日本大百科全書(ニッポニカ)「行政事務」の解説
行政事務
ぎょうせいじむ
2000年(平成12)地方分権改革以前の観念で、住民の権利義務に関する権力的・規制的な事務をいう。非権力的なサービス・事業の経営を内容とする公共(固有)事務と区別された。第二次世界大戦前の自治体は非権力的権能しか有しなかったが、戦後、日本国憲法第94条によって、地方公共団体が「行政を執行する権能を有」することになったのに伴い、新たに自治体の権限とされたものである。法治行政の一般原則に基づき、条例で定めることが必要である(2000年改正施行前の地方自治法14条2項)。青少年保護条例、集団示威運動取締条例、金属くず業取締条例、紙芝居条例、放置自転車条例、飼犬条例、危険動物の飼養保管に関する条例などがその例であり、年々増える傾向であった。しかし、行政事務という観念は沿革的な理由によるもので、とくに分類による実益はないので、公共(固有)事務、団体委任事務とともに、まとめて自治事務とし、機関委任事務と対比するのが普通であった。2000年法改正施行後も、この種の権力的事務については条例で定める必要がある(地方自治法14条2項)が、これを行政事務とよぶ必要はない。
[阿部泰隆]
『自治体問題研究所編『地方自治法改正の読みかた』(1999・自治体研究社)』