打立(読み)うちたてる

精選版 日本国語大辞典 「打立」の意味・読み・例文・類語

うち‐た・てる【打立】

〘他タ下一〙 うちた・つ 〘他タ下二〙
① (「うち」は接頭語) 力強く立てる。つきさす。うったてる。
古事記(712)上「大樹を切り伏せ、茹矢(ひめや)を其の木に打立(うちたて)て、其の中に入らしむ」
② (「うち」は接頭語) 声をあげる。大きく響かせる。
※夜の寝覚(1045‐68頃)二「木ずゑにほととぎすの〈略〉諸声にうちたてつべし」
③ 盛んに打つ。打ちまくる。
(イ) (楽器を)盛んに打ってはやす。
梁塵秘抄(1179頃)二「うちたつる鉦のつづみのはつこゑは」
(ロ) (砧(きぬた)で)衣を盛んに打つ。
※如水日記抄‐元祿二年(1689)興行連句「思ひ立(たつ)旅の衣をうちたてて〈如行〉 水さはさはと舟の行跡〈伴柳〉」
(ハ) (武器で相手を)盛んに打ちまくる。また、銃砲を盛んに撃つ。
浄瑠璃出世景清(1685)二「あまさず打たつる」
④ うどん、そばなどを作り上げる。
※俳諧・桃の白実(1788)「ごみかき流す風呂の水遣〈岱水〉 切麦を早朝影に打立て〈凉葉〉」
⑤ (「うち」は接頭語) 作りあげる。建てる。定める。確立する。
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石停留所「予じめ人を陥れやうとする成心の上に打ち立てられた職業である」

うっ‐た・つ【打立】

(「うちたつ(打立)」の変化した語)
[1] 〘自タ四〙
平家(13C前)五「やがて廿日、東国へこそうたたれけれ」
② ある事を始める。着手する。
※古活字二巻本日本書紀抄(16C前)一「経は量度也。営は謀為也。うったって物をする方が営ぞ」
[2] 〘他タ下二〙
※平家(13C前)七「白旗三十ながれ先だてて、黒坂のうへにぞうたてたる」
② ある事を始める。着手する。
※玉塵抄(1563)二六「うったってなにごとをしるさうと思てふでをそめてうったてらるると」

うち‐た・つ【打立】

[1] 〘自タ四〙
① (「うち」は接頭語) 立っている。いきおいよく立ち上がる。うったつ。
今昔(1120頃か)二九蔵人は其の小(ちひさき)家の前に打立(うちたち)て」
② (「うち」は接頭語) 出立する。出発する。いでたつ。うったつ。
※和泉式部続集(11C中)上「旅人の駒ひきなめてうちたてばやたのひろ野もせばくぞ有ける」
③ 夢中になって打つ。
大鏡(12C前)四「この御ばくやうは、うちたたせ給ひぬれば、〈略〉よなか、あかつきまであそばす」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒うちたてる(打立)

うち‐たて【打立】

〘名〙
① 戸に打って錠をかける、頭が環状になった金物
延喜式(927)四「鏁打立二枚 頭径一寸三分」
② 鼓などの打ち初め。
※習道書(1430)「うちたては乱声(らんじゃう)なるべし」
③ 何かを打ってすぐの状態。また、そのもの。
落語・お蕎麦の殿様(1894)〈禽語楼小さん〉「凡て蕎麦は打立てを喰はんければ不可ん」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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