日本大百科全書(ニッポニカ) 「東方典礼カトリック教会」の意味・わかりやすい解説
東方典礼カトリック教会
とうほうてんれいかとりっくきょうかい
Eastern Orthodox Church
広い意味で古代の東ローマ帝国の領土において民族主義の枠のなかで生まれた諸教会をさす。狭い意味では正教会Orthodox、すなわちビザンティン典礼――典礼用語として古代ギリシア語、古代スラブ語、アラビア語、ルーマニア語などを使用。右から左へ十字を切る。パンとぶどう酒の両方を拝領するなどの特徴をもつ東方典礼様式――を用いている諸教会のことで、全世界に約2億の信徒がいる。教理、典礼、道徳の面で神学上若干の相違があるが、初代の七つの公会議の決議に基づく教えに関してはローマ・カトリック教会とほとんど同じで有効性も変わらない。東西ローマの分離以来、各国の教団が独立しているが、コンスタンティノープルの総大主教の名誉的首位を認めている。ローマ教皇の首位権(ペトロの後継者としての)は認めない。けれどもエキュメニズム(教会交流運動)の進展しつつある現代では、東方教会とローマ・カトリックの間には対話協調路線がある。
[越前喜六]