日本大百科全書(ニッポニカ) 「抑止の原則」の意味・わかりやすい解説
抑止の原則
よくしのげんそく
公海の国際的漁業規制において、特定の魚種について漁獲実績を有し保存措置をとっている国以外の国は、漁業の権利が抑止されるという考え方をいう。1952年北太平洋公海漁業条約の締結交渉において、アメリカは自国の漁業実績を根拠に、オヒョウ、ニシン、サケについて自国沿岸公海海域への日本漁船の進出を阻み、日本の同意によりその旨が条約に織り込まれた。この条約は、これらの魚について、日本、場合によっては日本とカナダが漁業を抑止する区域を定めた。アメリカは、これに基づき、さらにこの考え方を「抑止の原則」として、一般制度化しようとして、58年第一次海洋法会議において、カナダとともに、この考え方に基づく提案を行ったが、会議ではその提案は否決され、この考え方は、その後も国際法の確立した原則とはなっていない。
[水上千之]