有鉤嚢虫症

内科学 第10版 「有鉤嚢虫症」の解説

有鉤嚢虫症(条虫症)

(1)有鉤囊虫症(cysticercosis)
病因・感染経路
 囊虫を摂取して感染する有鉤条虫症とは異なり,虫卵を経口摂取することで感染する.このほか,前述の自家感染が原因となる.いずれの場合にも六鉤幼虫が孵化し,小腸壁から侵入して全身に播種して囊虫を形成する.
臨床症状
 基本的には無症状に経過するが,特に中枢神経や脊髄眼球などに寄生した場合には,寄生部位に従った神経巣症状を引き起こすほか,数年の経過で間欠的に局所での炎症反応を繰り返し,一過性の神経巣症状を呈することもある.アジアの途上国などでは,小児の症候性てんかんのおもな原因疾患ともいわれている.
診断
 囊虫寄生では糞便中に虫卵は証明できず,血清診断のほか画像所見も重要となる(図4-18-3).特に脳病変では,石灰化を伴う腫瘤性病変の際に本疾患が鑑別にあがるが,脳腫瘍との鑑別は困難である.一方,摘出組織では乾酪壊死を伴わない類上皮肉芽腫を呈し,組織からの遺伝子学的検査により診断を行うのが確実である.好酸球増加もみられるので診断の参考になる.
治療
 一般には有効な治療法はない.アルベンダゾールと副腎皮質ステロイド剤の併用が試みられるが,治癒は困難である.脳病変などで,一過性の炎症性変化を呈した場合には,抗浮腫剤の投与が行われることもある.[前田卓哉]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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