朝日日本歴史人物事典 「无利弖」の解説
无利弖
5世紀半ばから後半の熊本地方の豪族。熊本県菊水町江田にある前方後円墳・江田船山古墳から出土した鉄刀(他の出土品と共に国宝)に銀象嵌された銘文に「典曹人」としてみえる。これは文官系の廷臣として大王に奉仕したことを示す。はじめ,反正天皇(ミツハ)に奉仕したと考えられていたが,稲荷山古墳(行田市)出土の鉄剣の銘文が解読されてからは,雄略天皇(ワカタケル)の時代と考えられるようになった。ただし,銘文の作者張安が渡来系の人物と思われることから,无利弖は中央の豪族で,同古墳の被葬者が无利弖のもとで雄略に奉仕し,その記念にこの刀を与えられたとする説もある。
(大平聡)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報