硬骨魚綱カレイ目カレイ科に属する海水魚。北太平洋に産し、アジア側では日本の東北地方以北、北アメリカ側ではカリフォルニア州以北の北太平洋、オホーツク海に分布する。オオヒラメともよばれてヒラメの代用にされたりするが、体の右側に目があるカレイの仲間である。
[尼岡邦夫]
体は長卵円形で厚みがある。口は比較的大きく、上あごの後端は下眼の中央下に達する。上あごに2列と下あごに1列の鋭い犬歯状の歯がある。鱗(うろこ)は小さくて離れにくく、体の両側で円鱗(えんりん)。側線の上に150~200枚ほど並ぶ。側線は胸びれの上方で大きく湾曲する。尾柄(びへい)は細長い。尾びれは大きく、後縁は幼魚では上下にまっすぐであるが、成魚では湾入形。体は有眼側では暗褐色で、乳白色の小斑点(はんてん)と暗色の斑紋が散在する。幼魚では体の後ろ3分の1の背縁と腹縁近くに顕著な白色斑がある。無眼側はいちように白色である。
[尼岡邦夫]
北海道東部から択捉島(えとろふとう)周辺では10月下旬から2月上旬にかけて、水深200~500メートルの大陸棚縁辺で産卵する。120センチメートルぐらいの雌では1年に50万粒、200センチメートルでは200~300万粒の卵を産む。卵はきわめて大きく2.9~3.8ミリメートルで水深90~200メートルを漂う。孵化(ふか)直後の仔魚(しぎょ)は全長8~15ミリメートルで、水深200メートルより深いところで浮遊生活をする。仔魚は発生が進むにつれて表層に浮上し、3~5か月の間そこで過ごす。全長16ミリメートルぐらいで左眼が移動を開始し、25ミリメートルほどで体の右側に定着する。産卵から6~7か月を経て、35~40ミリメートルになって海底にすむようになり、成長するにつれて深所へ移住する。1年で9センチメートル、3年で38センチメートル、5年で57センチメートル、10年で91センチメートル、15年で112~125センチメートルぐらいになる。成長速度は幼魚の数や環境要因によって年々異なる。寿命が長く、雄は25年(全長1.4メートル、体重180キログラム)、雌は35年(全長2.6メートル、体重270キログラム)も生きたという記録がある。成熟年齢は雌では12年で、雄の7~8年より遅い。成熟した魚は産卵のために長距離を回遊することが知られており、3700キロメートルの移動記録がある。稚魚では小形甲殻類を食べているが、成魚になるときわめて貪食(どんしょく)で、スケトウダラ、カジカ類などの底魚類、カニ類、貝類、イカ類などを食べ、ときには海鳥をも飲み込むことがある。
[尼岡邦夫]
漁場は北アメリカ側では大きいが、漁船や漁具などの進歩によって資源が著しく減少した。1932年以降、国際太平洋オヒョウ委員会の厳密な管理下に置かれ、北アメリカ海域の資源が徐々に回復しつつある。日本では、オヒョウ漁業は明治初期にオホーツク海の網走(あばしり)で始まり、明治末期には活発であった。しかし北海道近海の漁場はきわめて小さく、しかも乱獲によって大正末期から昭和にかけて漁獲量は半減した。現在は底引網でスケトウダラなどの混獲物として漁獲されているにすぎない。欧米ではオヒョウ釣りはスポーツ・フィッシングとして人気がある。
肉は白身で脂肪が少ない。切り身はフライやムニエルに、新鮮なものは刺身、すし種にすると美味い。アメリカなどからの冷凍したものが輸入されている。欧米ではステーキにする。
大西洋産のオヒョウAtlantic halibut/H. hippoglossusは、太平洋産のものによく似ているが、外見からは有眼側の鱗の形によって区別できる。細長い卵形が太平洋産で、幅広い卵形が大西洋産である。
[尼岡邦夫]
オヒョウはほかの種類のカレイ、ヒラメに比べ大味であるが、卵巣は格別に味がいい。肉は刺身、煮つけなどにして用いる。「おぼろ」は肉を細かくし、みりんに塩を適宜加えた汁で半煮し、すり鉢ですり、さらにその汁でかき混ぜながら煮てつくる。
[多田鉄之助]
ニレ科(APG分類:ニレ科)の落葉高木。樹皮は繊維と粘液に富む。葉は互生し、広倒卵形または倒卵形で先は通例浅く3~7裂し、先端は尾状にとがり、基部は左右が不対称、長さ9~18センチメートル、幅6~12センチメートル。花は4月ごろ、葉が開く前に開き、花被(かひ)は鐘形、帯赤色ないし緑黄色で先端が5~6裂する。雄しべは5~6本、柱頭は2裂する。翼果は卵状円形ないし楕円(だえん)状円形で先は浅く2裂する。カムチャツカ、樺太(からふと)(サハリン)、ウスリー地方から中国北部、北海道から九州に分布し、北海道、本州の山地の谷筋に多くみられ、樹皮の繊維はアツシ(厚司)の材料とする。材は挽物(ひきもの)細工、薪炭材として用いる。名はアイヌ名オピウ(樹皮)に由来するという。
[伊藤浩司 2019年11月20日]
北地の渓流沿いに生えるニレ科ニレ属の落葉高木。しばしば葉の先端が特徴的に3~5裂する。高さ25mに達し,樹皮は淡灰褐色で長く剝離する。新枝の先端が枯れ落ちる。葉は2列状に互生し,左右にややゆがんだ倒卵形で,長さ7~15cm,しばしば先端が短尾状に3~5浅裂し縁に鋭い鋸歯を生じ,両面に短い剛毛があってざらつく。4~5月,葉より早く前年の枝に紅色の花が群がって咲き,各花には5~6浅裂した鐘形の萼の内側に5~6本のおしべと花柱の2裂しためしべがある。5~6月,長さ2cmほどの楕円形の翼果を結び,翼の中央に種子がある。南千島から九州中部までと,東シベリア,カムチャツカ,サハリン,中国東北,朝鮮,中国北部の温帯,亜寒帯に分布する。群生しないが,北海道にはやや多い。材は黄褐色系の堅硬な環孔材で,器具材とくに曲木(まげき)や薪炭材などに供する。樹皮の繊維が非常に強く,アイヌは内皮を温泉や沼に漬けたのち水にさらしてぬめりを取り,糸に紡いでアツシを織った。アイヌ語ではこの木の樹皮の繊維をアツ(アハ)というがオピウという名称もあり,和名はそれからきているともいわれる。また地方によっては,縄,皮箕,鉈(なた)の鞘などを作るのに用いる。
執筆者:濱谷 稔夫
カレイ目カレイ科の海産魚で,北太平洋に広く分布し,日本では,東北・北海道沿岸の小石の多い100m以深の海底に生息する。カレイ類中最大の魚で,雄では全長1.4m,体重180kg,雌では全長2.6m,体重270kgにもなる。体は他のカレイ類より細長く,口が大きく尾びれの後縁が湾入している。体色は淡褐色で乳白色点と暗黒色の不定形斑紋が散在する。冬季に300~400mの海底で産卵する。卵径は3~4mmで他のカレイ類の1mm前後と比べてきわめて大きく,数も130万~350万粒と多い。2週間で孵化(ふか)した仔魚(しぎよ)は5ヵ月で着底し,1歳で7cm,10歳で1mを超える。寿命は25年以上である。貪食(どんしよく)で活発であり,おもにスケトウダラ,カレイ類などを食べる。一本釣り,底刺網,はえなわ,トロールで漁獲されるが量は多くない。肉は白くて脂肪が少なく美味で高価である。欧米ではフライ,日本では刺身にすることが多い。大西洋産のhalibutとは,体高が低いこと,うろこの形が違うことで区別される。
執筆者:松下 克己
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