領土(読み)リョウド(英語表記)territory

翻訳|territory

デジタル大辞泉 「領土」の意味・読み・例文・類語

りょう‐ど〔リヤウ‐〕【領土】

領有している土地。領地。
国家の統治権の及ぶ区域。土地からなる国家の領域であるが、広義には領海領空を含めて用いられる。
[類語]領地植民地租界衛星国属国従属国保護国自治領属領居留地

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精選版 日本国語大辞典 「領土」の意味・読み・例文・類語

りょう‐どリャウ‥【領土】

  1. 〘 名詞 〙 領有している土地。領地。国際法上で、国家の統治権の及ぶ区域。ふつう土地から成る国家の領域をいうが、領海・領空を含めていう場合もある。
    1. [初出の実例]「然れども領土(レウド)の広き民衆の蕃けき事業の繁げき如何に縝密(しんみつ)なる法制有りと雖も」(出典:国会論(1888)〈中江兆民〉)
    2. [その他の文献]〔謝彬‐新彊遊記〕

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改訂新版 世界大百科事典 「領土」の意味・わかりやすい解説

領土 (りょうど)
territory

国家の領域のうち陸地の部分。河川・湖沼などの内水域や,大陸本土に付属する島嶼(とうしよ)は当然これに含まれる。領土をもたない国家は考えられず,また,領海領空は領土に従属して存在するものであるから,領土は国家の領域の中でも最も本質的で中心的な構成部分である。そのことから,広義では,国家の領域全体をたんに領土とよぶこともある。この場合には,領海・領空をも含めて領土とよんでいるわけである。

 狭義の領土には,領域として最も強い国家の排他的支配権が及ぶ。国家は,国際法に基づき,領土を,他国の支配を受けることなく,自国だけで自由に支配できる。領土においては,領海につき一般国際法によって認められる他国の船舶または航空機の無害通航権は認められない。国家は,領土内にあるいっさいの人と物を,その国の国民であるか否かを問わず,排他的に支配することができ,また,領土そのものを排他的に使用し,占有し,または処分することができる。国家が領土に対してもつこのような権能を,領土権または領土主権とよぶが,それは,領土内の人・物に対する法的支配の権能(統治権--インペリウムimperium(ラテン語))と領土に対するいわば土地所有権的な権能(領土の使用・処分権--ドミニウムdominium(ラテン語))より成り立つ。国家の領土権,とくにそのドミニウム的側面は,歴史的にローマ法の私人の土地所有権の制度の影響を強く受けてきており,今日でも領土の得喪・変更に関する国際法規則にこの点がうかがえる。

 国家は,このように,国際法上,領土に対する権利をもつが,同時に義務をも負っている。それは,他国の権益を侵害するようなしかたで,自国領土をみずから使用したり,私人に使用させてはならないという一般的な義務である。たとえば,他国に出撃しようとする武装反徒の集結・訓練を,自国領土内において認めることは,国際法によって禁止されている。

 領土が海に接する場合には,領土の外側に内水,さらにその外側に領海と続くのであるが,領土の限界は低潮線であり,それより外側が内水である。領土が陸続きで他国領土と接している場合,その限界が国境である。国境を画定するための基準について国際法上定まった規則はなく,隣国との合意に基づいて決定されるのが通例である。

 領域の得喪(取得と喪失),変更に関しては国際法の規則が存在する。国家がある土地に対する領有権を取得するために必要な法律上の根拠を領有の権原という。伝統的には,割譲,先占,時効,併合,征服,添付の6種の権原が認められている。この中で,添付は自然現象により領土を取得することであり,たとえば,国家の海岸,河岸,湖岸が堆積により面積を増大した場合,あるいは,領海内に海底火山の噴火によって新島が出現した場合などがこれにあたる。他の五つはなんらかの国家の行為に基づくものである。そのうち,先占と時効は国家の単独の行為により完成し,割譲は複数国家の合意による領土の移転である。併合と征服は,いずれも,一国が他国の領土を強制的に自国の領土とすることである。
割譲 →征服 →先占 →併合
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「領土」の意味・わかりやすい解説

領土
りょうど
territory

国家に属する地的管轄範囲(国家領域)のうちの陸地部分をいう。通俗的には、国家領域(領土、領海、領空)を意味することもある。また、陸地に囲まれた水面、つまり、琵琶(びわ)湖、霞(かすみ)ヶ浦などの湖沼や河川、湾などは、内水とよばれるが、領海とは区別して領土の概念に包含する。領土は、国家の不可欠の要素であり、その地域に対しては、国際法に反しない限り、国家の立法、行政、司法の権限が排他的に及ぶ。この国家の権限を領土主権または領域主権とよんでいる。したがって、領土内にある人や物は、外国人やその所有物であっても、その領土国の法令によって規制される(属地的管轄権)。

 領土は、添付、侵食などによっても増減するが、割譲、交換、売買などによって移転する。日清(にっしん)、日露戦争による台湾・澎湖(ほうこ)島、南千島の割譲、1875年(明治8)の千島・樺太(からふと)の交換、1867年のアラスカのロシアからアメリカへの売却などはその例である。無主地は先占によって取得でき、1939年(昭和14)の新南群島(南沙(なんさ)群島)の領土編入はその例であったが、ヨーロッパ諸国は、先住民のすでに住んでいる地域でも、近代国家を形成していないアフリカ、南アメリカなどの地域は先占を理由に領土に編入し植民地化した。第二次世界大戦後、このような「先占」は不法として批判された。

 領土は、海洋、河川、分水嶺(ぶんすいれい)などの自然的地形により区画されるほか、経緯度線や境界石などによりその境界(国境)が表示される。しかし、領土の帰属をめぐる国家間の紛争も多く、わが国も、北方領土、竹島、尖閣(せんかく)列島をめぐり、ロシア連邦、韓国、中国(台湾)との間に領土紛争問題を抱えている。領土は、その領有国が単独に統治するのが原則であるが、2国以上が領有または統治し、または、領有国以外の国が統治(施政)を行い、さらに、統治について隣接国から制約を受けるなどの変則的場合もある。領土共有の事例としては、1867年(慶応3)の樺太島仮規則以後、1875年の樺太・千島交換条約まで、日本と旧ロシア帝国が樺太島を共有した例、1980年の独立までニュー・ヘブリデス(現バヌアツ)をイギリス、フランスが共有した例などがある。領有国以外の国が施政した例としては、中国から旅順・大連、膠州(こうしゅう)湾、広州湾、威海衛、九竜(きゅうりゅう)半島をそれぞれロシア(のち日本)、ドイツ、フランス、イギリスが租借した例がある。パナマ運河地帯をアメリカが施政し、1951年(昭和26)の対日講和条約により小笠原(おがさわら)(1968年まで)、沖縄(1972年まで)をアメリカが施政した例もある。この場合、同地域の潜在主権は日本に残されたと解されていた。

 領土について負担を負った例としては、他国に通過を認める積極的国際地役や、要塞(ようさい)や軍隊の設置をしない旨約束する消極的地役の例がある。委任統治地域や信託統治地域も、特殊な領土の形態だったといえる。

[宮崎繁樹]

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百科事典マイペディア 「領土」の意味・わかりやすい解説

領土【りょうど】

陸地(内水を含む)により構成される国家領域。領海領空は領土を基準として定められるから,領土は領域中最も本質的である。領土には国家の主権が及ぶのが原則であるが,条約による制限もあり得る。
→関連項目国際連合国家国家承認国境接続水域占領領域領土問題

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「領土」の意味・わかりやすい解説

領土
りょうど
territory

広義には領域と同義に用いられ,地球上の空間のうち国家の主権に服する部分をいう。狭義には領域の一部で陸地から成る部分のみを指す。広義の領土はさらに陸地部分の領土,領海および領空に分けられ,その範囲は国際法によって定められる。地球上の平面を国際法の見地から分類すると,広義の領土とそれ以外の部分とに分れる。現在では公海を除くとほとんどすべていずれかの国家の領域となっており,無主地は存在しない。ただし南極地域は南極条約により,各国の領有権の主張が凍結されているので,特定の国家の領域とはなっていない。

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