呼吸(読み)コキュウ(英語表記)respiration

翻訳|respiration

デジタル大辞泉 「呼吸」の意味・読み・例文・類語

こ‐きゅう〔‐キフ〕【呼吸】

[名](スル)
息を吸ったり吐いたりすること。「呼吸を整える」「荒々しく呼吸する」
共に動作をするときの互いの調子。息。「二人の呼吸が合う」「阿吽あうん呼吸
物事をうまく行う微妙な調子。こつ、また、ころあい。「呼吸を覚える」「呼吸をのみこむ」「呼吸をはかる」
短い時間。。「ひと呼吸おいて再び話しはじめる」
生物が生命維持に必要なエネルギーを得るために、酸素を取り入れて養分を分解し、その際に生じた二酸化炭素を排出する現象。体外とガス交換を行う外呼吸と、それにより運ばれた酸素による細胞内での内呼吸(細胞呼吸)とがあり、一般には外呼吸をさす。また、酸素を必要としない無気呼吸もある。
[類語](1いき気息きそくづか息差し息吹いぶき息の根寝息/(2)(3気合い加減按排あんばいこつ要領タイミング

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精選版 日本国語大辞典 「呼吸」の意味・読み・例文・類語

こ‐きゅう‥キフ【呼吸】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 息を吐いたり、吸ったりすること。息の出し入れ。生物が体外から酸素を吸入して体内の物質を酸化し、その結果生じた炭酸ガスを排出する作用、およびその過程。動物では肺や鰓(えら)などの呼吸器でのガス交換(外呼吸)と、組織内で細胞と血液の間で行なわれるガス交換(内呼吸)の二つに分けられる。植物では葉の気孔などを通して行なわれる。呼吸作用。
    1. [初出の実例]「莫虹帯霓裳。洟唾百川。呼吸万里」(出典:本朝文粋(1060頃)三・神仙〈春澄善縄〉)
    2. [その他の文献]〔荘子‐刻意〕
  3. ( ━する ) 生きること。環境になじみながら生活すること。
    1. [初出の実例]「段々東京の水に染みて、ヲイソレの浮気を呼吸(コキフ)するに至りし庇(かげ)にや」(出典:諷誡京わらんべ(1886)〈坪内逍遙〉一)
  4. ( ━する ) いききすること。交通すること。
    1. [初出の実例]「内地は『ホッソン』河より運河を以て『ブッハロ』と呼吸し、五洲の漕運を吐納す」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)
  5. 心持。気持。
    1. [初出の実例]「我こきうの小きゆへに、人の心も知らず」(出典:滑稽本・東唐細見噺(1783)四)
  6. 物事を巧みに行なう微妙な調子。こつ。要領。
    1. [初出の実例]「旦那と若紳士を二階の一間へ伴ふまでの呼吸(コキフ)到底吾等の口では叙がたし」(出典:春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉壱円紙幣の履歴ばなし)
  7. 息を吸ってから吐くまでの時間。転じて、きわめて短い時間。瞬間。〔晉書‐郗鑑伝〕
  8. 規則的な反復動作をいう。
    1. [初出の実例]「潮の呼吸、雪を溌し霜を刷す」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)四)
  9. 相手と動作を共にするときのお互いの調子。いき。「阿吽(あうん)の呼吸」

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改訂新版 世界大百科事典 「呼吸」の意味・わかりやすい解説

呼吸 (こきゅう)
respiration

いき(息)もの,英語のアニマル(ラテン語のanima=息,生命に由来)などの語からもわかるとおり,呼吸と生命は古来密接に結びつけられてきた。空気中のプネウマpneuma(精気)が体内に取り込まれて生体を活気づけるという考えはギリシアにひろく見られ,アリストテレスは3種の精気を区別した。2世紀のローマのガレノスは自然精気が消化,栄養,排出などのいわゆる植物性機能をになうと考えた。こうして呼吸を具体的な生命現象と関連させる努力はなされたが,思弁にとどまった。

 W.ハーベーが血液循環を確証(1628)して以来,研究は新しい段階に入り,血流にのって全身に分配される空気の重要成分は何かが問題になった。16世紀の錬金術的化学者・医者パラケルススは,〈硫黄精〉と〈硝石精〉によって燃焼は起こり,かつ呼吸と燃焼は同じ現象であると考えていた。この解釈は,17世紀に呼吸について実験したR.ボイル,メーヨーJohn Mayow(1640-79)などに影響を与えた。18世紀にはフロギストン(燃素)説の誤りを経て,ラボアジエが燃焼での酸素の役割を確定する。呼吸も体内での酸化として位置づけられたが,熱をだす燃焼と同じことが体内でも起こると考えられたので,J.L.ラグランジュは,肺のみで燃焼が起これば肺は高熱になりすぎると論じた。ここからかえって,酸素は全身末梢組織に分配されるはずだとの正しい見通しが生まれた。

 20世紀初めのエネルギー代謝の研究は,酸素を用いない解糖,発酵を中心にしていたが,有機酸から水素を奪う脱水素酵素の作用も,1920年代から明らかになる。呼吸とは酸素が直接に基質を〈燃やす〉のではなく,基質から奪われた水素が酸素と出会うことであるとの理解が,こうして整ってきた。細胞内で水素を授受する機構については,セント・ジェルジなどもモデルを提出したが,H.A.クレブスのクエン酸回路(1937)が正しい回答をあたえた。第2次大戦後の研究の発展で,呼吸の反応成分はすべてミトコンドリアに局在することがわかった。こうして,プネウマ説にはじまり,肺での空気の出入りを意味していた〈呼吸〉は,現代生物学の用語では,細胞での基質からの水素原子の取出しと,その水素を酸素と化合させる際のエネルギーを用いてのATP生成(酸化的リン酸化)を意味するに至っている。
執筆者:

以上のような歴史的経過から,呼吸は古くは動物の呼吸運動をさす言葉であったものが,動物の外界とのガス交換(これを外呼吸という),さらに体液と細胞のガス交換(これを内呼吸という)をも含める言葉となった。そして,現在,生化学的には呼吸は次のように定義されている。(1)狭義には生体が分子状酸素O2を最終電子受容体として有機化合物を二酸化炭素CO2,水H2O,アンモニアNH3などの無機化合物にまで酸化的に分解し,生体に利用可能な形で(ATPとして)エネルギーを蓄えることを呼吸という。(2)この定義を拡張し,無酸素条件下で分子状酸素の代りに硝酸塩,硫酸塩を最終電子受容体として上記と同様の過程が行われる場合をも含める。これはある種の嫌気性細菌が行う呼吸で,それぞれ硝酸呼吸,硫酸呼吸という。(3)さらに広義には,アルコール発酵や解糖のように,外から最終電子受容体の供給がなくても,基質から生じた化合物の間で酸化還元が行われ,この過程でATPが生成される場合をも含む。この場合を無酸素呼吸,無気呼吸,嫌気呼吸,または分子間呼吸といい,これに対し(1)の場合を酸素呼吸または好気呼吸という。

 呼吸の強さを知るには,酸素消費量または二酸化炭素放出量を測定すればよい。前者の測定には酸素電極法,検圧法などが用いられ,後者の測定には赤外線ガス分析法,電気伝導度測定法などが用いられている。二酸化炭素放出量(モル)と酸素消費量(モル)の比,[CO2]/[O2]を呼吸商respiratory quotient(略称RQ)という。実際には容積比として求めることが多い。グルコース(糖類)が完全酸化するときはRQ=1(C6H12O6+6O2=6CO2+6H2O)。脂肪やタンパク質のように分子中の酸素原子の割合が糖より少ない物質ではRQ<1(ステアリン酸C18H36O2+26O2=18CO2+18H2O,RQ=0.69)。逆にリンゴ酸のような有機酸の場合はRQ>1(C4H6O5+3O2=4CO2+3H2O,RQ=1.33)。ただし,基質が同じでも呼吸経路によりRQは異なる。たとえば,アルコール発酵のような二酸化炭素放出を伴う無気呼吸が併行して行われるとRQは上昇する。

 グルコース酸化の最終的な反応式だけを見ると,生体外での燃焼も呼吸もまったく同じであるが,両者は次の点で異なる。(1)生体外での燃焼を引き起こすには発火点まで熱しなければならないが,生体内での酸化は酵素により低い温度のもとで段階的に進行する。(2)生体外での燃焼時に遊離されるエネルギーは,ほとんどすべて熱の形で放出されてしまうが,呼吸では遊離されるエネルギーは高い効率でATPに蓄えられる。

 呼吸の反応系は,多くの場合次の二つの過程に大別される。(1)基質分子が脱水素され(これと共役して水素受容体が還元され),基質分子の炭素鎖が切られる。(2)還元された水素受容体から最終電子受容体へ電子が渡される。呼吸の代謝経路の典型的なものは,解糖系(図1)で生じたピルビン酸が,クエン酸回路(図2)で完全酸化を受ける場合である。解糖系の諸酵素は細胞質の可溶性画分にあると考えられているが,細胞質中の微細構造に結合していると主張する研究者もある。真核生物では,クエン酸回路,β酸化,および電子伝達系の諸酵素はミトコンドリアに含まれている。赤血球や肝臓および多くの植物の組織では,グルコースの一部は解糖系とは異なるペントースリン酸回路(細胞質の可溶性画分にある)によって完全酸化を受ける(図3)。解糖系で働く補酵素がNADであるのに対し,この回路の場合はNADPであることと,回路上に五炭糖が出現することが特徴である。脂肪酸が分解されるときは,脱水素されたのちカルボキシル末端から炭素原子C2個きざみで炭素鎖が切られアセチルCoAを生じる(β酸化。図4)。これがクエン酸回路へ入り完全酸化を受ける場合と,グリオキシル酸回路マイクロボディにある。図5)へ入りもう一度脱水素されたのちコハク酸となる場合がある。緑色組織で光のもとで行われるグリコール酸の酸化的分解は光呼吸photorespirationと呼ばれるが,ATP生成がないから本来の呼吸とは生理学的な意味が異なる。

 呼吸過程の最後の部分で,NADHやコハク酸から電子を分子状酸素に渡す経路を電子伝達系または呼吸鎖という(図6)。この系は酸化還元電位の異なる多数の成分から構成されており,電子は酸化還元電位の低いものから高いものへと流れてゆく。電子伝達にはフラビン,ユビキノン,ヘムのほかに非ヘム鉄,銅イオンも関与している。この系の成分は4種の複合体の形でミトコンドリア内膜に存在する(図7)。この電子伝達と共役して行われるATP生成を酸化的リン酸化反応という(図8)。ADPとオルトリン酸の濃度が下がると,呼吸鎖の反応速度(電子の流れの速さ)が低下する現象を呼吸調節respiratory controlといい,基質と酸素の不必要な消費を避け,ATPの消費に見合った供給を行うしくみと考えられている。細菌においては細胞膜にミトコンドリアのものと類似の呼吸鎖が存在する。

 グルコース1molが解糖とクエン酸回路を経て酸化されるとき生成するATPは,前核生物では38mol,真核生物では36molである(表1)。グルコース1molが完全酸化されるときの自由エネルギーの生成は686kcalである。ADPからATPを生成するのに必要な自由エネルギーを7.3kcalとすれば,ATPが38mol生じる場合を考えると,呼吸によって277.4kcal,すなわち約40%の効率で,ATPの中にエネルギーが蓄えられたことになる。アルコール発酵ではグルコース1mol当りATPが2molしか生成しない。大気中に分子状酸素が大量に存在するようになったのは光合成生物の出現以後であるから,酸素を用いる効率のよい呼吸系は,無気呼吸を基礎として代謝系の進化の結果,あとからでき上がったものと考えられる。

 呼吸の第1の生理学的意義はATPの生成であるが,細胞構成成分の前駆体(表2)およびこれら成分の合成に必要な還元力(NADPH)を供給するというもう一つの重要な役割をもっている。
執筆者:

18世紀の末になって,呼吸の実体は,動物が外界からO2を吸収し,外界にCO2を排出することであることがわかった。さらに呼吸器官から取り込まれたO2は,血液によって体中の細胞にまで運ばれ,CO2は逆に細胞から放出されて,血液によって呼吸器官に運ばれるということも明らかにされた。そこで動物と外界とのガス交換を外呼吸,体液と細胞とのガス交換や細胞内での酸化的分解過程を内呼吸(細胞呼吸,組織呼吸)といって区別するようになった。また,血液中のヘモグロビンのように,O2の運搬の働きをしている色素を呼吸色素と呼んでいる。細胞の中では炭水化物,脂肪,タンパク質などの有機化合物が分解され,その中に含まれている化学エネルギーが取り出されて,細胞のあらゆる生命活動のエネルギーとなるのであるが,この分解にO2が利用され,分解の最終産物としてCO2が生じるのである。

 外呼吸の際,O2とCO2の移動は,体表や呼吸器官の膜を介しての拡散によって行われる。小型の水生動物,たとえばゾウリムシ,アメーバ,プラナリアなどは体表における拡散だけで体中に十分なO2を補い,CO2を放出できる。しかし,体の厚みが1mm以上になると,拡散だけでは体の深部まで十分にO2をいきわたらせることはできない。とくに活動性が低く酸素要求の少ないものを除くと,ほとんどの動物は体表から深部へのO2,あるいは逆方向のCO2の運搬のために,体液の循環を利用している。また昆虫では細かく分岐して体中にいきわたっている気管系が,空気を直接組織に供給している。水生動物の呼吸器官であるえらは,体表の一部の表面近くに血管の分布がとくに密になっているところであるが,ガス交換の面積を増大するためにひだとなっているのが普通である。これに対して陸生動物の肺は空気呼吸に適した器官であって,脊椎動物では食道の一部のふくらみとして形成され,空気をその中に吸い入れることによってガス交換面の乾燥を防ぐことができる。えら呼吸でも肺呼吸でも,たいていの動物では呼吸器表面をたえず新鮮な水や空気にふれさせておくために,呼吸運動によって換水や換気が行われている。魚類では,呼吸運動によって起こるえらの表面の水流の方向と,えらの毛細血管内の血流の方向とが逆になっていて,ガス交換がきわめて効率よく行われることが知られている。また,カツオやマグロのように,たえず泳ぎまわっている魚は運動によって換水をしており,泳がないと呼吸困難になるといわれる。

 空気中には容積比にして約20%のO2と0.03%のCO2が存在する。1気圧で空気と平衡状態にある水1l中には5℃で9.22ml,20℃で6.51ml,海水にはそれぞれ6.89ml,5.05mlのO2が含まれている。空気の重さは水のほぼ1/1000であり,同じ量のO2を含む水と空気の重さを比較すると,空気は水の約1/30000に過ぎない計算になる。さらに空気は,水に比べて粘度もずっと少ないこともあって,空気中で呼吸運動に費やす労力は,水中よりずっと少なくてすむはずである。魚が呼吸のために使うエネルギーは,哺乳類の20倍以上にも達するという報告もある。

 えらや肺をもつ動物でも,ある程度は皮膚でガス交換が行われている。たとえば,カエルで調べたところでは,冬眠中は必要なO2の2/3以上を皮膚からとっており,CO2の排出は年間を通じて肺よりも皮膚からの方が多い。皮膚呼吸のために,カエルの皮膚はつねに湿っている必要があり,これがカエルが水辺から離れられない理由の一つである。鳥類や哺乳類では皮膚呼吸の割合はきわめて少ない。

 呼吸量や代謝量は体が大きい動物ほど大きいが,体重に比例するのではなく,体重の3/4乗に比例して増加するとされている。この関係は同種の個体間にも,また一つの分類群に属する異種間にもあてはまる。たとえば,哺乳類について体重の対数を横軸に,個体当りのO2消費量の対数を縦軸にしてプロットすると,小さなネズミから大きなゾウまでの種々の動物が,3/4のこう配をもつ直線上にならぶ。個体の呼吸量が体重の3/4乗に比例するならば,単位体重当りの呼吸量(呼吸度)は体重の1/4乗に反比例することになる。すなわち,小型の動物ほど呼吸度は大きい。たとえば体重1kg当り1時間のO2消費量は,体重25gのネズミでは1.65lであるのに対し,体重が4tに近いゾウでは0.07lである。一般に活発な動物は不活発なものより呼吸度は大きい。また同じ個体でも,活動の程度によって呼吸量は大きく変化する。ヒトが走るときは,呼吸量は速さに比例して増加し,静止状態の呼吸量の10倍以上にも達する。昆虫類では飛翔(ひしよう)中に呼吸量が100倍に増加することがある。呼吸量はまた温度,酸素濃度などの環境要因によっても変化することが知られている。
執筆者:

アメーバのような単細胞生物では,生体と外界との間に行われるO2とCO2の拡散のための移動距離が短いので,細胞表面で直接,周囲の環境とガス交換が行われる。しかし,高等な多細胞動物になると,ガス交換のための特別なしくみが必要となる。ヒトや哺乳類では肺の中に空気を吸い込んで,全身分のO2とCO2の交換をまとめて行い,肺と体内の組織との間のガスの運搬は血液循環のシステムによっている。循環系の分岐によって,毛細血管とその周辺の組織との間の距離は短縮され,ガスの拡散によるガス交換が可能となる。十分にO2を含み,CO2の少ない動脈血が毛細血管に到達すると,ガスの濃度こう配に従ってO2は組織へ移り,CO2が組織から血液へ移る。ここで血液は静脈血となって心臓の右心房,右心室を通って肺へ送られ,肺の中の気道の末端分岐部に位置する肺胞に接する毛細血管に達する。ここで拡散によって血液から肺胞へCO2,肺胞から血液へO2のガス交換が起こり,血液は動脈血化し,左心房,左心室を経由して体内の組織へ送られる。

 吸気は気道(口腔,鼻腔,咽頭,喉頭,気管,気管支,細気管支)を通過するうちに水蒸気で飽和され,呼気も完全飽和の状態にあり,このことは体内の水の収支に一つの役割を演じている。

 測定によって成人は1分間に約250mlのO2を消費し,約200mlのCO2を呼出する。一定時間内のCO2の排出量とO2の摂取量の比,呼吸商(RQ)は,呼吸によって燃焼される栄養素の種類に応じて,0.75~1.0の値をとる。大気と血液のガス交換は肺胞で行われる。気管支系の最も細い部分である細気管支が肺胞管に移行し,肺胞管は肺胞に分かれる。一つの細気管支に属する肺胞の集まりが直径1~1.5cmの肺小葉を形成する。肺小葉の内部に細気管支と肺動脈の小さい枝が入り込む。一つの肺胞は直径およそ0.1mmであるが,両側の肺について総計すると,肺胞の数は3億から7億5000万個の間にあり,ガス交換が行われる全肺胞面積は約70m2と推定される。肺胞には弾性繊維と格子繊維からなる支持基質があり,肺胞の入口は平滑筋繊維に囲まれている。血管系は両側の肺で分岐して約300m2の面積をもつ毛細血管網となって肺胞の表面にからみつき,ここで分圧の高低に応じてO2とCO2の交換が起こる。

肺胞と外界の間のガス交換,つまり換気は,呼吸運動によって生ずる気道の各部の圧力の差が原動力となって起こる。外呼吸のための運動を呼吸運動,それに働く骨格筋を呼吸筋という。呼吸運動は規則正しい吸息と呼息の交代である。吸息によって胸腔が拡張し,外気は気道から肺の中に吸いこまれ,呼息により胸腔は縮小して,肺内の混合ガスが押し出される。両側の肺はこの胸腔の運動に受動的に従う。吸息のときには肺容量が増加して肺胞内の圧力(肺内圧)は外界の圧力(大気圧)より低くなり,呼息のときには肺容量が減少して圧力差は逆となる。吸息は,横隔膜が収縮(平坦化)して胸腔が下方に広がるとともに,外肋間筋が収縮して肋骨がひきあげられ,その他の補助呼吸筋の活動も加わって,結果として胸郭はひき上げられ,胸腔が前方と左右へ広がることにより起こり,受動的に肺へ空気が流入する。呼息は一般に受動的に起こり,胸郭自身の重さと弾性による胸郭の沈下(胸郭の収縮)が主体であるが,強制的に呼息が行われるときには,腹壁の筋肉群の活動(腹圧の上昇)によって,横隔膜が上方へ押し上げられ,それに内肋間筋の収縮が加わって胸腔の容積は減少し,肺は圧縮されて気道内のガス体は外へ向かって流れる。

 肺は気管の部位だけで固定されていて,胸壁には付着していない。肺の表面と胸壁の内面は胸膜でおおわれているが,両方の間の狭い空所を胸膜腔といい,安静呼息時における胸膜腔の内圧(胸腔内圧)は外気よりも約-4mmHg低い。ここにはムコ多糖類を含む胸膜液がある。安静時の呼吸運動による肺内圧(肺胞内圧)の変化は,吸息時には大気圧より0.7~2.2mmHg低く,呼息時には0.7~2.2mmHg高い。このほかに,呼吸運動に伴う肺の拡張,収縮には,肺の弾力繊維,肺胞の表面張力による収縮する性質,肺胞の表面張力を減少させる表面活性物質(レシチンを含むリポタンパク質)の量,肺,胸郭の受動的伸展性を示すコンプライアンス,気道抵抗,非弾力性組織抵抗などの種々の因子が関係し,これらはいろいろな呼吸器疾患の病態との関連からも重要視されている。

 吸息は直ちに呼息へ移行するが,通常,呼息と次の吸息の間には休止期がある。呼吸数は新生児では1分間に29回(未熟児では34回),健康な成人では安静時1分間に平均11.7(10.1~13.1)回,軽労働時に平均17.1(15.7~18.2)回,重労働時に平均21.2(18.6~23.3)回で,24回をこえることはない。呼吸筋として横隔膜がおもに働く場合を腹式呼吸,肋間筋が主体となる場合を胸式呼吸というが,自然の呼吸運動では両方が共存している。おおよそ,肺活量の2/3が横隔膜の運動に,1/3が胸郭の運動によっている。男子では女子に比べて腹式呼吸の割合が大きく,とくに高齢者ではこの割合がさらに大きくなるが,これは加齢による胸郭の伸展性の減少のためと考えられている。

 呼吸運動は,脳幹部の呼吸中枢で形成される自動的周期性興奮が,呼吸筋支配運動ニューロンを経由して呼吸筋へ送られることによって起こる。たとえば横隔膜は,第3・4頸髄の運動ニューロン群から発する横隔神経に支配されているので,それ以下のレベルでの脊髄損傷で肋間筋の運動麻痺が起こっても,横隔膜による呼吸運動は続けることができる。

安静時呼吸での呼息後,胸郭は中間状態,安静時呼息位(基準位)にある。安静時呼吸において出入する空気量,すなわち1回換気量は成人男子で約500mlである。さらに努力吸入により最大約2500ml(予備吸気量)を吸入できる。安静時呼息位からさらに強制呼息によって呼出できる量(予備呼気量)は最大1500mlである。このときなお肺内に残るガス量(残気量)が約1200mlある。これらの基本的な肺気量はlung volumeとして表され,それらの組合せによる肺容量はlung capacityとして表される。capacityとして表されるものには,たとえば全肺容量や機能的残気量がある。前者は前記の肺気量すべての和(約6000ml)であり,後者は予備呼気量と残気量の和(約2700ml)である。肺活量もcapacityの一つであって,最大吸息位から最大呼息位,すなわち,1回換気量,予備吸気量,予備呼気量の和(約4500ml)をいう。したがって全肺容量は肺活量に残気量を加えたものでもある。残気量と全肺容量以外の各量はスパイロメーターspirometer(スピロメーターともいう。肺気量計)によって測定され,肺気量測定はコンプライアンス,動作時の呼吸機能検査や肺機能検査に応用される。なお1分間に呼吸気道に入った外気量を分時換気量という。上にあげた種々の気量や容量は年齢,性別,体質,訓練によって個人個人で著しく異なる。したがって肺気量測定結果の絶対値よりも肺気量の変化のほうが重要であって,たとえば肺疾患の経過を監視するのはこのことによる。1回の安静呼吸によって肺胞に入る新鮮な外気量は350mlで,これが機能的残気量約2700mlと混合するのであるから,1回の安静呼吸の換気率は約1/8である。このことは肺胞気の組成が呼吸周期によって大きく変動せず,ほぼ一定の値を保つことができ,呼息相においても血液とのガス交換を可能にしている。

肺でのガス交換には肺胞換気が重要である。しかし呼吸系のうち肺胞までの空気の通過経路となる部分,すなわち口腔,鼻腔,咽喉頭腔,気管,気管支などはガス交換に関与しないので,これらの諸部分の空間容積(約150ml)を死腔または解剖学的死腔という。ところが種々の原因で一部の肺胞が機能的にガス交換に関与しないような場合,これも一種の死腔と考えられるので,この死腔を前記の解剖学的死腔に加えたものを機能的死腔(または生理学的死腔)といっている。健康人ではこの二つの死腔はほぼ等しいが,病的状態では機能的死腔が解剖学的死腔よりも大きくなる。解剖学的死腔は吸気が肺胞へ到達するために必要な経路となること,死腔で吸気の清浄化,加湿,加温が行われること,死腔の一部が発声器官の一部を構成していることなど,重要な機能を果たしている。

 1回換気量のうちの肺胞換気量と呼ばれる部分だけが肺胞に接する。したがって肺胞換気の程度は,肺胞ガスの組成に直接影響を与えるので重要である。健康人の肺胞換気量は1分間当り約4l,これに対する肺毛細血管血流量は約5l/分で,その割合,換気血流比は約0.8である。外気が呼吸気道を通って肺胞に達すると水蒸気で飽和され,37℃に加温される。水蒸気の圧力は47mmHgで,肺胞気の圧力は大気圧に等しいから,肺胞気のO2分圧は104mmHg,CO2分圧は40mmHgである。呼気は死腔のガスと肺胞気との混合物であり,安静時の呼吸では呼気の1/3が死腔気,2/3が肺胞気で,そのガス組成は水蒸気飽和空気と肺胞気の中間値となる。

 肺胞の平均直径は約0.1mm,ガス交換が起こる全肺胞面積は約70m2と推定されている。それに接する毛細血管には75~100mlの血液が含まれ,ミクロン単位の厚さの膜をへだてて約2000mlの肺胞気との間でO2とCO2の交換が行われる。ガスの拡散は圧力のこう配によって起こる。肺胞気のO2分圧は100mmHg,静脈血では40mmHgで,その差は60mmHgである。CO2分圧はそれぞれ肺胞気で40mmHg,静脈血では46mmHg,その差は6mmHgであるが,CO2の膜の拡散速度はO2のそれの20倍もあるので,十分な交換が行われる。拡散に有効な膜の面積は拡散の過程に影響し,正常面積の1/3~1/4になると安静時でも換気障害が起こる。激しい運動時には膜の表面積のわずかな減少でも影響が大きい。肺胞気と血液の間には肺胞上皮,基底膜,毛細血管内皮があり,これらを一まとめにして呼吸膜(肺膜)といい,厚さは0.1~1μで,ガスはこれらを通過せねばならない。毛細血管の直径は7μ前後で,ほぼ赤血球の大きさである。O2もCO2も呼吸膜を容易に通過するが,肺浮腫などで間質液が貯留すると拡散距離が長くなって,換気不全が起こる。

 拡散の距離は短く,血漿(けつしよう)までが約1μ,赤血球内で約1μと見積もられ,肺胞と赤血球が互いに接触している時間(1秒以下)内に分圧の平衡がなりたつと考えられる(血液から肺胞気へのCO2の拡散はきわめて速く,0.4秒以内にほぼガス平衡に達する)。動脈血化した毛細血管内の血液のO2分圧,CO2分圧は肺胞のそれらとほぼ等しいとみなされる。ガスの呼吸膜での拡散のしやすさを拡散能といい,1mmHgの圧力差で1分間に肺胞気と血液との間を移行するガス量で表す。成人の安静時のO2の拡散能は21ml/分・mmHg O2分圧で,激しい運動時には肺胞が伸展されて表面積が増し,呼吸膜の厚さが減少すること,毛細血管が拡張して換気面積が大きくなることなどによって,値が3倍に増加する。CO2の呼吸膜の通過があまりに速やかなので,肺胞気と毛細血管血液とのCO2の圧力差は1mmHg以下で,現在の技術では測定できないが,拡散能はガスの拡散係数にほぼ比例するから,O2のそれの20倍として約400ml/分・mmHg CO2分圧と推定される。

血液路によるO2およびCO2の輸送のあらましは次のようである。血液中のO2はおもに赤血球のヘモグロビンと可逆的に結合し,体循環によって組織に運ばれる。動脈血はおよそ21容量%のO2を結合しうる。静脈血も,なお12~14容量%のO2を含んでいる。細胞からは炭酸が血漿の中に出て,一部はそのまま溶けて,一部は重炭酸塩に,一部はタンパク質と結合して血漿中を運ばれ,肺胞の中で呼気に移る。100mlの血液中には50mlの炭酸が含まれているが,2mlが血漿中に溶けていて,およそ40mlは重炭酸塩類の形で化学的に結合し,一部は重炭酸ナトリウムとして血漿中に,一部は赤血球内に重炭酸カリウムとして存在する。およそ8mlは血色素と化学的に結合してカルバミノヘモグロビンとなっている。ガス交換に際して解離されうる炭酸のごく一部分だけが放出されている。

 血液によって運ばれたO2が細胞内に取り込まれて,細胞内の呼吸酵素の働きによって,栄養素などの有機化合物の酸化が起こる物質代謝の過程は多様であって,多数の酵素がそれぞれ定まった反応段階で作用して進められる酸化の過程には,O2の添加によってスタートする好気性反応と水素を放出する嫌気性反応とがある。酸素消費によるエネルギーの産生は糸粒体(ミトコンドリア)の中で起こり,エネルギー貯蔵物質としてアデノシン三リン酸(ATP)がつくられ,呼吸の反応によって遊離されるエネルギーはATPの化学結合エネルギーの形でプールされ,必要に応じて細胞の生理作用の維持など種々の仕事に用いられることになる。

 組織の毛細血管部で,周囲の組織との間にガス交換(組織呼吸)が起こる。組織液のO2分圧は細胞の代謝活動によって変化するが,平均40mmHg(20~45mmHg)で,動脈血O2分圧との間に55mmHgの分圧差があって拡散によって平衡に達し,毛細血管を流れていく血液のO2分圧は40mmHgとなっている。一般に細胞内は細胞外液よりもO2分圧が低く(平均6mmHg),拡散によってO2は組織液から細胞内へと移っていく。細胞内代謝が正常に起こるために必要なO2分圧は1~5mmHgである。細胞や組織のCO2分圧は平均45mmHg,動脈血CO2分圧は40mmHgで分圧差は小さいが,CO2は拡散性が大であるから速やかに平衡に達する。

生体の酸素需要と炭酸ガスの産生は時々刻々変化していて,これに応じて呼吸運動の頻度と深さが調節され,肺胞換気が増減して体のO2分圧,CO2分圧が一定に保たれる。このような呼吸調節は,脳幹の呼吸中枢による横隔膜と肋間筋の周期的収縮を主体とする呼吸運動の制御,呼吸反射による神経性調節,それと体内のO2分圧,CO2分圧,水素イオン濃度(pH)などの化学的呼吸調節因子による化学調節のメカニズムによって,絶えず促進的,抑制的な影響を受けて行われている。

 呼吸運動は,胸腹部の広い範囲に存在する横隔膜や肋間筋など,多数の呼吸筋の秩序正しい協調活動によって,円滑な吸息運動と呼息運動が交代することで維持されている。呼吸筋の活動を支配している多数の運動ニューロンは脳と脊髄の広い領域に分布しているが,これらは脳幹部の特定の領域にある呼吸中枢によって統合的に制御されている。以下に述べる多数の呼吸調節のメカニズムの大多数は,フィードバック型のループをつくっていて,神経性および化学調節の調節因子による中枢神経系への求心性入力のほとんどすべてがこの呼吸中枢に収束し,呼吸調節の効果は呼吸中枢からの神経性出力の変化として現れてくる。

 呼吸反射による神経性調節には,気道にある肺伸張受容器から起こるヘーリング=ブロイエル反射,肺刺激受容器,肺胞壁のJ受容器から起こる反射,肺血管反射,肺化学反射などをふくむ肺迷走神経反射がある。また,気道とくに咽頭,喉頭,気管,気管支内面にある咳の受容器の機械的および化学的刺激によって発生する求心性インパルスが,肺迷走神経内を上行して延髄に達してひき起こされるの反射,鼻腔内の受容器から三叉神経内を上行する求心性インパルスによって起こるくしゃみの反射のように,防御反射としての意味をもつ反射がある。このほか,皮膚,粘膜の化学刺激,温熱,機械的刺激などに応ずる非特異的受容器,骨格筋と腱の固有受容器からの反射も知られている。呼吸運動は精神感動,睡眠,身体運動によっても変化し,また,ある範囲内では随意的に促進(深呼吸),抑制(息こらえ)することができることから考えて,脳の高位中枢(前頭葉,辺縁系,視床下部,その他上位の脳,脳幹部,脊髄に存在する呼吸関連領域,体温調節,発語,発声,嘔吐,嚥下,あくびに関係している中枢内の部位)との機能的結合があると推定されている。循環反射のメカニズムでもある頸動脈洞,大動脈弓の圧受容器も呼吸運動に影響を与える。化学的調節因子のうち動脈血のO2分圧,CO2分圧,pHは頸動脈小体,大動脈小体の化学受容器を介して,髄液のpHの変化は延髄腹面の中枢性化学受容性領野の関与によって呼吸運動に影響し,血中の性ホルモンも影響する。しゃっくりは横隔膜の痙攣(けいれん)性収縮によって起こる発作的呼吸運動であり,声門が閉じているので奇妙な発声と特有な感覚が生ずるが,呼吸調節系の異常によって起こると推測されてはいるものの,発現のメカニズムは不明である。

 身体の運動を行うとき,運動開始とともに換気量は著しく増加する。このときの肺胞気のCO2分圧の上昇は軽く,身体運動による呼吸運動の促進と換気量増加を説明することはできない。O2分圧,CO2分圧以外の原因として種々の因子が考えられているが,呼吸促進がきわめて速やかに現れること,受動的に運動させた場合にも起こることから,神経性因子の働きが有力視されている。すなわち大脳皮質の運動野から脊髄へ送られる遠心性インパルスが,脳幹部の呼吸中枢に促進的に影響し,また屈伸によって四肢の関節の受容器から求心性インパルスが呼吸中枢に伝えられて,呼吸運動の促進,換気量の増加が起こると考えられている。
血液 →呼吸中枢 →
執筆者:

すでに述べたように,健康人の呼吸数は安静時1分間に平均11.7回,1回の呼吸量は約500mlで,リズム,深さともほぼ一様に保たれ,通常は自覚されないが,このような正常な呼吸運動は,上記の呼吸調節機構の異常をはじめいろいろの原因によって,さまざまの異常をきたすことがある。呼吸の深さ,リズムなどの変化は,呼吸中枢の障害のほか,大脳・脳幹の障害,呼吸筋の萎縮・麻痺,胸郭・肺の弾性・粘性の変化,肺のガス交換機能障害,動脈血組成に影響を与える糖尿病性アシドーシス,腎機能障害など多くの原因によって起こる。一般に,呼吸リズムの乱れは中枢神経の障害,浅く速い呼吸は肺・胸郭の硬くなる変化,遅い呼吸は気道の閉塞性障害,大きく速い呼吸は動脈血組成の異常による場合が多い。

(1)回数,深さの異常 頻呼吸は呼吸数の増加した場合を指し,一般に呼吸の深さは浅くなる。正常人での運動後に見られるほか,肺繊維症,僧帽弁狭窄症による肺鬱血(はいうつけつ)などの拘束性換気障害において認められる。これは,肺が硬くて伸びにくくなるために,ヘーリング=ブロイエル反射効果の変化や呼吸筋内受容器の刺激で速く浅い呼吸になるものと思われる。毎回の呼吸量が異常に増加した状態が呼吸亢進であって,神経症患者に多く認められる。徐呼吸は呼吸数が病的に減少した場合を指す。クスマウル大呼吸は持続的に著しい呼吸亢進と徐呼吸が共存する場合で,糖尿病,尿毒症,コレラの昏睡時などに多く認められ,生体の代謝性アシドーシスに対する反応と解される。呼吸低下は毎回の呼吸量が減少した場合で,睡眠時にしばしば認められるほか,呼吸筋麻痺で頻呼吸とともに認められることが多い。

(2)リズムの異常 呼吸の深さ,回数が一定でなく,周期的に変化するので,一般に周期呼吸と呼ぶ。チェーン=ストークス呼吸は,浅い呼吸からしだいに深い呼吸となり,再び浅くなって,15~60秒の無呼吸期に移行するという周期を,比較的規則的に繰り返す呼吸である。大脳半球から間脳にかけての障害による意識障害,心臓や肺の病気の重症末期に多く認められるが,最近では老年者の睡眠中にも比較的しばしば出現することがわかってきた。原因に関してはまだ定説はないが,呼吸中枢の血中二酸化炭素レベルに対する感受性の低下あるいは感度の不安定化,血中二酸化炭素レベルを決定するうえで主役となる肺と,それを感知する呼吸中枢間の血液循環時間の遅れなどが関係しているといわれる。ビオー呼吸は失調性呼吸とも呼ばれ,チェーン=ストークス呼吸のように深さの周期的変化はなく,急激な短い呼吸の間に,持続時間の一定しない停止期のある呼吸で,主として髄膜炎において見られ,呼吸中枢の延髄レベルでの脳障害に関連するといわれる。ため息呼吸は,正常な呼吸が,ときどき深い吸気とこれに続く長い呼気で中断されるもので,神経症や神経循環無力症に多く認められる。

(3)外観の異常 口すぼめ呼吸は,呼気に際して口をすぼめて気道内圧をあげ,気道閉塞を軽減しようと無意識に行っている呼吸で,進行した慢性肺気腫患者に見られる。鼻翼呼吸は呼吸困難のある場合に見られるもので,鼻翼が呼吸に伴って動く場合をいう。細気管支炎,肺炎,鬱血性心不全,自然気胸などに多く見られる。ただし,子どもでは興奮すると呼吸時に鼻翼が運動するので,これだけでは呼吸障害の症状とはいえない。起座呼吸は,寝ていると呼吸困難が強いため起き上がってしまっている状態で,急激に起こった肺鬱血の症状とされてきたが,気管支喘息(ぜんそく)や慢性肺気腫でも見られることがある。下顎呼吸は,吸息時に下あごが上方に上がり,呼息とともにゆるやかに下がるもので,呼吸はしばしば不規則となる。瀕死の重症患者に見られる。喉性呼吸は同様に瀕死または昏睡の患者に見られ,かたわらにいる人にも聞こえるほど,ごろごろまたはぜいぜいいう音を伴う呼吸である。咳反射が不十分なため,気管や気管支に痰が貯留し,その中を空気が通るために起こる。
息ぎれ →呼吸機能 →呼吸機能検査 →呼吸困難
執筆者:

外呼吸を主要な機能とする器官。植物では呼吸根のような特殊化したものがあるが,一般には通気組織と気孔が空気の通路となっており,とくに呼吸器官と呼べるものはない。

無脊椎動物で分化した呼吸器官にはえら,気管,肺があるが,特別の呼吸器官をもたないものも多く(腔腸動物,扁形動物,袋形動物,触手動物,棘皮(きよくひ)動物など),これらでは体外,体内の表皮を通して呼吸が行われ,とくに触手などの薄くなった表皮に集中する。軟体動物のえらは,基本的には体側壁が外套腔(がいとうこう)内に突出したくしえら(櫛鰓)で,入鰓(にゆうさい)血管と出鰓血管が通る扁平な軸部に薄いえら板(鰓板(さいばん))がくしの歯状に列生して呼吸上皮を形成している。えら板には繊毛があって,水流を起こして呼吸のための換水をするが,頭足類では外套筋の運動で換水する。多板類,単板類ではくしえらは多対あるが,腹足類では体が巻くため片側では消失し,あるいは全部消失して二次的に外套膜の一部が突起してえらとなり,陸生のものでは外套腔壁が肺となる。二枚貝類のえら板は,糸状になって折れ曲がり結合したりして,複雑な構造となっている。多毛類では,いぼ足にある背触鬚(はいしよくしゆ)あるいは腹触鬚が葉状,糸状,樹枝状などに変形して,えらを形成している。羽状触手は呼吸上皮としての役割を果たすが,えらではない。節足動物では,付属肢の付属突起が変形してえらを形成している。剣尾類のえらは書鰓といわれ,腹肢の後面に列生している100~150枚の葉状突起で構成されている。甲殻類のえらには簡単な板状のものもあるが,十脚類の分化したものでは,葉状,糸状,樹枝状の鰓条が列生した構造となり,胸肢の基部に形成されるが,その部位,数は種類により多様である。一般に頭胸甲の側甲で覆われた鰓室内に保護され,付属肢あるいはその特化した部分を動かして換水する。口脚類や等脚類では腹肢の一部分がえらの役割をするよう変形している。橈脚類(じようきやくるい)などの小型の群では特別の呼吸器官はない。昆虫類の水生幼虫には,主として腹部から突出した羽状,総状のえらがあり,血管のかわりに気管小枝が入り込んでいるのが特徴的である。トンボ類幼虫の直腸鰓は,直腸壁に形成された微細なひだで,内部には気管小枝が密に分布しており,肛門を通して換水される。半索動物のえらは咽頭にあいた1~多対の鰓裂で,消化管内と体外とを連絡しており,基本的には脊椎動物の鰓裂と同じ構造のものである。ホヤ類では鰓裂は細分して多数の小孔となり,咽頭は繊毛を密生した網目状の鰓囊となって囲鰓腔の中に包み込まれ,出水口で体外に通じる。気管は,体表皮の一部が体内におち込んで呼吸上皮を体組織中に入り込ませている構造物で,主として陸生の昆虫類,多足類,蛛形類(ちゆけいるい),有爪類(ゆうそうるい)に発達している。軟体動物有肺類にある肺といわれるものは,外套腔体壁に毛細血管が分岐,結合しながら密集して呼吸上皮を形成しているものである。外套腔は呼吸孔をのこして薄い隔壁で閉じられて呼吸気室となり,水分の蒸発を防ぐとともにその下面の筋肉を上下させて換気する。ナマコ類には,直腸から体腔内に膨出した樹状の薄膜管で作られた呼吸樹(水肺)と呼ばれる器官があり,呼吸に用いられる。肛門と直腸の運動によってその管内を換水する。
執筆者:

脊椎動物では,外呼吸に関与する器官には口,鼻,咽頭,喉頭,鰓裂,皮膚,腸管壁などもあるが,これらは呼吸以外に重要な機能も備えているので,普通は呼吸器官には数えない。水呼吸を行う水生脊椎動物の呼吸器官はえらであり,空気呼吸をする動物のそれは肺とその付属器官である。えらはほぼ樹状またはくし状の器官で,その外表面が呼吸作用をもつのに対し,肺は袋状の構造でその内表面が呼吸機能をもつ。また発生学的には,えらは咽頭の側壁に現れる内臓弓(鰓弓)の表面から発生するのに対して,肺は内臓弓の後方の消化管の膨出から生ずるもので,構造的にも発生的にもまったく別個の器官である。高等硬骨魚類だった古生代の総鰭類(そうきるい)はえらで水呼吸をしていたが,それと同時に肺を備え,口腔へ貫通した鼻孔によって空気呼吸をも行うようになっていた(現存の総鰭類であるシーラカンス類は空気呼吸はせず,もっぱらえらによる水呼吸をする)。その直接の子孫である両生類では,幼生(オタマジャクシ)はえら(カエルは内鰓,イモリとサンショウウオは外鰓)で水呼吸をするが,変態して両生化するにつれてえらは退化していき,それに代わって肺が発生し,やがて肺呼吸に頼るようになる。もっとも,えらが消失しても肺は発生せず,外呼吸は皮膚だけに頼るもの(ハコネサンショウウオ,アメリカサンショウウオ)や,天然状態では生殖可能になりながらもえらを終生維持し(この現象をネオテニーという),水呼吸を続けるもの(エゾサンショウウオ,メキシコサンショウウオ/別名アホロートル)が知られている。現生の肺魚類は水呼吸のためのえらと空気呼吸のための肺をともに備えている。比較発生学的に知られるところでは,硬骨魚類のうきぶくろは肺と相同の器官である。また古生物学的な証拠によれば,空気呼吸をする水生動物にはじめに肺が現れ,次いで水呼吸をする魚類でこれが浮力調節器官であるうきぶくろへ変形したと考えられている。したがって肺とうきぶくろを兼備する動物はいない。

 えらと肺とに共通する点が二つあり,その一つはガス交換という生理的機能である。他の一つはえらの外面,肺の内面は総面積がひじょうに大きく,その表面はきわめて薄い上皮に覆われ,そこに毛細血管が豊富に分布しているという形態的共通点である。血液を通じてのガス交換という共通の機能はこの共通の構造によって達成される。
(うきぶくろ) →(えら) →
執筆者:

呼吸は本来,呼息と吸息にもとづく生理現象であるが,古くギリシアやインド,中国では,宇宙の大気と身体内部の生命の息(生命力)とを媒介する機能をもつとされた。この考え方はその後,とくにインドや中国で大きな発展をみせた。インドの古代哲学(ベーダーンタ学派)では呼吸(プラーナprāṇa)にかかわる機能を呼気,吸気,等気,上気,媒気の5種に分類したが(五風説または五気説),ヨーガ学派では,呼気→呼吸の停止→吸気という3種の機能からなる呼吸法(調息,プラーナーヤーマprāṇāyāma)の実修が説かれた。これは中間における呼吸の停止期間を長くすることに意を用い,独自の坐法と並行して宇宙との合一を目ざすヨーガ瞑想(めいそう)の基本とされた。このヨーガの呼吸法はその後仏教にも取り入れられ,そのテキストの一つが後漢のころ安世高によって《大安般守意経》として漢訳されたが,〈安般〉とはサンスクリットのāna-apānaを音写した安那般那(阿那波那)を縮めたもので呼吸の意である。これよりさき,中国では戦国時代に身体運動を伴う呼吸術である導引が行われていた。また道教が成立すると胎息という独自の呼吸法が説かれたが,これは胎児が母親の腹中で行う呼吸の方法とされ,不死の生命を得るための最終的な手段とされた。また道教では,吸気を下丹田に集めて精と結びつける還精という呼吸法が説かれているが,これは仏教の禅定で重視される丹田呼吸とも関連している。このように中国では,呼吸法をめぐってヨーガ,仏教,道教の相互交流の跡がうかがえるが,その一例として天台智顗(ちぎ)の《摩訶止観(まかしかん)》をあげることができる。この著作の〈病患境〉という章には,座禅瞑想中に病気になったときそれを治すための対症療法的な呼吸法が細説されている。《摩訶止観》は日本の仏教に大きな影響を与えた論書であるが,そこに説かれている呼吸法は無視され,日本ではインドや中国の場合におけるように,呼気や吸気が宇宙と身体を循環するという観念は発達しなかった。《日本書紀》には,伊弉諾尊(いざなきのみこと)が息を吹くとそれが級長戸辺命(しなとべのみこと)という神になったとする伝承が語られているが,これはあくまでも風神の生成論であって,呼吸を媒介とする宇宙論がそこから生みだされることはなかった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「呼吸」の意味・わかりやすい解説

呼吸
こきゅう

生物の生存には酸素の供給が不可欠である。細胞内では酸素と反応した栄養素がエネルギーを放出し、その結果、二酸化炭素(炭酸ガス)が生成される(これを物質代謝という)。このような酸素と二酸化炭素の出入りが呼吸であり、呼吸は、物質代謝の行われる組織細胞でおこり、さらに、それらのガスの受け渡しをする血液を介して肺でも行われる。前者の出入りを内呼吸(組織呼吸)とよび、後者を外呼吸(肺呼吸)という。内呼吸は主として生化学の研究対象であり、生理学で扱われる呼吸とは、おもに外呼吸をさす場合が多い。

 ヒトの酸素と二酸化炭素の出入りは、安静状態の成人で、1分間に酸素が250ミリリットル、二酸化炭素が200ミリリットルくらいである。激しい運動をした場合には、この数倍以上にも達する。しかも、体内の酸素貯蔵量はせいぜい1リットル余りであるから、呼吸による酸素の取り入れは、すこしも休むことのできない重要な身体活動といえる。

[本田良行]

呼吸器の構造

呼吸器は鼻腔(びこう)から始まり、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)を経て気管となる。気管は、さらに左右の気管支に分かれ、肺内で数多くの分岐を繰り返し、細かく数が増えていく。分岐は20~23回にも及び、最終的には薄い袋状の肺胞で終わる。ガス交換は主としてこの肺胞で行われる。個々の肺胞は径100マイクロメートル余りの小胞であるが、左右の肺をあわせると約3億個にもなる。したがって、ガス交換のための表面積は約60平方メートルと、小さな教室くらいの大きさとなる。

[本田良行]

肺気量

普通、肺内に存在する空気量は約2リットル余りで、これを「機能的残気量」とよぶ。これに1回につき約0.5リットルの空気が呼吸のたびに外から入ってくることになる。また、精いっぱい息を吐いても、肺内にはまだ空気が残っている。これは「残気量」とよばれ、およそ1リットル余りである。この残気量は、肺を取り巻いている胸膜腔の内圧が、大気と通じている肺の気道内圧よりも低く、肺を外に向かって広げる力が働くために生じたものである。最大呼息から最大吸息を行うと4~5リットルの空気を吸い込むことができる。これが肺活量である。このときの肺内の空気の総量は6リットル弱で「全肺気量」とよばれる。

[本田良行]

肺におけるガス交換

肺胞の周りは肺毛細管が取り巻いており、その表面積は肺胞表面積とほぼ同じく約60平方メートルである。しかし、この部位に存在する血液量は約70ミリリットルくらいにしかすぎないから、肺胞内のガスは、肺胞と肺毛細血管膜の薄膜(1マイクロメートル以下)を介して非常に薄い血液の層と接することになる。したがって、血液が肺毛細血管内を通過する約1秒間の間に、肺胞ガスと肺毛細血管内のガスとは完全な平衡状態に達するものと考えられている。この場合のガスの移動は拡散によることが1920~1930年代に証明された。拡散とは、気体や液体のような流動物質の濃度が場所によって異なるとき、物質の移動がおこり、濃度の平均化がおこる現象のことである。

 こうした肺におけるガス交換の結果、肺胞内の空気は外界の空気よりも酸素が低く二酸化炭素が高くなる。酸素は約21%から14%に、二酸化炭素はほぼ0から5.6%となる。この肺胞ガスは、機能的残気量のガスに対して絶えず外界から呼吸により空気が出入りするため、きわめて一定に保たれている。また、ガス交換が拡散でおこるという理由から、酸素と二酸化炭素の濃度はガスの分圧でもよく表される。肺胞内の酸素と二酸化炭素の分圧は100ミリメートル水銀柱(mmHg)と40ミリメートル水銀柱である。これと平衡している動脈血でも酸素と二酸化炭素の分圧は100ミリメートル水銀柱と40ミリメートル水銀柱となる。静脈血では、組織でのガス交換の結果、酸素は40ミリメートル水銀柱に低下し、二酸化炭素は46ミリメートル水銀柱に上昇する。

[本田良行]

呼吸運動

肺を取り囲む気密の容器である胸壁と横隔膜は、吸気の際、拡大する。したがって、外気と通じている気道内圧から肺周囲の胸膜腔内圧への圧勾配(こうばい)が大きくなり、肺は膨張する。胸部を動かすのは外肋間筋(がいろっかんきん)で、肋骨の間を斜め前下方に向かって走っている。この筋肉の収縮によって、肋骨は脊椎(せきつい)を支点にして上方に持ち上げられるため、胸部は前後左右に拡大することになる。横隔膜は強力な筋組織であり、上方に凸のドーム状をしている。横隔膜は、その収縮によって面積が縮小するため、肺は下方に押し下げられる。吸息が終わると、胸壁と横隔膜は自己の弾性によってもとの位置に戻り、胸膜腔内圧も初めの内圧に復するから、肺は圧迫されて受動的に呼息相に移る。呼吸運動が非常に激しくなると、内肋間筋などの呼息筋が働いて積極的な呼息がおこる。

[本田良行]

呼吸中枢

呼吸運動の命令は周期的に呼吸中枢から発せられる。呼吸中枢は、延髄に存在する吸息・呼息中枢、橋脳(きょうのう)下部のアプニューシス(強い持続性の吸息を意味する)中枢、橋脳上部の呼吸調節中枢などの呼吸中枢群などからなっている。今日では、呼吸の基本リズムは延髄での吸息・呼息中枢でつくられるという考えが有力である。呼吸のリズムはいくつかの神経細胞からなるニューロン(神経単位)のネットワークでつくられるものと推測されている。普通の呼吸では、肺の吸息による膨張が肺迷走神経末端の伸展受容器を刺激し、その情報が呼吸中枢に伝えられて、呼吸リズムを調整する作用が加わる。これを「ヘリング‐ブロイエルHering-Breuerの反射」とよぶ。

[本田良行]

呼吸調節

呼吸の主目的は酸素の取り入れと二酸化炭素の排出にあるが、最初に述べたように、体内での酸素貯蔵量は非常に少ない。また、二酸化炭素は体液に溶けると、炭酸となって酸性化作用をもち、その量は1規定の酸にして1日15リットルにも達する。それゆえ生体には、酸素・二酸化炭素の出入りを確保し、血液中のこれらガスのレベルの安定を図るための強力な調節系が存在している。これを「呼吸の化学調節系」とよぶ。また、酸素と二酸化炭素、さらにこれによって強く規定される水素イオン濃度指数(pH)は血液ガスとよばれることが多い。この血液ガスは、いわゆる負のフィードバック・ループnegative feedback loopとよばれる化学調節系で調節される。この系は、呼吸中枢群―(呼吸筋)―肺―血液ガス―末梢(まっしょう)と中枢の化学受容器―呼吸中枢群のループで構成される。たとえば、なんらかの理由で肺のガス交換が障害されると血液中の酸素分圧が低下する。この酸素分圧の低下は、おもに末梢の化学受容器を強力に刺激し、呼吸中枢の活動を高めて肺の換気が亢進(こうしん)し、低下した酸素分圧をもとに戻すように働くことになる。末梢化学受容器は、1920年代の終わりにベルギーのハイマンスC. Heymansらによってその作用が明らかにされた。末梢化学受容器は、総頸動脈(けいどうみゃく)の分岐部で外頸動脈寄りにある頸動脈体と、大動脈壁に散在する大動脈体からなっている。前者は洞神経(内頸動脈近くの舌咽神経の枝)から舌咽神経を通って、後者は迷走神経を通って呼吸中枢に刺激を伝えている。これら受容器は、主として動脈血酸素分圧と血液pHの低下によって刺激され、血液pHの上昇によって抑制される。この末梢化学受容器は心臓の出口と脳の入口の部分に存在するわけであるが、その理由は、出口のところでは循環系全体の監視装置として、入口のところでは脳循環系の動脈血の血液ガス、とくに酸素欠之を防ぐ監視装置として働いているためと考えられる。一方、中枢化学受容器が知られたのは比較的新しく、1960年代にアメリカのミッチェルR. MitchellやドイツのレシュケH. Loeschckeなどによって延髄腹側表層に存在すると報告された。中枢化学受容器は、pHの低下によって刺激される。この部位は脳脊髄液に覆われているため、透過性の高い血液の二酸化炭素によって酸性化されて刺激されるといわれている。血液pHの低下は、水素イオンが簡単には脳脊髄液中に透過されないため、その濃度がかなり高まらないとこの受容器は刺激されないものと思われる。

 正常の空気呼吸をしている動物は、一般に酸素よりも二酸化炭素によって呼吸が支配されている。これは、元来、生物は海水中に発生したものであり、周りの海水中に溶けた酸素を利用して呼吸していた。ところが、生物が空気中に生活圏を移すと、環境の酸素濃度は一挙に30倍以上となった。つまり、現在の空気呼吸動物air breatherは、系統発生的にみると、以前と比べて非常な高酸素呼吸の環境にすんでいるわけである。このため、換気量は水中呼吸動物water breatherの数分の1にしかすぎないこととなった。しかし、こうした低換気のために、やがて体内に二酸化炭素が蓄積し、体液が酸性化acidosisする危険が生ずることになった。それゆえ、現在の空気呼吸動物では、主として二酸化炭素により呼吸が刺激され、血液pHを一定に保つよう調節されている。

[本田良行]

動物における呼吸

動物は体制により呼吸器官の型が異なるので呼吸運動も異なっている。

[嶋田 拓]

呼吸運動

(1)肺呼吸 哺乳(ほにゅう)類の肺呼吸では、発達した横隔膜の収縮により胸腔(きょうこう)が体下方に拡大し、同時に外肋間筋などの収縮により肋骨があがって胸腔が上方と横へも拡大して胸部が広がり、空気が肺に吸い込まれる。横隔膜と肋骨がもとに戻るとき、空気は肺から排出される。呼吸運動は延髄の呼吸中枢に支配され自律的であるが、血中の二酸化炭素分圧や酸素分圧の変動も中枢を介して呼吸運動に影響する。鳥類や爬虫(はちゅう)類では呼吸は主として外肋間筋の作用による胸部容積の変化で行われる。両生類、とくにカエルは、声門と鼻孔の交互開閉により空気を口咽頭(いんとう)腔に出入りさせ、同時に舌骨板の働きで肺内の空気が口咽頭腔へ出、ここで新鮮な空気と混じってふたたび肺に入る。魚類では肺魚が口から空気を吸って肺呼吸する。

(2)皮膚呼吸 これは体表面で酸素を取り入れる呼吸で、特別に分化した呼吸器官をもたない動物、たとえばミミズやヒルなどはこれによって呼吸する。ほかに呼吸器官をもつ動物でも皮膚呼吸をするものは多く、腔腸動物、甲殻類、ある種の昆虫、脊椎(せきつい)動物などがそうである。ウナギは条件によっては全呼吸の60%以上を皮膚呼吸でまかなうことができる。カエルも全呼吸の50%ぐらいを皮膚で行う。鳥類や哺乳類では皮膚呼吸の占める割合はわずかである。皮膚で水呼吸する動物もいる。

(3)腸呼吸 これは腸内腔表面の細胞層を通しての酸素吸収で、えらや皮膚による呼吸の補助として水生動物でよく認められる。ドジョウは水面で口から空気を吸い、腸でガス交換して肛門(こうもん)から排出する。ユムシは肛門から直腸に海水を入れる。ナマコの水肺(呼吸樹)による呼吸も腸呼吸で、直腸の律動により海水が肛門から呼吸樹に入り、その薄壁を走る血管の血液とガス交換する。

(4)えら呼吸 水生動物に普通にみられる呼吸で、水を恒常的にえら表面に流し、えらの毛細血管を流れる血液との間でガス交換する。魚類、両生類の幼生と一部の成体、ホヤ類、頭索類、甲殻類、昆虫の水生幼虫、軟体動物などがえら呼吸する。魚類は鰓蓋(さいがい)を動かして口から水を吸い込むが、サバやサメ類などは前進運動により口から水を入れる。二枚貝類は繊毛運動で水流をおこし、えらに水を流す。潮汐(ちょうせき)などによる水の動きに頼るものもいる。魚類は普通えらで水呼吸するが、他の器官で補助的に空気呼吸するものも多く、先にあげたウナギやドジョウのほか、トビハゼは皮膚と鰓腔で、タイワンドジョウは上鰓器官で、ナマズ類は気嚢(きのう)で、硬骨魚の多くがうきぶくろで空気呼吸する。

(5)昆虫は気門の開閉により空気を気管内に入れ呼吸する。

[嶋田 拓]

ガス交換

大部分の昆虫や線虫やクラゲなど体制の簡単な動物では、細胞への拡散のみで十分な酸素が得られる。体制が複雑で循環系をもつ動物では、ガス交換は呼吸媒質と血中の酸素運搬分子間でおこる。酸素運搬分子には、ヘモグロビン(原索動物と大部分の昆虫を除いた動物)、ヘモシアニン(軟体動物と甲殻類)、クロロクルオリン(一部の多毛環虫類)などの呼吸色素がある。無脊椎動物には酸素運搬分子が血中に溶けているものもいるが、紐形(ひもがた)動物、軟体動物の一部、棘皮(きょくひ)動物、脊椎動物では特殊な血球中に局在する。呼吸器官で酸素はヘモグロビンと結合し、血流で末端組織に運ばれる。酸素とヘモグロビンの結合は可逆的である。ヘモグロビンは酸素分圧の高いところ(呼吸器官)では酸素を安定に結合するが、酸素分圧の低いところ(末端組織)では結合が不安定になり、酸素は放出される。末端組織で生じた炭酸ガスは血液に溶け込んで呼吸器官に運ばれ、そこで呼吸媒質中に放出される。

[嶋田 拓]

内呼吸

ガス交換(外呼吸)によって取り入れられた酸素が、体内の細胞や組織に運搬されて消費され、二酸化炭素を放出する現象であり、細胞呼吸または組織呼吸ともいう。

[嶋田 拓]

生化学面からみた呼吸

生化学的な意味での呼吸は、ミトコンドリアやクロロプラスト(葉緑体)で行われるエネルギー代謝の総称である。これは化学的な基質の酸化還元により生化学的エネルギー、主としてATP(アデノシン三リン酸)を得るもので、ATPは光や運動、熱に変えられて生体機能を維持するために用いられる。すべての細胞にはミトコンドリアか、これにかわる細胞内器官が存在するので、呼吸は細胞呼吸をその原点としているということができる。

 ミトコンドリアの中では、きわめて複雑な生化学反応が多数の酵素によって進行しているが、エネルギーを得る反応は、基本的には酸素を用いた酸化還元反応なので、これを酸素呼吸といい、ごく一部の例外を除き生体はこれにより維持されている。酸素呼吸以外の呼吸の例としては、硝酸や硫酸を酸素のかわりに用いるもので、硝酸還元菌などとよばれている細菌は、このような無酸素呼吸を行うことが知られている。

 ミトコンドリア内で進行する生化学反応はクエン酸サイクル(TCA回路)とよばれる一連の反応である。ミトコンドリア内における物質の出入りは、ピルビン酸や脂肪酸が酸素とともに入り、かわりに二酸化炭素とATPを放出する。ピルビン酸、脂肪酸はアセチル補酵素Aとなり、TCA回路を通じてNADH(還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)を生じる。NADHは電子伝達系とよばれるチトクロムを主成分とする生体膜反応によって酸化型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に変換され、同時にADP(アデノシン二リン酸)とPi(正リン酸)からATPを生ずる。ATPは高エネルギーリン酸化合物の一種である。ADPとPiからATPを生じるエネルギー変換のプロセスのメカニズムについては完全に解明されていないが、現在のところ化学浸透圧仮説chemiosmotic hypothesisがもっとも有力である。

 この仮説は、ミトコンドリアの機能に関連して四つの独立した仮定からなっている。

(1)ミトコンドリア内膜にある呼吸鎖(電子伝達系)はプロトン(H+)を動かし、電子が電子伝達系に沿って運ばれてきたときに、ミトコンドリアのマトリックスの外にプロトンを押し出す。

(2)ミトコンドリアのATP合成酵素複合体もまた、ミトコンドリアの内膜に沿ってプロトンを動かす。反応は可逆的であって、プロトンを押し出すのにATPのエネルギーを用いるが、もし十分な量のプロトンがあると、反応は主としてATP合成のほうに働く。

(3)ミトコンドリアの内膜はH+(プロトン)とOH-イオンに対し不透過性をもつ。

(4)ミトコンドリア内膜は、一組の必要な物質の出入りを仲介するキャリアタンパクをもつ。

 ミトコンドリア内膜上に埋め込まれている呼吸鎖はH2+1/2 O2―→H2Oの反応により、エネルギーを獲得している。これはさらに多くの小さな段階にまで解析されている。この段階は電子伝達系ともよばれ、コエンチームQ(ユビキノン)が電子のキャリアであることが知られている。また、電子伝達系のタンパク質として5種類のチトクロムが知られている。これらは有色タンパク質で、電子の授受により第二鉄あるいは第三鉄の形で存在する。チトクロムに加えてさらに少なくとも6種の異なるFe(鉄)―S(硫黄(いおう))複合体と2種のCu(銅)原子、2種のフラビンが呼吸鎖に強く結合していて、電子を運んでいる。これら電子のキャリアは、つねに前者より大きい親和力をもつため、NADHからの一種のカスケード(小さな滝の意)ができて電子がより低いエネルギーレベルへと流れていく。

 ATPをADPとPiに加水分解するのに必要な自由エネルギー(ΔG)は-11~-13kcal/molである。ATP、ADP、Piが等しい濃度で存在する、いわゆる標準自由エネルギーΔG0はわずかに-7.3kcal/molなので、ATPがADPとPiに比べて低い濃度のときにはΔGはほとんどゼロになり、このとき反応は平衡に達する。またADP+Piに比べてATPが高濃度に存在することは、ADPのATPへの効果的な変換を維持し、ATPの分解を細胞において平衡からはるかに離れた状態に保つため、ΔGは非常に大きい負の値をとる。この大きな非平衡状態なしには、ATP加水分解は細胞反応に用いられることなく、また多くの生化学反応が前向きよりも後ろ向きに進行することになろう。

 生体が利用している細胞呼吸の効率は非常に高く、1分子のグルコースからは24ATP分子が、1モルのパルミチン酸からは96分子のATPができることになり、アセチル補酵素Aができる前から計算すると、1モルのグルコースの完全酸化により36ATP分子が、パルミチン酸のそれからは129ATP分子ができることになる。ガソリンエンジンや電動機のエネルギー変換効率は10~20%なのに、細胞呼吸の効率は50%以上になり、生物が熱をいたずらに捨てることなく、いかに効率よくエネルギーを利用しているかがよくわかる。

 ミトコンドリアによく似た細胞内器官としてクロロプラスト(葉緑体)がある。クロロプラストは、ミトコンドリアのマトリックスに相当するクリスタのかわりに、ストロマという間隙(かんげき)をもつ。また、チラコイドという管もある。反応としては、光化学反応によってATPと還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を生じ、二酸化炭素を炭水化物に変えることができる。このような炭素固定は、リブロース二リン酸カルボキシラーゼによって触媒される。クロロプラストはミトコンドリアのように、NADPHなしにATPをつくることもできる。したがって、広義の意味でクロロプラストも呼吸系をもっているということができる。また、呼吸系は、進化の過程において、発酵のような効率の悪い呼吸系(ATP合成系)から、ミトコンドリアや光合成もできるクロロプラストを生み出してきたのではないかといわれている。

[岡崎英雄]


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百科事典マイペディア 「呼吸」の意味・わかりやすい解説

呼吸【こきゅう】

元来は動物の呼吸運動を指すが,歴史的にその意味は細分化ないし拡張されてきた。現在の最も一般的な定義では,生体が酸素を取り入れ,それを用いてエネルギーを発生し,その結果生ずる二酸化炭素を排出する一連の現象をいう。本質的には有機化合物の酸化還元反応で,生体酸化ともいわれる。1.外界の酸素の体内への取入れ,2.酸素の組織細胞への運搬,3.細胞内でのエネルギー発生,4.生じた二酸化炭素の体表への運搬,5.その排出という段階からなる。1.と5.のためにそれぞれの生活環境に適した呼吸器官が発達,呼吸運動を行って酸素,二酸化炭素のガス交換の能率を高めるが,交換それ自体は単純に濃度(分圧)の勾配(こうばい)に従った分子の拡散による。呼吸器官で行われる外界と生体体液との間のガス交換を外呼吸,組織細胞での生体酸化とそれに伴う細胞・体液間のガス交換は内呼吸と呼ばれる。生体酸化は多くの呼吸酵素を備えた細胞中のミトコンドリアで行われる。最初の段階は無酸素的に進行し,ブドウ糖,グリコーゲンその他の呼吸基質はリン酸と結合した上,ピルビン酸にまで分解される(解糖)。次にピルビン酸はオキザロ酢酸と結合してクエン酸回路に入り,酸素を消費して水と二酸化炭素に分解する。この際38分子のATPが生産され(酸化的リン酸化),そのエネルギーは細胞活動に利用される。酵母菌,乳酸菌などの発酵は呼吸の初期段階,すなわち解糖と同じ経路をたどるため,無酸素呼吸などともいわれる。植物でも呼吸は大切だが,特別な呼吸器官は発達しない。光合成とは表面的には逆過程の関係にあり,酸素,二酸化炭素の出入は互いに打ち消し合う。
→関連項目呼吸器官生合成皮膚呼吸

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普及版 字通 「呼吸」の読み・字形・画数・意味

【呼吸】こきゆう(きふ)

いき。いきする。また、そのわずかな時間。〔晋書、鑒伝〕今此の力を以て、彼の強寇にす。を一に決し、敗を呼に定む。

字通「呼」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「呼吸」の意味・わかりやすい解説

呼吸
こきゅう
respiration

生体は外界から酸素を摂取し,二酸化炭素を排出する。そのガス交換の働きを呼吸という。呼吸の方法には,単細胞動物にみられる細胞表面で直接外界とのガス交換を行う方法,魚類の鰓による方法,昆虫の気管による方法などがあるが,ヒトや哺乳動物などの場合,呼吸の過程は (1) 肺呼吸または外呼吸 肺胞と肺毛細血管との間のガス交換,(2) 組織呼吸または内呼吸 血液と組織細胞との間におけるガス交換,に大別できる。呼吸運動によって肺胞内に吸込まれた酸素は,肺胞膜を通過して血液中に拡散していき,血液中では血色素と結合し,全身の組織へと送られる。一方,物質代謝の過程で生じた二酸化炭素は組織細胞から血液中に拡散し,主として血漿中に溶解した状態で肺へ送られる。肺では酸素の場合と逆に分圧の差によって血液から肺胞内の空気中へと拡散し,呼息によって体外に排出される。

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知恵蔵 「呼吸」の解説

呼吸

多義的な言葉で、生物個体が酸素を外界から取り入れ二酸化炭素を排出する外呼吸(ガス交換)と、体液と細胞や組織のガス交換である内呼吸、および細胞内で酸素を用いた酸化還元反応においてエネルギーを獲得する細胞呼吸などを指すが、最も広い意味では、酸素なしの酸化還元反応によってエネルギーを生産するすべての過程を含める。外呼吸は肺などの呼吸器官の運動によってなされ、細胞呼吸では解糖系やクエン酸回路などの代謝経路を介して糖や脂質が二酸化炭素と水に分解され、その過程でATPが生産される。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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栄養・生化学辞典 「呼吸」の解説

呼吸

 通常は酸素を取り入れ二酸化炭素を排出すること.嫌気呼吸というように,広義に生体がエネルギーを得る手段をいう場合もある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の呼吸の言及

【運動】より

…これらの反射に関与する全経路を反射弓という。脊髄に反射中枢をもつ脊髄反射には伸張反射,屈曲反射,交叉(こうさ)性伸展反射などがあり,また脳幹に反射中枢をもつ反射には姿勢反射,呼吸反射,咀嚼(そしやく)反射などがある。(a)伸張反射 これは筋肉とくに伸筋が一過性にまたは持続的に引き伸ばされると反射的に収縮が生ずるもので,筋肉の長さを自動的に制御し,とくに背筋や下肢伸筋の抗重力筋群によく発達していて,直立姿勢の保持に役だつと考えられる。…

【横隔膜】より

…哺乳類のからだの体腔を前半の胸腔と後半の腹腔とに隔てる筋肉性の厚い膜で,呼吸運動に関与する。原始的な魚類を除く脊椎動物では,体腔の前部に位置する心臓はその後ろに生じた隔壁によって体腔の主部から隔離されている。…

【体】より

…無対の器官は,胎生期に正中線上の間膜と呼ばれる体腔を左右に二分する膜内に発生する器官で,血管系,消化器系が含まれる。これに対し,左右対称に発生する器官は,呼吸器と泌尿生殖器である。
[男女差と人種差]
 男性と女性の体には性差がある。…

【胸郭】より

…【田隅 本生】
[ヒトの胸郭]
 12個の胸椎が後正中部の支柱をなし,これと関節をつくって側方から前方へ伸びだす12対の肋骨と,前正中部でそれをまとめる1個の胸骨で組み立てられている。胸郭は胸壁の支柱をなして,重要な胸部内臓を保護するとともに,呼吸運動にさいしてその内腔すなわち胸腔の容積を増減させて,肺への空気の出入りを可能にする。この胸郭容積の増減は肋骨のあいだに斜めの2方向に張る内外肋間筋の作用で行われる。…

【人工呼吸】より

…けがやいろいろの病気で,呼吸運動が不十分となったり停止したりする。また,肺の働きが障害されたり,酸素の供給が不足したりすると,呼吸運動が十分であっても,血液が十分な酸素を得られない。…

【鼻】より

…脊椎動物の頭の前部にある嗅覚器で,四足動物では呼吸器系の入口にもなっている中空の器官。外面に見える部分をさすことも多い。…

※「呼吸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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