六訂版 家庭医学大全科 「放射線肺炎」の解説
放射線肺炎
ほうしゃせんはいえん
Radiation pneumonitis
(呼吸器の病気)
どんな病気か
肺がん、食道がん、乳がん、胸壁に発生したがんなどの治療のため、やむなく正常な肺に放射線を照射することが避けられないことがあります。放射線肺炎は、この治療として行われる放射線照射で肺に
原因は何か
直接肺に当たる放射線量が約40Gy(グレイ)以上になると現れる頻度がさらに高率になります。
過去に照射歴がある場合、同一部位に放射線照射を行うと本症の発症率はさらに高くなります。また、がんに対する化学療法薬(ブレオマイシン、マイトマイシン、メトトレキサート、ブスルファン、ビンクリスチン、シクロホスファミドなど多数あり)の併用により、放射線肺炎を発症する率が高くなります。とくに、放射線照射と同時に服用しているとより高率になります。
症状の現れ方
放射線照射後、すぐ現れず、1~3カ月後に現れることが多くみられます。早期では無症状ですが、発熱、
検査と診断
放射線照射後に現れた症状、身体所見、血液中の炎症所見、また
区別すべき疾患としては、がんの肺内への転移、感染症などがあります。照射した部位に現れる場合は比較的容易ですが、照射部位以外に病変が出る場合には、診断は困難になります。
治療の方法
軽症であれば、自然に軽快することが期待できます。重症になれば、ステロイド薬(メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンなど)が投与されます。しかし、これらの治療の効果に疑問を投じる意見もあります。そのほかに、アザチオプリンなど免疫抑制薬の投与を行う場合もあります。プレドニゾロンで治療した場合は、プレドニゾロンをゆっくり減量することが多く、その減量中に再び放射線肺炎が悪くなることがあるので注意が必要です。
進行した放射線肺炎では、呼吸不全に対する治療が必要になります。続いて発症する感染症や、放射線照射を行うことになった原因疾患のがんに対する治療も必要です。
予後
限局性(主に照射部位のみにみられるような場合)や軽症であれば、予後は比較的良好ですが、範囲が広い場合や重症の場合では、致死的になる場合も少なくありません。
病気に気づいたらどうする
放射線治療を行い、照射が肺にも当たるような場合で、治療から1~3カ月後でも熱、咳、呼吸困難などが現れた場合には本症が疑われるので、放射線照射を行っている、もしくは行った施設を受診します。呼吸器科や放射線治療をよく行う腫瘍疾患を扱う施設や科もよいと考えられます。
放射線肺炎にかぎらず、間質性肺炎でも一般的にいえることですが、感染症に注意する必要があります。かぜなどに気をつけることも必要で、インフルエンザウイルスワクチンの接種も一案です。
関連項目
中島 正光
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報