朝霧の(読み)アサギリノ

デジタル大辞泉 「朝霧の」の意味・読み・例文・類語

あさぎり‐の【朝霧の】

[枕]
朝霧の中でぼんやりとしか見えない意から「おほに」「乱る」「思ひまどふ」にかかる。
「―おほに相見し人ゆゑに」〈・五九九〉
朝霧が八重に立つ意から「やへ」「立つ」にかかる。
「―八重山越えて」〈・一九四五〉

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精選版 日本国語大辞典 「朝霧の」の意味・読み・例文・類語

あさぎり‐の【朝霧の】

  1. ( 朝方に立つ霧のように、の意で )
  2. 朝霧が深くて物がおぼろに見えるところから「おほ」にかかり、また「迷(まと)ふ」「乱る」にかかる。
    1. [初出の実例]「朝霧之(あさぎりの)おほに相見し人ゆゑに命死ぬべく恋ひわたるかも」(出典万葉集(8C後)四・五九九)
    2. 「安佐疑理能(アサギリノ) 乱るる心 言(こと)に出でて 言はばゆゆしみ」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇〇八)
  3. 朝霧が深く立つところから、「八重山(やへやま)」にかかる。
    1. [初出の実例]「旦霧(あさぎりの)八重山越えてほととぎす卯(う)の花辺から鳴きて越え来ぬ」(出典:万葉集(8C後)一〇・一九四五)
  4. 霧が流れ通うところから、「通ふ」にかかり、朝霧が立つ意で「立つ」にかかる。
    1. [初出の実例]「ぬえ鳥の 片恋妻 朝鳥の〈一云 朝霧(あさぎりの)〉 通はす君が」(出典:万葉集(8C後)二・一九六)
    2. 「嘆きつつあかしの浦にあさ霧のたつやと人を思ひやるかな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)

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