛り上がった発疹ができる病気で、かゆみがあります。
原因はいまだはっきりとしていませんが、ある種のリンパ球が皮膚の細胞を攻撃するために起こる病気と考えられるようになってきました。薬剤が原因で生じた扁平苔癬のような発疹は、扁平苔癬型薬疹として扁平苔癬とは区別します。
過去にはカラーフィルムの現像液に触れて誘発されるものがよく知られていましたが、最近はC型肝炎やエイズウイルスなどの感染症に合併するケースが多くなっています。
扁平に隆起するエンドウマメ大までの紫紅色、多角形の発疹で、表面に鑞のような光沢がみられます。手背や四肢に多く現れます(図30)が、体にも生じます。消退後は色素沈着を残します。
尋常性乾癬の項で述べたように、引っかくなど外力が加わったところに同じような発疹ができるケブネル現象が現れます。口唇や口のなかの頬の粘膜に、網状の乳白色の発疹が出ることもあります。また、尋常性乾癬の場合のような爪の変形を起こすこともあります。
診断は特徴的な皮疹とその分布、経過から判断します。確定診断には、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行います。また、C型肝炎やエイズウイルスと関連することもあり、血液検査を行います。
薬疹として扁平苔癬になることもあるため、薬剤との関連を調べます。
ステロイド外用薬が多く用いられています。治りにくい場合には、ステロイド含有テープの使用や光線療法(PUVA療法)も行います。
口唇や口のなかの頬粘膜の発疹には、ビタミンA類似物質であるレチノイド(チガソン)の内服が効果があることがあります。かゆみには抗ヒスタミン薬を使用します。
皮膚科専門医のいる医療機関を受診し、診断と治療を受けたほうがよいでしょう。重症の場合には入院治療を行うこともあります。
[炎症性の角化症]の全項目、薬疹
金子 栄
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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扁平苔癬
へんぺいたいせん
四肢関節の屈側、体幹、外陰部などに、淡紅色ないし紫紅色のぶどう酒様の色調で、帽針頭大からエンドウ大までの多角形状扁平隆起性の皮疹(ひしん)が、散在性ないし集簇(しゅうぞく)(密集)性に存在する皮膚疾患。ときに帯状に配列したり、融合した局面を形成することもある。通常はかゆみを伴う。20歳前後に好発し、女性にやや多い。また粘膜、とくに口腔(こうくう)内にも出現し、その場合は浸潤性の白斑(はくはん)として認められる。病因は諸説あって不定であるが、最近は薬剤、たとえば降圧剤、脳代謝促進剤、カラーフィルム現像液などによるものが多い。臨床的には、線状扁平苔癬、いぼ状扁平苔癬、鈍性扁平苔癬、水疱(すいほう)性扁平苔癬、急性扁平苔癬、色素性扁平苔癬などの特殊型を区別する場合もある。組織学的に特徴のある所見を有し、確定診断は皮膚生検による。治療は、ステロイド系外用剤によく反応することが多い。治癒後に色素沈着または色素脱失を残すこともある。
[大路昌孝]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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