日本大百科全書(ニッポニカ) 「束論」の意味・わかりやすい解説
束論
そくろん
lattice theory
集合Aに任意の二元に対し一つの元を指定する二つの演算∩(交わり)と∪(結び)とが定義されていて、ともに交換律a∪b=b∪a,a∩b=b∩a、結合律(a∪b)∪c=a∪(b∪c),(a∩b)∩c=a∩(b∩c)を満たし、さらに、吸収律a∪(b∩a)=a∩(b∪a)=aが成り立つとき、組合せ〈A、∩、∪〉を「束」といい、さまざまな束の構造を研究する数学の分野が、束論である。任意の集合の部分集合の全体において、∩を共通部分を指定する演算、∪を和集合を指定する演算ととると、これは束になる。のみならず、これはさらにいくつかの法則を満たす、ブール束とよばれるものの例になる。ブール束は、論理学で、集合論の公理の独立性を研究するときに利用される。また、量子力学を、測定一般についての考察から、かなりア・プリオリ(先験的)に構成しようという試みがあるが、このときには、抽象的な束から出発し、しだいにこれに限定を加えてゆくことにより、量子力学のヒルベルト空間に達するという手法が用いられたりする。このように、束の概念は、狭義の数学以外の分野でも使われることが多い。
[吉田夏彦]