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拡散 かくさんdiffusion

翻訳|diffusion

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

拡散
かくさん
diffusion

(1) 水の入った試験管の底へ毛管を通じて静かに少量の赤インキを入れると,長時間ののちに全体が一様な薄赤い水となる。このように異種の物質の混合系が不均一な濃度分布をもつとき,一様な分布に近づこうとする現象を拡散または分子拡散という。拡散は気体,液体だけでなく,固体の中でも起る。浸透は隔膜を通じて起る拡散である。固体中での拡散は不純物半導体の製造に応用されている。温度分布が不均一ならば熱拡散が起る。これらは物質を構成する微粒子の熱運動によるもので,分子運動論によって輸送現象として解明されている。これに対し,風によって煙が広がるのは,流体の流れが乱れて生じた渦の攪拌作用であって渦拡散と呼ばれ,流速が大きくなるほど著しい。大気中の拡散は大気汚染に関連して研究されているが,大気の成層状況や温度勾配の影響など未解決の点が多い。 (2) 中性子が媒質中で散乱を受け,中性子密度の高いところから低いところへ動いていく現象を中性子の拡散という。

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デジタル大辞泉の解説

かく‐さん〔クワク‐〕【拡散】

[名](スル)
広がり、散らばること。「核の拡散を防止する」
混合流体が高い濃度から低い濃度の所へと移動して、一様な濃度になる現象。分子熱運動によって起こる。
ツイッターフェースブックなどのソーシャルメディアにおいて、投稿されたメッセージを多くの人に引用してもらうこと。メッセージの引用は個々人によって行われるが、しばしばねずみ算式に引用数が増え、多くの人の元にメッセージが届くことがある。「以下のメッセージを拡散希望」

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百科事典マイペディアの解説

拡散【かくさん】

物質の濃度が場所によって異なるとき,これを放置すると物質の移動が起こって全領域にわたって濃度が均一になる現象。静止した水の中にインキを数滴落とすとインキは次第に広がっていき,ついには水全体が一様に青くなるのはこの一例。
→関連項目輸送現象

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岩石学辞典の解説

拡散

岩石を構成する鉱物結晶の内部では,各原子は温度などの外的条件によって振動しており,常に微小な距離を移動する確率をもっている.外部から化学成分の濃度勾配や応力歪などの力が加わり,さらに温度の上昇や格子欠陥などの要因が加わると原子は移動しやすくなる.一様な温度の静止混合流体中の濃度が均一でないときには,濃度を一様分布に近づける変化が起こる.また温度の分布が一様でなければ熱拡散(thermal diffusion)が起こる.一般に物質が移動する場合の駆動力は,各場所における成分の化学ポテンシャルの勾配で,この結果物質が移動する現象が拡散(diffusion)である.拡散現象は気体,液体または固体の媒質の中で,原子,イオン,分子の群が移動することで,一つの物質の他の物質による透過作用で,気体を通じた気体の移動,液体を通じた液体の移動,固体を通じた固体の移動などが起こる.拡散現象には成分濃度の変化が時間によらない定常状態の場合と,濃度が時間と共に変化する非定常状態の場合があり,岩石学ではどちらの例も認められる.定常状態の拡散はフィック(Fick)の第一法則で表され,一次元の場合には,
 J=-D・∂C/∂x
として表される.ここでD拡散係数(diffusion constant)である.非定常状態の場合は濃度の時間的変化が勾配の場所による変化に比例してフィックの第二法則で表される.一次元の場合は
 ∂C/∂t=-D(∂2C/∂x2
として表される.この式で拡散係数が濃度に関係しない場合には次のように表される.
 DD0・exp{─Q/(RT)}
ここで,R:気体定数,T:絶対温度,Q:活性化エネルギーである.定数D0は温度に依存しない.拡散速度は温度に指数関数的に依存し,温度が高くなると大きくなる.低温の場合と高温の場合の拡散速度の差は著しい.岩石が形成される際には物質が移動し拡散現象に影響を受けるので,岩石学では形成の際の温度が非常に関係し,その結果が岩石の組成や構造に表れていると考えられる[鈴木 : 1994].拡散は異種の粒子の混合系が熱平衡状態に近づく際におこる濃度分布の変化の過程である.岩石では,媒体が移動せずにその中の成分が移動する現象には,媒体が固体の場合と流体の場合がある.岩石が流体を含む場合には,流体内部の成分の移動に比べて流体自体の移動速度が相対的に速いことが予想される場合は,流体内部での成分の移動は無視できる.しかし媒体が固体の場合には,成分が固体媒体の内部を移動するため拡散現象が主要な役割を果たすことになる[鈴木 : 1994,Liesegang : 1913, Ostrand & Dewey : 1915].
岩石のような多結晶の集合体の中で拡散が行われる場合には,拡散の行われる結晶の場所によって成分の移動結果はかなり異なる.一般に結晶内部では結晶格子を置換しながら原子が移動する格子拡散(lattice diffusion)が行われる.格子拡散でも結晶中に欠陥が存在すると速くなる.一方結晶表面では表面エネルギーのために物質は移動しやすく表面拡散(surface diffusion)が行われる.また結晶粒の間の界面では表面とは異なる粒界拡散(grain boundary diffusion)が行われる.
一般に表面拡散の活性化エネルギーは粒界拡散や格子拡散に比べて小さく,格子拡散の活性化エネルギーが最も大きいのが普通である.岩石の中では空隙はあるものの自由な表面はあまり存在しないので表面拡散の寄与はあまり大きくないであろう.しかし地下の空間には一般に多少の流体が存在するので,流体を媒体とした物質の移動との比較を考えなければならない.
粒界拡散は多結晶粒界を移動する拡散で,単結晶に比して多結晶粒界の原子配列の乱れが著しいために起こる現象である.結晶格子の乱れの二次元的広がりが粒界であり,多結晶の粒界拡散は一般に結晶内部の格子拡散よりも著しい.多結晶体では拡散は粒界に沿って速やかに進行し,次いで結晶格子内への内部拡散が起こる.岩石のような鉱物粒の集合体では,粒界拡散の寄与が固体拡散の中で最も大きいものと考えられる[鈴木 : 1994].

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栄養・生化学辞典の解説

拡散

 濃度分布の不均一な系で,非平衡状態から平衡状態すなわち均一な濃度分布になるように溶質が移動すること.熱についてもいう場合がある.

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世界大百科事典 第2版の解説

かくさん【拡散 diffusion】

水の中にインキを一滴そっと入れると,いろいろ模様を描きながら沈んでいくが,その際,色のついた部分がゆっくり周囲に広がって薄くなっていくのが見られる。濃い部分が作る模様はインキと水のわずかな比重の差による流れが作り出すものであるが,ゆっくり周囲に広がる現象は拡散である。煙突やたき火の煙が風のない日でも,もくもく上がったりたなびいたりするのは,対流などによるためで,もしまったく静止した空気の中に同じ温度の煙をそっと置くことができたら,煙は非常にゆっくり周囲に散っていく。

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大辞林 第三版の解説

かくさん【拡散】

( 名 ) スル
ひろがりちること。 「放射性物質が大気中に-する」
〘物〙 〔diffusion〕 濃度分布の異なる混合物が平衡状態に近づくにつれてその濃度分布が一様になってゆく現象。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

拡散
かくさん
diffusion

ある濃度の物質が空間的に広がって、移動可能な範囲の空間の中で均一の濃度に近づく現象をいう。広大な大気や海水の組成が、どこをとってもほぼ一定のものであるのは、拡散によって各成分が一様に混合した結果である。
 物質のこのような運動は分子のブラウン運動に起因する。したがって、温度が上昇すると分子運動の速度が増加するから、拡散は速くなる(熱拡散という)。また分子の運動する速度は分子量の平方根に反比例する(グレアムの法則)から、拡散の速度もやはり分子量の平方根に反比例することとなる。ウランなどの同位体分離に熱拡散法が応用されたのも、この原理に基づいたものである。気体の拡散を妨げる因子は分子間の衝突であるから、分子の平均自由行程を大きくすると(つまり圧力、密度を下げるほど)拡散は容易となる。拡散は気体や液体のような流体のみの現象ではなく、固体においてもおこる。しかし検出するには長時間を必要とする。金と鉛の板を重ねて放置すると、5年間で1センチメートルも拡散がおこるといわれる。
 以上は、異種の物質を混合した場合だけでなく、同一物質中でも拡散はおこる。これは自己拡散とよばれるが、放射性同位体の利用によって初めて検出、研究が可能となった。現在ではこのほかに、核磁気共鳴スペクトル法も利用できる。
 拡散の解析にはフィックの法則(第一、第二法則)が基礎的なものであり、濃度勾配(こうばい)の時間依存性によってそれぞれ使い分けることとなる。[山崎 昶]

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世界大百科事典内の拡散の言及

【伝播】より

…文化人類学の用語。二つの文化が直接あるいは間接に接触した場合,一方の文化から他方の文化へ,文化要素の移行・受容が行われる現象をさす。この意味において伝播は人類に普遍的であり,また人類の歴史のすべての段階に存在し,これによって,最初局地的に知られているだけだった創造的努力の成果が広まり,また再発明の手間を省くことによって文化の発展を促進してきた。既存のある文化体系に新しい文化要素がつけ加わるのには,その文化体系内部での発明と,他文化からの伝播とがあるが,ともに同様な過程をたどる。…

※「拡散」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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