4次元以上のベクトルを考えるために,矢印で表わされるような図形的表現を用いないで,実数の順序のついた組という考え方を採用して,2次元および3次元のベクトル (矢線ベクトルで表わせる) を拡張した概念である。 n 個の順序のついた実数の組 X=(x1,x2,x3,…,xn) を n 次元数ベクトルまたは n 項ベクトルといい,xi ( i=1,2,…,xn ) を x の第 i 成分または第 i 座標という。また 0=(0,0,0,…,0) を零ベクトルといい,単に 0 と書く。数ベクトル間の相等,加法,実数 λ との乗法を定義すると交換,結合,分配の法則が成立する。したがって,n 次元数ベクトル全体の集合は,実数体の上で加群となる。体の上の加群は,ベクトル空間をつくるから,この n 次元数ベクトル全体はベクトル空間となり,これを n 次元ベクトル空間と呼ぶ。