コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

肺がん はいがん lung cancer

4件 の用語解説(肺がんの意味・用語解説を検索)

知恵蔵2015の解説

肺がん

世界中で最も多いがんで、日本でも1993年には胃がんを抜いて男性のがん死亡率トップとなった。組織型から、小細胞がん、大細胞がん、腺がん、扁平上皮がんの4型に大別される。このうち、小細胞がんを除く3つは、予後や治療感受性がよく似ているので、非小細胞がんとして一括して扱われている。肺がんの最大の危険因子は喫煙で、特に小細胞がん、扁平上皮がんは喫煙と密接な関係にある。1日に喫煙するたばこの本数が多くて喫煙期間が長いほどリスクは高く、また、受動的に煙を吸い込む周囲の人もリスクが高い。初期は無症状だが、進行すると咳、血痰、胸痛などの症状が出る。早期発見が大切だが、通常のレントゲン撮影では発見しにくい。早期発見が可能なのは、ヘリカルスキャンCT検診。早期の治療成績は比較的よい(I期の5年生存率は50%以上)が、進行がんの場合は悪い(転移を伴うIII期以上は同10%以下)。手術ができない時または転移した時は化学療法を行う。

(黒木登志夫 岐阜大学学長 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

家庭医学館の解説

はいがん【肺がん Lung Cancer】

◎できる場所と種類で程度がちがう
[どんな病気か]
[症状]
[検査と診断]
◎治療後の生活を考え、最適の方法を
[治療]

[どんな病気か]
 肺の中にできる悪性の腫瘍(しゅよう)を肺がんといいます。正確にいうと、気管にできたものが気管(きかん)がん、気管支にできたものが気管支(きかんし)がんで、さらにその先の肺内にできたものだけを肺がんという場合もあります。
 気管支や肺の内面をおおう細胞を、上皮細胞(じょうひさいぼう)といいます。
 悪性細胞の種類による名前でいうと、この上皮細胞から発生した悪性の腫瘍を肺がんと呼び、結合組織から発生した悪性腫瘍は肺肉腫(はいにくしゅ)と呼びます。しかし、肺肉腫ができることは非常にまれで、ふつうは気管から気管支、肺に至る部分に発生した悪性腫瘍を肺がんといっています。
■原発性(げんぱつせい)肺がんと転移性(てんいせい)肺がん
 ここまでに説明した肺がんは、発生した場所が呼吸器であることから、原発性肺がんといい、上皮性の悪性腫瘍のことです。
 ところが、骨肉腫(こつにくしゅ)とか子宮がん乳がん、胃がん、腎(じん)がんなど、からだの各所にできた悪性腫瘍から飛び火(転移)して、肺に悪性腫瘍ができることがあります。
 この悪性腫瘍には、骨肉腫のように、上皮細胞から発生したものではないものも、子宮がんなどのように、上皮細胞から発生したものもあります。これらをすべてまとめて、転移性(てんいせい)肺腫瘍、あるいは転移性肺がんと呼びます。
■小細胞(しょうさいぼう)がんと非小細胞(ひしょうさいぼう)がん
 肺がんのがん細胞は悪性の上皮細胞ですが、この細胞のなかで、とくに悪性度が高いがん細胞があります。それが小細胞がんで、ほかのがん細胞に比べて細胞が小さいため、小細胞がんと呼ばれています。これは驚くほど早く大きくなり、転移するのも早いという特徴があります。
 もう1つの特徴は、化学療法や放射線治療が比較的よく効くことです。そのため、腫瘍が3cm以上の大きさになっていたり、大きさが3cm以下でも、リンパ節が腫(は)れていて小細胞がんと診断がついた場合は、手術よりも、まず化学療法や放射線治療を行なうのがふつうです。
 そのため肺がんを、がん細胞の種類によって、小細胞がんと小細胞がん以外のがん(非小細胞がん=扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、腺(せん)がん、大細胞(だいさいぼう)がんなど)に分け、小細胞がんか、非小細胞がんかによって治療方針を決定しています。
●転移
 がんが肺に発生し、しだいに大きく発育していくと、周囲のリンパ管や血管を侵食して、がん細胞はリンパ液や血液の中に流れ込み、発生したところとはちがった場所に流れ着き、そこで増殖し大きくなっていきます。これを転移といいます。
 転移には、リンパ管を通って広がるリンパ行性(こうせい)転移と、血管を通って広がる血行性(けっこうせい)転移の2種類があります。
 リンパ行性転移は、つぎのようにして広がります。がんの周囲のリンパ管ががんによって侵食されて、リンパ管に流れ込んだがん細胞は、まず肺の中のリンパ節にとらえられます。
 ここである程度発育すると、がん細胞はさらに流れ出して、肺に血管や気管支が入る肺門部(はいもんぶ)というところにある、肺門リンパ節(N1)でとらえられます。つぎに、左右の肺の間の仕切りである縦隔(じゅうかく)にある、縦隔リンパ節(N2)でとらえられ、さらに、鎖骨(さこつ)の上にある鎖骨上窩(さこつじょうか)リンパ節(N3)でとらえられます(図「がんの原発巣と転移」)。
 この3段階の免疫の防御網を突破すると、がん細胞はくびのところから静脈に入って血流にのり、全身に血行性の転移をおこします。くびの静脈に入るまでがリンパ行性転移です。
 血行性転移では、病巣(びょうそう)の近くの血管を破って血液に入ったがん細胞が一気に心臓を通って全身に散らばり、肺、腎臓、副腎、脳、肝臓、骨などに新しいがん病巣をつくっていきます。
 リンパ行性転移とちがい、リンパ節という防御網がなく、いきなり遠方に転移する(遠隔(えんかく)転移)のが特徴です。
 血管を侵食するのが早いと転移もおこりやすく、そのようながん細胞は悪性度が高いといいます。先ほどの小細胞がんがこれにあたります。
●病期(びょうき)
 肺がんの大きさの分類とリンパ節転移の状態、また遠隔転移があるかないかを組み合わせて、患者さんの病気の時期(進行の程度)を判定するのが病期です。これによって治療の方針が決まります。
 大まかにいうと、図「肺がんの大きさと場所による分類」のように、肺がんの最大の直径が3cm以下の群(T1)、直径3cm以上か、がんが肺門部にまで広がっている群(T2)、肺を取り囲む胸壁(きょうへき)や横隔膜(おうかくまく)にまでがんが広がっている群(T3)、気管、食道、心臓などの重要な器官にまでがんが広がっていたり、がん細胞を含んだ悪性胸水(きょうすい)が胸中にたまる群(T4)、の4つに分けます。
 リンパ節転移は、先ほどのように、リンパ節転移がない群(N0)とN1、N2、N3の4群に分けます(図「がんの原発巣と転移」)。遠隔転移の場合は、転移あり(M1)と転移なし(M0)の2群に分けます。以上を組み合わせ、病期が決定されます(表「肺がんの病期」)。
 肺がんは、早期がんと進行がんに分けられます。早期がんというのは、Ⅰ期とⅡ期、進行がんはⅢA期からⅣ期をいいます。早期がんとⅢA期までが手術の対象になります。
 ⅢB期では、リンパ節転移が進んでいたり、重要な臓器ががんでおかされているため、手術が困難で、たとえ切除できても、これで完全に治ったと外科医が納得できる手術は困難です。

[症状]
 肺がんの三大症状として、せき、たん、血たんがあります。これらは、比較的肺がんが小さいときから自覚される症状です。肺がんそのものによる症状としては、胸や背中が痛む、食事が飲み込めない、顔や上半身が腫(は)れるなどの症状が出てきます。
 このほかに、リンパ節転移の症状として、声がかすれる、くびやわきの下にグリグリが触れるという症状が現われます。
 遠隔転移の典型的な症状は、頭痛です。頭が痛いので脳外科を受診したら、肺がんの脳への転移が見つかったという患者さんがたくさんいます。
 しかし、ここで注意しなければならないのは、肺がんの患者さんの20%近くが、異常な症状をまったく自覚していないことです。逆にいえば、症状が出る段階では、肺がんは相当に大きくなっているといえることです。
 この段階で治療しても、なかなか成果はあがりません。最近、アメリカの研究などから、「検診はお金がかかるばかりで、そのわりに効果が少ないのでむだだ」という説も出ていますが、臨床医としては、皆さんに、症状が出ないうちに、できるだけ肺がんの検診を受けていただきたいと考えています。

[検査と診断]
 肺がんを診断するための検査には間接的な方法と直接的な方法とがあります。間接的方法とは、患者さんの状態をみて、今までの経験から、肺がんが疑えると判断することです。直接的方法とは、からだの組織の一部分をとり出して顕微鏡でみて、がん細胞を確認するものです。
 間接的な方法の代表的なものは、胸部X線写真です。背中から腹部の方向に放射線を当てて撮影(背腹写真)するのがふつうです。フィルムは患者さんと対面する方向で観察します。
 さらに詳しく観察するために、右斜め、左斜め、真横の3種の写真も追加撮影します。これらを、まったく正常な胸部の写真と比較して、異常があるかないかを判断します。
 この胸部X線写真で、およそ2cm以上の丸い形のがんの陰影が発見できます。
 ただし、陰影が2cm以下だと、発見はとてもむずかしくなります。また、周辺がぼんやりした陰影や心臓、横隔膜にかくれる陰影も背腹写真だけでは発見がむずかしく、ほかの3種類の写真もみる必要があります。
 つぎに行なわれる間接的な方法は胸部CT写真です。ふつうは、X線の単純撮影による背腹写真で異常な陰影が見つかった場合に、この写真を撮ります。異常な陰影があれば、CT撮影をし、詳しく調べておくことが必要だからです。
 CT写真はふつう、1cmごとに胸部の輪切り(スライス)像を25~30枚ほど撮影し、背腹写真で異常と判断した陰影が、どのくらいの大きさで肺のどの部分にあるか、また肺門部や縦隔リンパ節が腫れていないかどうか観察します。
 最近はCT装置が普及し、早く撮影できるようになったため、いつまでもせきが続いたり、たんに血がまじる場合には、背腹写真で異常がなくてもCT撮影をすることが多くなりました。そのため1cm以下の小さな肺がんが偶然に発見されることも以前に比べて多くなっています。
 つぎに間接的な検査法は腫瘍マーカー(「腫瘍マーカー」)です。これは、がん組織の一部分がこわれて血液の中に流れ込むと増えるたんぱく質の一種を、アイソトープ(同位元素(どういげんそ))などを使ってはかるものです。
 このたんぱく質が正常よりも多い場合、がんが疑われるわけですが、腫瘍マーカーの値が異常に高くても、それだけで肺がんとは断定できません。別のがんかもしれないからです。
 ずいぶんいろいろな腫瘍マーカーが開発されたため、健康保険では一度に検査できる項目数が制限されています。
 つぎに、直接的な検査法でもっとも代表的なものは、たんの中にがん細胞があるかどうかを調べる細胞診(さいぼうしん)です。たんがどうしても出ないという人は困りますが、洗面のときに、せきといっしょにたんが出れば、きれいな容器にとり、その日のうちに検査します。
 いつたんが出るかわからない人のために、保存用の防腐剤の入った容器にたんを入れてもらうこともありますが、そのたんは、せきをして出たものでなければなりません。つばを出したり鼻汁をすすって出したものでは正確な検査ができません。血たんが出たときはかならず細胞診検査をします。
 直接的検査法の2番目は、気管支鏡検査です。これは一種の内視鏡で、改良されて胃カメラよりも細くしなやかになっています。先端には組織をとるための小さなクリップがついています。
 トウガラシからウイスキーまで受け入れられる胃とちがい、せいぜいたばこの煙ぐらいしか通らない気管支の中に入れるため、検査中は、せきが出たり息苦しく感じます。局所麻酔をしても、少しばかり苦痛があります。
 しかし、この気管支鏡検査は、気管支の中を観察し、飛び出しているがんの一部をとって顕微鏡観察にまわしたり(気管支鏡下生検(きかんしきょうかせいけん))、気管支鏡の中を通したワイヤーブラシを使って直接は見えない肺の奥の腫瘍から細胞をとってきて(ブラッシング)、顕微鏡観察ができるため、きわめて重要なものです。血たんがあれば気管支鏡検査を受ける必要があります。
 直接的検査法の3番目は、吸引針生検(きゅういんはりせいけん)と呼ばれるものです。鎖骨の上の腫れたリンパ節や胸壁の腫れた部分を針で刺し、中身を吸い上げながら引き抜いてきます。危険のないよう、針で刺せる部位をCT装置で確認して、からだにマークをつけ、針で刺す、CTガイド下針生検という方法もあります。
 このようにして、本当に悪性のがん細胞がみられるのか、あったとすればそれが小細胞がんなのか非小細胞がんなのか、非小細胞がんならどのような種類のがん細胞なのかをみきわめてから、治療の方法が決定されるわけです。

[治療]
 ここでは原発性肺がんの治療について解説します。
 肺がんでも、胃がんの場合と同じく、すっかり切り取って(切除)しまうのがいちばんよいのです。しかし、肺は呼吸機能を担う、もっとも重要な臓器の1つですから、いくらでも切除していいというものではありません。
 そこで、安全に切除できるかできないかを判断するため、手術前に検査(術前(じゅつぜん)検査)を行ないます。一般的な検査のほかに、肺の物理的な能力をみる肺機能検査と、動脈血ガス分析(血液に酸素や二酸化炭素がどのくらいあるかをみて肺の生理学的能力をみる)がたいせつなものです。その成績でどのくらい肺を切除できるか、手術後の生活も考えて、決定されるからです。
 また、肺がんだけ全部切除できたと喜んでも、がん細胞が脳や骨など、からだの各所に転移していたら、なんにもなりません。そのために、アイソトープを使ったRI検査や磁気を使ったMRI検査によって、転移していないか、がん細胞の追跡を行ないます。
 非小細胞がんで、手術が可能と判断できれば手術が行なわれます。
●非小細胞がんの治療
●小細胞がんの治療
●退院後の注意
●手術後の注意
●肺がんの早期発見

●非小細胞(ひしょうさいぼう)がんの治療
 第1に選択する治療法は手術です。手術ができないと判断された場合は、放射線を当ててがん細胞を攻撃する放射線療法か、薬剤によってがん細胞を攻撃する化学療法になります。これらをさまざまに組み合わせることもあります。
 手術 呼吸器外科で高齢者というのは、以前は65歳以上でしたが、それが70歳となり、現在では75歳から80歳までを高齢者といいます。
 80歳以上は超高齢者で、年齢により、からだの予備の力が少なくなるため、年齢も手術をするかしないかの判断材料の1つになります。
 しかし、痛い思いをするのは本人ですから、結局は家族ではなく、本人の意志によって手術を受けるか受けないかを決めるべきです。
 肺がんの病期のところで説明したように、病期がⅠ期およびⅡ期の早期肺がんは当然、手術の対象になります。
 進行がんのⅢA期の肺がんでも、縦隔リンパ節と脂肪をすべて切除する手術を行ないます。しかし、巨大な縦隔リンパ節転移があると切除できません。
 ⅢB期で問題になるのは、がんが食道、気管、大動脈にまで広がり、あるいは反対側の縦隔リンパ節にまで転移しているため、右側の肺がんでも、左の胸も開けなければならないことがあり、手術がむずかしくなります。
 そこまで大きな手術をして、本当に患者さんに利益があるのか、呼吸器外科医の間では議論が続いています。
 Ⅳ期は血行性転移がある場合ですが、肺がんから肺に転移がある場合でも、その転移の数が1個なら両方を切除すると、意外に手術の成績がよいことがわかっています。医師は、そういう説明をして、患者さんの承諾をえて手術をすることがあります。
 手術の方針は、できるかぎり健康な部分を残すように努力します。手術法は、肺を切除する大きさによって、肺区域(はいくいき)切除、肺葉(はいよう)切除(一葉、二葉)、肺全葉(はいぜんよう)切除の3種類があります。
 肺葉というのは、気管が枝分かれするにしたがい、右肺は3つの部分(3枚)に分かれ、左肺は2つの部分(2枚)に分かれます。この1枚あるいは右なら2枚を切除するのが肺葉切除で、片側の肺を全部切除するのは全葉切除といいます。
 呼吸器外科医は、手術の結果を、治癒(ちゆ)手術、非治癒手術と大きく2つに分けて説明します。
 治癒手術とは、がん細胞をきれいに取り除いて、再発する可能性が低い場合をいいます。
 縦隔リンパ節などに転移があって、再発する可能性が高いと考えられる場合には、非治癒手術と説明します。
 非治癒手術の場合には、再発を可能なかぎり防ぐため、手術をした後に化学療法や放射線治療をするように勧めることがあります。
 放射線治療 手術ができない場合、あるいは非治癒手術の場合に行なわれます。薬による化学療法とのちがいは、放射線があたった部分にしか効果がないことです。
 副作用は、放射線によるやけどと、からだを細菌の攻撃から守る白血球の減少です。
 縦隔のやけどでは、食物を飲み込むと痛いという症状が出ます。また、肺のやけどでは、からせきが続くという症状があります。しかし、これらの症状は最近、薬によってかなり軽くすることができるようになっています。
 化学療法 使用する抗がん剤には、いろいろな種類がありますが、多くの場合、1種類だけを使用することはありません。というのも、抗生物質のように、1つですばらしい効果があがる抗がん剤は、今のところないからです。
 がん細胞の種類によって多少のちがいはありますが、2種類か3種類の薬を組み合わせ、しかも副作用が少なくなるよう工夫して使われます。
 放射線治療でも同じですが、0~4までの段階に分けられる一般状態(PS)のうち、0~3までの患者さんが化学療法の対象になります。自分で身のまわりのことができず、1日中横たわっている患者さんは対象になりません。年齢はとくに問題にはならず、この病期と患者さんの全身状態を示す一般状態によって決まります。化学療法も副作用がありますから、結局は、患者さん本人の意志によって受けるか受けないかを決めることになります。
 化学療法や放射線治療を行なった後の効果を判定する目安としては、著効(ちょこう)、有効、不変、進行という4種の表現が使われます。
 著効というのは、観察できるすべての腫瘍がほぼ完全に消え、その消失している期間が4週間以上ある場合です。
 有効というのは、少なくとも4週間ほど、腫瘍の縦と横をかけた積が50%以上小さくなった場合です。
 不変というのは、小さくなった割合が50%未満の場合です。
 進行というのは、縦と横の積が25%以上大きくなった場合です。
 化学療法にも副作用があります。手術のような痛みはありませんが、著効となるような化学療法のプログラムでは、それだけ副作用も強くなります。
 患者さんが自覚する副作用で、もっとも苦しいのは、吐(は)き気(け)と食欲不振です。そのほか、下痢(げり)や脱毛もあります。
 血液検査で、細菌などの攻撃からからだを守る白血球が、ふつうは1mm3の血液中に3000個以上あるべきなのに、2000個以下になることがあります。これが白血球の減少です。
 こういった化学療法の副作用を少なくするための努力が重ねられ、最近では、吐き気や下痢も抑えられ、白血球の減少もおこらないように薬を使うことができるようになりました。しかし、いろいろな努力がされてはいるものの、脱毛の防止については、今のところ、あまり有効な方法がありません。

●小細胞(しょうさいぼう)がんの治療
 肺の小細胞がんは、あっという間に大きくなります。そのため、小細胞がんとわかれば、病期がⅠ期でリンパ節転移がなければ手術しますが、それ以外の病期なら、まず化学療法を行なうのがふつうです。
 非小細胞がんに対する化学療法とちがい、化学療法が非常に著効であることが多く、放射線治療も著効することがしばしばあります。直接的な診断法でⅠ期以外の小細胞がんということが確定すれば、まず化学療法を行なうのが一般的で、効果を確認した後に手術で切除することもあります。

●退院後の注意
 肺がんは比較的に進んだ状態で発見されることが多く、治療が終わっても、再発の心配はないと断言できません。そのため医師は、退院のときに、毎月とか3か月ごとに外来に来るように指示します。
 外来では、受診のたびに胸部X線写真や血液の検査を行ない、アイソトープによる骨の検査や、年に1~2回はCT撮影をして、転移がおこっていないか、再発していないかを確認します。
 肺がんでは、治療が終わって退院しても、こうした経過観察が非常にたいせつです。以前は、退院後も抗がん剤を飲み続けると再発が少ないと考えられていましたが、抗がん剤で別の場所にがんがおこりやすくなるという説もあり、患者さんに説明して、飲むか飲まないか決めてもらうように変わりつつあります。
 転移がおこったことがわかれば、すぐに治療を行ないます。肺に転移がおこれば、もう一度手術する場合もあります。多くの転移があれば、化学療法を行ないます。骨盤など、手術できない場所に転移した場合は、放射線治療をすることもあります。

●手術後の注意
 以前は、肺の手術は大きな手術だから、退院後は自宅で静かに寝ていなければならないと思われていました。しかし、肺がんにかかる患者さんは50歳代以上の人が多く、静かに寝ていれば元気になるどころか、しだいに食欲もなくなり、からだがおとろえてきます。
 手術のあとが痛みますが、ゆっくりと腕を動かし、また、ゆっくり歩くように心がけて生活することです。
 歩くことで、少なくなった肺活量の回復も早まります。傷の痛みは、温めると軽くなります。

●肺(はい)がんの早期発見
 肺がんになると助からないと思われていましたが、手術の成績をみても、Ⅰ期の肺がん、とくに直径が1cm以下の小さな肺がんなら、5年後も元気に暮らしている人が100%です。
 胃がんもそうですが、肺がんも早期に発見しなければ、治療も思うようにできません。まず、早期に見つけ、治療を受けることです(コラム「肺がんの早期発見」)。

出典|小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

食の医学館の解説

はいがん【肺がん】

《どんな病気か?》
 肺がんは、ほかのがんとくらべて増加の傾向にあります。
 肺がんの原因が喫煙にあるということは明確ですが、喫煙のほかにも、排気ガスダイオキシンなど、環境汚染に影響を受けやすいため、肺がんの罹患率(りかんりつ)も死亡率も減少しないのです。
 また、他人のタバコの煙(副流煙)を吸う受動喫煙のほうが、肺がんになりやすいという研究もあります。
 いずれにしても、タバコは「百害あって一利なし」。非喫煙者とくらべた場合、喫煙者の肺がん死亡率は、1日10本以下でも約2倍、20本で約6倍という調査もあります。
 せきが続いたり、血の混じったたんがでた場合などは要注意。かならず受診し、喀(かく)たん検査などを受けましょう。
《関連する食品》
○栄養成分としての働きから
 肺がんに有効な栄養素も、基本的にはがん全般に効果のあるものと同様です。なかでも、ビタミンAやB群の不足で発症しやすいともいわれているので、ホウレンソウニンジンなどの緑黄色野菜ウナギアンコウの肝(きも)などの魚介類を積極的に摂取しましょう。パパイアのビタミンCも、肺がん予防が期待できます。
〈緑茶のカテキンは肺がん予防に有効〉
 発がん抑制効果や進行防止作用があるといわれる栄養素のなかで、動物実験により肺がんに効果があったとされるものが、カテキンです。もっとも効率的に摂取できるのは緑茶ですが、効果が期待できるのは、湯飲み茶碗で1日10杯以上。
 緑茶よりは少量ですが、カテキンは烏龍茶や紅茶にも含まれていますので、飽きがこないように、じょうずに組み合わせて飲むようにしましょう。

出典|小学館
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。食品は薬品ではありません。病気にかかったら、かならず医師の診察を受けてください。

肺がんの関連キーワードがちがち勝手が違う気が散る桁が違う筋が違う話が違う訳が違うせちが・う役者が違うクロスウインド

今日のキーワード

トランスアジア航空

台湾・台北市に本拠を置く航空会社。中国語名は復興航空。1951年、台湾初の民間航空会社として設立。83年に台湾の国産実業グループに経営移管され、組織改編を実施した。92年に国際チャーター便の運航を始め...

続きを読む

コトバンク for iPhone

肺がんの関連情報