敢ず(読み)あえず

精選版 日本国語大辞典 「敢ず」の意味・読み・例文・類語

あえ【敢】 ず

(「あう(敢)」の未然形に、打消の助動詞「ず」の付いたもの)
① (「あう(敢)」が独立した動詞の形で) 耐えられない。がまんできない。
※続日本紀‐天平神護二年(766)一〇月二〇日・宣命「今は身も不敢(あへず)あるらむものを、夜昼退(まか)らずして護り助け仕へ奉るを見れば」
万葉(8C後)一五・三六九九「秋されば置く露霜に安倍受(アヘズ)して都の山は色づきぬらむ」
② (動詞の連用形に付いて補助的に用いる。ただし係助詞「も」などが間に入ることもある)
(イ) …しきれない。…しおおせない。
※万葉(8C後)一一・二六五七「神南備(かむなび)神籬(ひもろき)立てて斎(いは)へども人の心はまもり不敢(あへぬ)もの」
(ロ) …できない。
※万葉(8C後)一一・二八二二「𣑥領布(たくひれ)白浜波の寄りも不肯(あへず)荒ぶる妹に恋ひつつそ居(を)る」
(ハ) (動詞の連用形に係助詞「も」を添えた形に付く。「あへねば」の形をとることもある) …するや否や。…も終わらぬうちに。中世以後この用法だけに固定化して使用された。
太平記(14C後)一一「妻室聞きもあへず、只涙の床(ゆか)に臥し沈みて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

土砂災害

大雨や地震が誘因となって起こる土石流・地滑り・がけ崩れや、火山の噴火に伴って発生する溶岩流・火砕流・火山泥流などによって、人の生命や財産が脅かされる災害。...

土砂災害の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android