改訂新版 世界大百科事典 「拡散過程」の意味・わかりやすい解説
拡散過程 (かくさんかてい)
diffusion process
見本関数が連続なマルコフ過程を拡散過程という。物理現象の拡散がモデルとなっていることからこのような名称で呼ばれる。いま容器に水が満たしてあり,色のついたコロイド粒子が少量溶けていて濃度は一様でないとする。これを放置しておくと粒子は不規則に動きながらも,傾向としては濃度の高いほうから低いほうへ向かって広がり,ついには水全体に一様に分布するに至る。ブラウン運動はこのような現象をモデルとする拡散過程のもっとも重要な例である。一般に,ある区間の中で行動している一次元拡散過程が時間的に一様,すなわち推移確率が時間の差だけに依存するとき,その区間から外に出るまでの行動は,ブラウン運動から状態空間であるその区間の位相的変換と時間変更および粒子を消滅させる方法とで構成される。時間間隔tの間にxからyに移る推移確率密度p(t,x,y)を用いていえば,それは偏微分方程式,を満たす。ここにaは拡散を,bが空間内の移動傾向を,c(<0)が消滅の程度を表している。
執筆者:飛田 武幸
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